外国人は戦力になる!?


日本が抱えている大きな問題の一つに、人口問題があります。
2025年には65歳以上の占める割合は25%を超えると予想されており、このままだと実に4人に1人が高齢者という危機的状況に陥ります。
これの意味するところは、“何らかの対策を打たないと、現在の日本の経済活動を維持できない”ということです。年金問題がよくマスコミで取りざたされますが、それ以前に国の税収の原資である経済活動が縮小していく問題に直面しているのです。
著名な投資家ジム・ロジャース氏は、「日本が最優先すべき課題は、人口問題だ」と言い切っています。
そんな人口問題は産業のあらゆる局面に影響しており、特に労働力不足が叫ばれている建設業界は顕著です。
その解決の方向性の一つが、「外国人の活用」です。外国人と一言でいっても、様々な国があり、異なる民族、宗教、価値観、習慣があります。そこを、どうマッチングしていくか。その最新の取り組み状況を記したレポート記事を、ご紹介したいと思います。
「外国人」は戦力になるか?
「技術移転」か「人材確保」か、復興・五輪を視野に揺れる制度
現行の外国人技能実習制度は、2010年7月から運用されている。一定の要件を満たす企業が単独で技能実習生を受け入れる方法と、非営利の監理団体を介して傘下の企業が受け入れる方法がある(下の図)。
いずれも、実習生は日本国内の受け入れ企業と雇用契約を結び、労働法規や最低賃金法規の適用対象となる。入国前後に一定期間、日本語や日本での生活に関する教育が義務付けられ、実習本番は最長3年間。
建設関係では法律上の在留資格としてとび、型枠施工、鉄筋施工など約20職種(2~3年目の在留資格「技能実習2号」の対象)が定められている。専門工事会社が監理団体を介して受け入れる例が目立つ。
3年間で、“日本流”の技能をどれほど身に付けられるのか。この2月19日、日本建設業連合会と海外建設協会は、同制度の啓蒙や活用促進で10年度から実施している「ベストプラクティス表彰」で専門工事会社3社を選定した。これら3社の取り組みから、考えてみたい。
3年で技能者として1人前に
同表彰で日建連国際委員長賞に選ばれた向井建設(東京都千代田区)は、躯体工事がメーンの専門工事会社だ。同社は1989年に旧建設省の要請で中国から海外研修生(当時)の受け入れを開始。
2009年以降は主にベトナムから、建設業振興基金を監理団体として受け入れてきた。
12年1月からは、首都ハノイ市から約85km南方のニンビン市にある職業訓練校で、独白のシステムによる事前研修を開始。 13年2月に受け入れ企業約30社と任意団体「ベトナム人海外技術・技能者人材育成協議会」を結成し、共同訓練の場として活動を本格化させている。
事前研修は4ヵ月間で、4月と8月、12月にそれぞれ開始。鉄筋施工、型枠施工、とび、内装工事の4工種で各20人を受け入れる。参加者はネットやテレビ、新聞などを通じて募集。2日間で数学(現地の中学校中級レベル)と一般常識のペーパーテスト、実技試験、面接を行う。
「対象年齢は23~40歳、高卒以上で建設業経験5年以上を受験資格にしているが、履歴書はあまり当てにならない。実技試験は、図面と材料を渡してつくってもらう」と向井建設の池上朋之常務取締役は話す。
◆卒業できるのは8割
合格後はまず1ヵ月半、日本語や日本の文化・生活、安全・品質に関する知識、現場特有の言い回しや用語、道具などについて座学でみっちり教育する。
「現場で職長が『あれを持ってこい』と言ったら、『あれ』とはどの範囲を指すか。そうした慣用表現の解釈まで教える。ベトナムにない道具も多い。実技の前に、こうした知識を身に付けてもらう」(池上常務)。
講師は在日経験のあるベトナム人日本語教師と、向井建設などから派遣された職長クラスの技能者が担当。日本での技能実習を終えたべトナム人OBも、言葉や技能面の通訳として加わっている。毎週小テスト、毎月月末テストを実施し、成績順位を教室に張り出す。成績不良者には「イエローカード」を発行し、3枚たまると退学だ。
座学を終えると、基礎的な実技研修を約1ヵ月半実施。そして最後の1ヵ月は応用研修。訓練校の敷地内に実習生用の新しい寮を建設中で、その現場に加わってもらう。実技研修に入っても、日本語教育は継続する。日本語能力試験で最も難易度が低いN5級の取得も、卒業の条件だ。
最終的に合格者の8割程度しか卒業できない」(池上常務)。
来日して監理団体による1ヵ月間の座芥研修後、実習生は受け入れ企業に。制度上、正社員として受け入れることが義務付けられており、各種保険も適用され、給与は月給制。
育成協議会では地域を問わず東京の賃金ベースで、宿舎の利用費なども含めて一律に定めている。
1社当たりの受け入れ人数も制度上、企業規模などに応じて決まっており、常勤職員50人以下は3人まで。育成協議会のメンバーを含めて、専門工事会社ではこの人数枠に該当するケースが多い。
 
職業訓練校の卒業者は一定の日本語能力と技能を身に付けているが、特に優秀な人には多少延長して訓練校に居残ってもらい、リーダー教育を施す。リーダーを核にしたチームで実習生を編成し、受け入れ企業に割り振るようにしている。受け入れ経験が浅い企業などでも、リーダーに指示すればチームで動けるようにするためだ。
◆実習生OBが緩衝役に
ペストプラクティス表彰海建協会長賞の大崎建設(東京都文京区)は、とび・土工を得意とする専門工事会社。元々80年代に、東南アジアの現地法人で必要な職長クラスの技能者を育成するために、当時の制度で日本での技能研修を行っていた。
91年、同社が旗振り役となり、専門工事会社十数社とマルチコントラクター協同組合を設立。同組合が監理団体としてフィリピンから技能実習生を受け入れ、加盟企業が技能実習を実施している。加盟企業は現在、鉄筋施工、型枠施工、とびなど二次下請けクラスを中心に約100社で、年間の受け入れ人数は合計200人程度だ。
募集は現地の送り出し機関が、実施。高卒以上で40歳以下、建設業で3年の経験が募集条件だ。書類選考を経て、面接と実技試験で応募者数の3割程度に絞り込む。
「必ず受け入れ企業の経営者なども同行し、面接や実技試験にも立ち会う」。大崎建設の久々湊佳貴労務担当部長はこう説明する。
送り出し機関で、日本語教育などを約2ヵ月間。現地に帰国した実習生OBも指導員として事前教育を行う。入国直後の1ヵ月間は、協同組合が実用日本語や生活上の注意点、日本の建設現場の状況などに関するオリエンテーションを実施。その後、実習生は受け入れ企業と雇用契約を結んで、技能実習に入る。
「小規模な会社が多く、実習手法や各種手続きなどは組合が指導している」と同組合の森山篤理事長は話す。他方、受け入れ経験の豊富な企業では独自のマニュアルなどを整備しているところもある。
さらに協同組合でもフィリピン人実習生OBを数人抱え、受け入れ企業を定期巡回。実習生の悩みや相談に応じるほか、2年目以降の実習継続に必要な技能検定基礎2級の受験のサポートも行う。企業側との調整役も果たす。「こうした緩衝役が絶対に必要」(森山理事長)。
また、受け入れ企業で実習生を直接指導する職長クラス向けの研修も、年3回程度行っている。
◆資格も取得してもらう
ベストプラクティス表彰で奨励賞を受賞したカワグチ鉄工(静岡県沼津市)は社員30人弱の鉄骨メーカーだ。監理団体を通じて2007年に中国からの実習生を受け入れたのを契機に、11年からはベトナム人実習生をほぼ毎年3人ずつ受け入れてきた。現在は、6人が実習中だ。
実習生はいずれも20代前半で、入国前に溶接に関するJIS(日本工業規格)相当の資格を取得済み。同社に受け入れた後は、王掛け技能講習の資格も取得してもらい、工場作業だけでなく、現場作業にも加わってもらっている。
「受け入れ始めた当初は、言葉や母国流の考え方、習慣・文化の違いなどで苦労した」(河口博幸社長)。だが継続して受け入れることで、先輩格だったり、日本語に比較的堪能だったりする実習生が他をフォローするようなサイクルが生まれているという。
「3年目を迎える頃には、いずれも技能者として一人前と言っていい。事実上、大切な戦力になっている」と河口社長は話す。技能者としての資質自体は日本人の若い新規入職者とさして変わらないという見方で、他の受け入れ企業でも同様の意見を多く耳にした。
時限措置で継続・再入国が可能に
政府は4月4日、建設業の人手不足対策として、外国人技能実習制度で受け入れ期間の延長などを含む時限措置を講じると発表。適用は2015年度から20年度まで。夏までに詳細な実施要項を発表する見通しだ。
時限措置の主な内容は、次の通り。現行で最長3年間の実習期間を継続して2年の延長を可能にする。また3年間の実習を終えて帰国した人が再来日して、再び2~3年の実習を受けられるようにする(下の図)。
受け入れ側に対する監理体制も強化。時限措置に基づく継続実習などを実施できるのは、「優良」な監理団体・受け入れ企業に限定。過去5年間に不法行為や処分歴がないことなどを認定条件にする。建設業法に基づく国土交通省などの立ち入り検査や監督・処分、実習現場の元請け企業による受け入れ企業(下請け会社)への監理状況確認といったメニューも、現時点で盛り込まれている。
◆元請けにも変化の兆し
 
外国人技能実習生は全産業ベースで15万人強と、近年は右肩上がりで増えてきた。国際研修協力機構(JITOO)の統計では、建設関係で実習2~3年目の実習生がこの3月末時点で4865人(速報値)。現状ではほとんどが建築系だ。
「受け入れニーズは、この2年ほどで急激に増えている」(マルチコントラクター協同組合の森山理事長)。国内の人職者が減少するなか、実習生を事実上の“戦力”と捉える企業は多い。
大手建設会社にも、変化の兆しがある。元々は国内現場への受け入れを敬遠する例が多かったが、この1年で、受け入れ側へのヒアリングや送り出し機関の視察など、情報収集の動きがじわりと広っている。
例えば大成建設は昨年6月、基幹協力会社を対象にベトナム人技能実習生の受け入れに関する説明会を初めて開催。今年3月にも2回目を開き、現地送り出し機関と国内監理団体の組み合わせで4組がレクチャーを行った。
「協力会社の中には、以前から積極的に受け入れに取り組む会社が複数いる。そうした経験や正しい知識を皆で情報共有しようと企画した」。同社土木本部の秋里乃武宏企画室長は説明する。
◆実習生OBのフォローがカギ
外国人向けの研修・実習制度は以前から、開発途上国への技術移転という建前と、人材確保策として期待する多くの受け入れ側の本音という矛盾を抱えてきた。雇用・賃金面の保護策が強化された現行制度の運用開始後も、内在する矛盾を指摘する批判が国内外で根強く残る。
政府が示した時限措置は、震災復興と五輪向けの対応という意図が明白。“労働力”として、お墨付きを与えるに等しい。「技能伝承を通じて海外に知日派、親日派を育てるのが本来の趣旨。労働力として期待するのは日本側の勝手な都合で、使い捨てととられかねない」。向井建設の池上常務は、こう懸念する。
他方、多くの受け入れ側が、「ようやく一人前になった頃に帰国するのは残念」という率直な思いを抱いているのも実態だ。それだけ、貴重な戦力と評価しているとも言える。だがこうした受け入れ側も、時限措置の内容を手放しで歓迎しているわけではないようだ。
育成には、手間と時間が必要。人材不足対策と位置付けて受け入れ人数が急増すると、全体として質の低下を招く」、「受け入れの経験上、海外への出稼ぎ文化が浸透した国の実習生でも、継続在留は3年が気持ちの限界。さらに長い期間になじめるか」、「帰国後は他の職種に就く実習生OBが多い。再入国の場合、技能力などの面でゼロからのスタートにならないか」。こうした声もある。
どのような方向に進むとしても、関係者の多くが重要と指摘するのは、実習生OBのフォローだ。例えば大崎建設は09年度に国交省などが実施しか「外国人研修生・技能実習生への建設技能移転高度化モデル事業」で、OBの人材データベースを提案。試作版を開発し、その試行や体制づくりを継続中だ(上の図)。
「国内の元請け会社から、海外工事の人手を求められる際などのニーズを想定した」(同社の加賀谷昭年統括部長)。同様の取り組み例は、他の受け入れ企業にもある。時限措置が掲げる再入国のケースが現実化すれば、こうしたツールが別の価値を生む。受け入れ企業にとっては、自社で育てた優秀なOBを再び招くのが最も安心で、「さらなる高度化」という制度の趣旨にも沿うからだ。

 

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