笹子トンネル事故が示唆する老朽化という課題


前回掲載した「南海トラフ巨大地震」のシミュレーションによる、国土強化のための予算ニーズ。その背景には、当然東北大震災の甚大な被害経験があります。
想定外の大型地震の発生による原子力発電所の崩壊は、建物だけでなく、地域社会をも崩壊させ、心の傷に悩まされている人も多数います。
一方地震対策だけでなく、老朽化対策も重要な転機に差し掛かっているのが、今の日本の状況です。
2012年12月2日、山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで発生した天井板のコンクリート板落下事故。その区間は130メートルにも渡り、走行中の車複数台が巻き込まれ、死傷者も出ました。
高度成長期に大量に整備された日本国中に張り巡らされた道路、橋などのインフラ。それらの耐用年数に、限界がきている可能性があります。
景気対策としてのバラマキではなく、国民も納得できる税金の使い方が実現するのでしょうか。引き続き、週刊ダイヤモンドの興味深い特集をご紹介します。
『朽ちたインフラ』という飯の種
年を重ねるとともに病気がちになるのは、人間に限った話ではない。インフラも同様だ。
昨年の笹子トンネル事故を受けて、ゼネコンにとっての新たな飯の種が生まれた。
◆笹子トンネル事故に端を発し、盛り上がるゼネコンの“皮算用”
「構造物の老朽化や劣化が顕在化している」-。
NEXCO東日本、中日本、西日本の高速道路会社3社が、共同設置した技術検討委員会。その「設立趣旨」で、危機感を表明してから1ヵ月もたたずして、大惨事が発生した。
昨年12月に中央自動車道で起きた笹子トンネル事故だ。
上り線のトンネル内につり金具で固定されていたコンクリート製の天井板が、約130メートルにわたって次々と崩落。1枚当たり1.2~1.4トンのもの塊が、走行中の車3台を押しつぶし、9人の死者を出した。
「経年劣化も原因として考えられる」。NEXCO中日本の吉川良一専務が事故後の会見で、トンネル設備の老朽化に言及した通り、その後の調査で、上り線だけで1000ヵ所以上の不具合が発見された。
図2-1は、笹子トンネルと同じ構造を持つトンネルのうち、主に完成から30年以上経過しているか、もしくは天井板の総延長が100メートル以上のトンネルをまとめたものだ。
国土交通省は、これらを含む計48力所のトンネルについて、緊急点検を指示。また、すでに天井板の撤去工事を行った笹子トンネルと首都高速道路羽田トンネルの2ヵ所以外にも「撤去を検討しているトンネルは複数ある」と国交省は明かす。
ゼネコンにとって、パート1で見た“ミッシングリンク”と呼ばれる高速道路の未完成区間の事業推進とともに、笹子トンネルのような老朽化したインフラの更新は、過去に枯渇したはずの“鉱脈”が突如、息を吹き返したに等しい。
実際、ある地方のゼネコン首脳は、早くも皮算用だ。
「ミッシングリンクの事業など、大規模な新規事業は大手ゼネコンの独壇場だが、老朽化対策であれば、われわれにも十分お鉢が回ってくる」
むしろ、「人命最優先」というお墨付きを得た今、カネに糸目を付けないだけでなく、時の政権に左右されがちな新規事業と比べて、安定したビジネスと目されているのだという。
しかも、それはトンネルや高速道路にとどまらない。全国津々浦々に広がる大小無数の橋梁、港湾、そして学校といった公共施設も対象となる。
その慈雨を最も浴びるのは、他でもないゼネコンなのだ。
◆首都高で進む老朽化に高笑いするゼネコン
老いる日本のインフラー。そのシンボル的な存在が、初開通(京橋~芝浦間)から昨年12月20日に半世紀の節目を迎えた、首都圏を蜘蛛の巣状に走る首都高速道路(首都高)だ。
1月28日に聞かれた国土交通省の作業部会。首都高速道路会社の菅原秀夫社長は、老朽化した道路の更新(造り替え)や修繕費用を、通行料金のみで賄う場合、10%程度の値上げが必要だと訴えた。
その試算の土台となったのが、首都高の大規模更新を検討していた調査研究委員会が、1月15日にまとめた最終報告書だ。報告書では、首都高に必要な大規模更新費用と修繕費用の合計額を、7900億~9100億円とはじき出したのだ。
どれほど首都高は老いているのだろうか。まずは、図2-2を参照してほしい。
病状は、他の主な高速道路より圧倒的に深刻だ。総延長約300キロメートルのうち、開通から40年以上経過した路線が、最長でほぼ100キロメートル。同30年以上の路線を含めれば総延長の5割近くを占める。逆に、開通から9年以下の若い路線はわずか1割にとどまる。
老朽化に伴い、当然、損傷の数もうなぎ上りだ。首都高では、点検などで発見された損傷を「緊急対応が必要」なAランクから、「損傷なし」のDランクまで4段階で記録している。
このうち、緊急対応こそ必要でないものの「計画的な補修が必要」と判断されたBランク損傷のうち、いまだ補修されていない箇所が、2002年度の3万5700ヵ所から09年度には9万6600ヵ所と約2.7倍に急増している(図2-3参照)。
10~11年にそれぞれ年間547億円もの維持・補修費を投入するなど、毎年のように500億円前後のカネが道路保全に割かれているにもかかわらず、“放置”されたままの損傷が、積み重なっているのだ。
先の最終報告書では、大規模更新・修繕を行わない場合、今後100年間にかかる補修費は、合計2兆円と見積もる。しかし、大規模更新・修繕を行えば、その費用を合わせても合計1兆4500億円で安上がりと結論付ける。
首都高速道路会社は今後、05年の民営化の際に50年までとされた債務の償還期限の延長に加え、国や自治体に財源の支援を求めていく方針だ。
同社の担当者は言う。「何よりもまず、財源をどこから捻出するのか。国や東京都などと検討していくことになる」。
◆“カネのなる木”だから「撤去しても儲かる」
一方、東京都の新しい知事に就任した猪瀬直樹氏は、1月18日の就任会見で、首都高の再生に意欲を見せた。
「当然、老朽化対策はやらないといけない。大事なことは、首都高1号線に大型トレーラーが入ってこないような交通体系を考えながら、老朽化対策を急ぐことだ」
官民の思惑が錯綜する首都高の若返り議論の陰で、ほくそ笑んでいるのは、他でもないゼネコンだ。
「もちろん大規模な更新が決まれば、大きな天の恵みになる」と、大手ゼネコン幹部は皮肉な笑みを浮かべる。その上で、「そもそも首都高自体が、その役目を終えていると思う。いっそのこと、すべて撤去してしまえばいい」と持論を展開した。
別の大手ゼネコン幹部も、同様の意見だ。
「物流は、東京外郭環状道路さえあれば、現在とほぼ遜色ないレベルで機能する。首都高があるから、一般の車が流れ込んで渋滞も起きる。あれほどコストパフォーマンスの悪い高速道路はない」
なぜ、ゼネコンの関係者の間で“カネのなる木”であるはずの首都高を切り倒したいという発想が生まれるのか?
「首都高すべてを撤去するとなれば、それこそ、莫大な工事費用が発生する。更新しようが、撤去しようが、どっちに転んでもわれわれは閏う」(前出の幹部)―。
◆“バブルの塔”崩壊の危機!?都庁の設備更新費に780億円
「バブルの塔」とやゆされながらも、1569億円の巨費を投じて建設された東京都庁舎。
1991年の開庁から20年余りを経て、来年、第1庁舎および第2庁舎の空調や電気、給排水菅などを一新する大規模な設備更新工事が着手される。都は2月中にも、具体的な更新工事計画をまとめる方針だ。
背景は設備の老朽化。現在、1000基に及ぶ空調の大半は耐用年数を超え、トイレの水道管の破裂や絶え間ない雨漏りといった外観からは想像もできないトラブルがこの数年、都庁職員の頭痛の種となっている。
工事が完了する2018年度までの総工費は、概算で780億円と建設費の半分。このうち、本格改修に先立って09年度から始まった都議会議事堂やエレベーターなど昇降機の設備工事において、すでに200億円以上が費やされた。昇降機の設備更新だけで80億円かかったという。
そもそも現在の都庁舎は、東京の新たな“顔”になるよう、当時の鈴木俊一都知事と関係の深い建築家、丹下健三氏の案がコンペを経て採用された。ポストモダンのデザインが評価される一方、「修繕や維持コストを無視したものだった」(都幹部)。
複雑な構造から、雨漏りの原因とされる外壁の目地材の総延長は148キロメートルに及び、通常のビルならば1台で済む作業用ゴンドラが、第1庁舎だけで9台も設置されている。
財源について、都は都有地売却などで賄い、「極力、一般財源を投入しない」とする。旧約聖書のバベルの塔のように、東京都をつかさどる納税者の不興を買わないことを祈ろう。

 

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