Windows XP終了後の企業のITの取り組み


マイクロソフトのWindows XPのサポート終了のニュースは、ビジネス界に衝撃を与えました。
なぜならその使い勝手の良さで、その後発表されたバージョンに移行せずに使い続けていた企業が多かったからです。
特にビスタはその立ちがりの遅さから不評で、XP信者が増える結果にもなりました。
そうはいってもセキュリティの進化もあり、新しいバージョンへの移行は、企業のシステム管理の必須条件でもあります。
その辺の最新事情をまとめたレポートを、日経パソコン2013年7月22日号よりご紹介したいと思います。
企業の情報化実態
企業の情報システムは、大きな変革を迫られている。
「Windows XPのサポート終了」への対応が急務であるのに加え、スマートフォン/タブレットなど「スマートデバイス」の活用や、クラウドへの移行は、もはや避けて通れない。
企業はこうしたテーマにどう取り組んでいるのか、調査を基に、実態を明らかにする。
本誌は2013年4月から5月にかけて、「企業の情報化実態に関する調査」を実施。電子情報技術産業協会(JEITA)の協力を得て、930社の情報システム担当者から回答を得た。
 
アンケートでは、情報化に向けた投資の増減、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの活用状況、クラウド構築やBCP(事業継続計画)策定の進捗度などについて聞いた。その回答を分析すると、企業が今後の業務端末の在り方を模索する動きが見て取れた。
まず、2013年度の情報化に関連する投資計画について聞いた。回答企業の37.6%が、情報化投資を「前年度よりも増加」と回答(図1)。予算を増やすという企業は、2年連続で増加した。
◆情報化投資が活発に
「前年度より減少」と回答した企業は16.3%とほぼ横ばい。「前年度並み」とした企業は37.8%で、2年度の調査(42.7%)よりも約5ポイント減った。全体に、投資に前向きな企業が増えているようだ。
 
IT関連の製品やサービスを提供する企業も、こうした気運を察する。リコージャパン・ICT事業本部IT事業センターの八條隆浩センター長は「この3月までは企業の動きは鈍かった。4月以降、急速に投資の動きが活発になってきた」と見る。
 
業種によってもばらつきがあるようだ。富士通・ユビキタスビジネス戦略本部の丸子正道マネージャーは、「全体として投資に前向きな傾向があるが、業種や企業のビジネス領域によって差がある」と指摘する。実際、業種別に情報化投資の傾向を分析したところ、ばらつきが多く見られた(図2)。
 
予算を増やす企業が特に多かったのは、金融/証券/保険業や、情報処理/ソフトウェア関連、商社/流通/小売業である。いずれも、4割以上の回答企業が予算を増やす。
 
一方で、運輪/電力・ガス・水道業では、予算を増やすと回答した企業が25.6%と3割を下回った。予算を減らすという企業も25.6%と業種別では最も多く、IT投資に消極的な傾向が見られた。この分野は、円安や原油価格の高騰が、企業の業績に色濃く影響。情報化予算にも影を落としているようだ。
◆タブレットやXPに関心
では、企業は今、どういった分野やテーマに関心を持っているのだろうか。一本誌が挙げたIT関連のキーワードのうち、最も関心を集めたのは「タブレット端末」で、回答企業の48.5%が選択した(図3)。4位には「スマートフォン」、6位には「iPhone/iPad」と、スマートデバイスへの関心が全体的に高い。
 
2番目に注目度が高かったのは、43.8%の「Windows XPのサポート終了」である。 2014年4月のサポート終了を境に、XPを使い続けることは、セキュリティ上のリスクとなる。多くの企業にとって、懸案事項となっていることがうかがえる。 
次ページからは、これらに対する具体的な取り組みの実態を、調査結果を基に明らかにしていこう。
XPからの移行、半数は間に合わず
情報化予算が増える傾向にあるのは前述の通り。では、企業は具体的に何に力を入れようとしているのか。
 
情報化関連の分野ごとに投資計画を聞くと、投資を増やすという回答の割合が最も高かったのは、「ハードウェア関連」で42.8%だった。次に多かったのは「ソフトウェア関連」で28.2%。「ネットワーク回線・設備」(19.6%)、「セキュリティ対策」(16.8%)と続く。ハードウェア関連への投資を増やす企業が、突出して多い傾向にある(図1)。
 
具体的にはどのハードウェアへの投資を増やそうとしているのか。調査結果を分析すると、その一つはパソコンであるようだ。2012年度のパソコン導入台数と、2013年度の導入予定台数を、パソコンのタイプ別に聞いた。すると、デスクトップ型、ノート型、携帯ノート型のいずれも、2012年度の導入実績に比べて導入予定台数が増えている(図2)。
◆導入パソコンが増える
背景にあるのは、2014年4月に迫っているWindows XP (以下、XP)のサポート終了だろう。XPに加えて、Office 2003と、XPにプリインストールされているWebブラウザー(Internet ExpIorer 6 (IE6)のサポートが同時に切れる(図3)。
 
2014年4月9日のサポート終了後は、Windows Updateなどで提供されてきたセキュリティ更新プログラムが提供されなくなる。不具合や脆弱性が見つかっても、基本的にマイクロソフトは対処してくれない。
 
またXPやIE6を前提とした、サードパーティ製のソフトウェアや周辺機器も、サポートやアップデートが終了する可能性が高まる。マイクロソフトがOSをサポートしない以上、そのOSで動作するハードやソフトの動作を保証するのが難しくなるからだ。
 
こうしたリスクやデメリットを考慮すると、企業はXPの使用を停止せざるを得ない。より新しいOSへの移行やパソコンのリプレースを検討する必要が生じている。
しかしながら、XPへの移行は進んでいないのが実情だ。社内で使用しているパソコン用のOSのうち、2013年3月時点で最も多いOSは何かを聞くと、64.7%が「Windows XP」と回答した(図4)。多くの企業にとって、いまだにXPがメインのOSなのだ。
◆「過半数がXP」が6割超
社内のパソコンの中でXPのパソコンが占める割合も聞いた(図5)。9割以上がXPと回答した企業は16.5%、8~9割の企業は10.6%、7~8割は9.4%と、高い割合で使用している企業が、少なからずある。サポート期限終了まで約1年というタイミングでの調査であることを考えると、対策が急がれる。
 
実際に企業は、2014年4月までにXPから別のOSに移行を完了できるのだろうか。その移行計画を聞くと、「2013年12月まで」に完了を予定する企業が14.6%、サポート期限である「2014年4月まで」と回答した企業は34.6%だった(図6)。
つまり、サポート期限までに移行を完了する予定の企業は49.2%にとどまる。半数は「2014年5月以降」(26.0%)、[移行しない](5.2%)、「分からない」(19.7%)という状況だ。
◆100人未満の企業が先行
OS移行の状況は、業種や企業規模によっても異なる。業種では、信頼性の確保が切実な金融/証券/保険業が移行を計画的に進めているようだ(図7)。28.6%が「2013年12月まで」、46.4%が「2014年5月まで」と回答。合わせて7割以上の企業がサポート期限までに作業を終える見通しだ。
 
企業規模別に移行状況や予定を見てみると、2014年4月までに移行を完了する企業の割合が多いのは、従業員が「100人未満」の企業。2013年12月までに23.2%、サポート期限までには計57.4%が移行を終える見込みだ(図8)。パソコンの保有台数が少なく、移行作業の負担が小さいことが要因だろう。
 
反対に従業員数の多い企業では、「XPパソコンの台数が多いため」(情報処理/ソフトウェア関連、1000人以上)、完全移行までに時問がかかるケースが多い。 「1000人以上」の企業では、2013年12月までに11.9%、サポート期限までに計46.5%が移行するにとどまり、100人未満の企業に比べて遅れている。
 
企業によって、サポート期限までにXPから移行できない理由はさまざまだ(図9)。目立ったのは「リース期限前には移行できない」という回答。「2011年にリースしたXPのパソコンが2015年まで残る」(運輸/電力・ガス・水道業、500~999人)など、4年または5年契約でパソコンをリースしている企業が少なくない。
 
業務システムの都合上、XPから移行できないとする回答も多かった。「XPでしか動作しない業務システムがある」(製造業、1万人以上)、「業務システムがIE6までしか対応していないため」(商社/流通/小売業、1000~9999人)など、システムの改修や移行が間に合わないケースだ。富士通・統合商品戦略本部TRIOLEオファリング推進部の西山聡一シニアマネージャーは、「パソコンを業務端末と考えている企業は、業務システムとセットで移行スケジュールを組むため、タイミングが遅れる場合がある」と指摘する。
◆移行先はWindows 7
XPから移行する企業が、次に採用するOSは何か。最新OSである「Windows 8」かというと、そうではないようだ。移行先として予定するOSを聞くと、最も多かったのは「Windows 7」で、9割以上の企業が選択した(図10)。
 
Windows 8を導入する予定の企業は、現時点では2割程度にとどまる。「一部導入する時期」と[全社的に導入する時期]をそれぞれ聞くと、Windows 8を「全社的に導入済み」と回答した企業はなく、「一部導入」とした企業も14.7%だった。「全社導入の予定なし」との回答は77.6%、「一部導入の予定なし」という回答は55.6%に上る(図11)。
これについてJEITAは、「企業が新しいOSを導入する場合、導入済みの既存システムや従来の業務手順などに問題が生じないことを確認するため、導入前に半年~1年襴度の評価を行うのが一般的。この調査時点で、Windows 8はリリース後半年しか経っていない新しいOSであり、企業での評価が完了していないため、Windows 7を選択する企業が多かったと考えられる」と分析する。
 
実際に回答企業の中には、「業務に必要なソフトウエアの動作検証が済んでいない。今のところ業務向けのOSではないと考えている」(商社/流通/小売業、500~999人)といった声が目立った。
◆Office 2003も終了
一方、XPと同じ2014年4月にサポートが終了するOffice 2003の利用状況はどうか。2013年3月時点で使用しているオフィスソフトの種類を聞くと、『Office 2003』と回答した企業が最も多くて79.9‰約8割の企業が、間もなくサポートが切れるOffice 2003 を使用している実態が浮かび上がった。サポートが既に切れている「Office 95/97/2000」「OfficeXP」を使っているとの回答もそれぞれ2割程度あった(図12)。
 
JEITAはこうした企業の状況を、「Officeはボリュームライセンスなどを通じてパソコンとは別に購入するケースが多い。このためOS以上に、同じバージョンを継続的に使用する傾向がある」と見る。
 
XPのサポート終了ばかりに目が向きがちだが、Office 2003も同様にサポートが終わり、セキュリティ更新プログラムなどが提供されなくなる。企業としては注意が必要だ。
 
Office 2003を最も多く使っている企業が、主にどのOSを使っているかを調べると、一番多かったのは「Windows XP」で83.0%(図13)。この組み合わせでパソコンを使用している企業にとっては、XPの移行と同時に発生するOffice 2003の移行問題が、工程とコストの両面で重くのしかかる。
4割がiPad導入、Win 8への期待も
企業が業務でスマートフォンを活用する動きが広がっている。法人契約でのスマートフォンや携帯電話の利用状況を端末の種類別に聞くと、「一部の従業員に導入」とする回答が、Android搭載機は35.2%、アップルの「iPhone」は33.2%だった(図1)。ともに2012年度調査から10ポイント程度増え、3割を超えた。
 
こうした業務利用のスマートフォンに対し、どのようなセキュリティ対策を実施しているかも聞いた。最も多かったのは、40.7%の企業が実施していた「遠隔地からの端末の口ックや初期化機能」。紛失時への備えである。これに「ウイルスやマルウエアの対策機能」(36.4%)、「紛失時などに端末の位置を特定する機能」(29.3%)が続く(図2)。
 
目を引くのは、どの対策についても、取り組んでいるという回答の割合が、前回調査より高いこと。「特に導入していない」とする企業は32.8%と、前回調査から8.5ポイント低下。セキュリティ対策が進んでいる。
 
タブレットについては、アップルの「iPad」に勢いがある。42.9%が「一部の従業員に導入」していると答えた。 Android搭載タブレットについては、「一部導入」が15.9%にとどまった(図3)。
 
Windows搭載タブレットでは、2012年狄以降、タブレットとしても使える「兼用ノート」や、ディスプレイ部を取り外すとタブレットになる「分離型ノート」が多数登場した。しかし、その導入企業は少なく、まだ浸透はしていない。ただ、「導入を検討」という企業がいずれも15%を超えた。リコージャパンの八條センター長は「何台か試験的に導入したいという引き合いは多い」と話す。iPadやAndroidと同等に、企業が高い期待を寄せている。
◆BYODには前向きに
スマートフォンやタブレットについては、従業員が所有する端末を業務で使う「BYOD(Bring Your Own Device)」。の考え方が注目されている。取り組みの状況を聞くと、「全社的に取り入れている」(2.1%)、「一部の部署で取り入れている」(6.8%)と少ないものの、検討中の企業を含めると、前向きな回答が4分のl近くに達した(図4)。
前回調査では、同様の前向きな回答は約15%だったので、BYODはじわりと浸透しつつあるようだ。特に、情報処理/ソフトウェア関連の企業で取り組みが進んでいる(図5)。
とはいえ、企業の回答をつぶさに見ると、BYODに対する期待と不安が見え隠れする(図6)。コスト削減や生産性の向上を期待する一方で。情報漏洩対策や就業規則の整備を課題と感じている企業が多いようだ。
SaaSの利用企業は増加の一途
グラウトサービスを利用する企業は年々増える一方だ。特に広がっているのが、メールやグループウェアなどの、ソフトウェアをサービスとして提供する「SaaS (Software as a Service)」である。「全面的に利用」が2.1%、「一部のシステムで利用」が34.5%だった(図1)。今回の調査では「利用を検討」とする回答を含めると、ついに5割を超えた。
 
SaaSほどではないが、OSやミドルウエアなどを提供する「PaaS(Platform as a Service)」や、サーバーやストレージなどのインフラを提供する[IaaS (Infrastructure as a Service)」の利用企業も増えている。「全面的に利用」「一部のシステムで利用」との回答は、PaaSが12.9%、IaaSが12.5%に増加(図2)。2012年度の前回調査では、PaaS、IaaSともに7~8%程度だった。
 
こうしたグラウトサービスで、具体的にどのようなシステムを動かしているのか。回答で多かったのは、「メール」(58.6%)、「グループウェア」(45.3%)だが、「財務会計システム」「統合基幹業務システム」といった業務システムも、ともに14.3%が利用(図3)。重要度の高いシステムでも、クラウドを利用し始めている。
クラウドと同様、データセンターを利用するサービスとして「コロケーションサービス」がある。「ハウジングサービス」とも呼ばれ、自社サーバーをデータセンター内の堅ろうな環境に設置できる。利用状況を聞くと、「全てのサーバーについて利用」が5.0%、「主要なサーバーについて利用」が26.8%だった(図4)。
重要性は理解するも策定は進まず
2011年3月に発生した東日本大震災で、BCP(事業継続計画)策定の必要性を痛感した企業は多かったはず。だが、その策定状況を聞いてみると「2011年度以前に策定済み」という企業が27.6%、「2012年度に策定」が10.8%、「2013年度に策定予定」が9.6%と、あまり進んでいない。
  
業種別に見ると、金融/証券/保険業が突出して進んでおり、「2011年度以前に策定済み」が82.8%だった(図1)。監督省庁からBCP策定を厳しく求められているためだ。
  
情報処理ノソフトウェア関連も「2011年度以前」が38.6%、「2012年度」か10.5%、「2013年度に予定」が10.5%と、比較的取り組みが進んでいる。しかし、ほかの業種は、2013年度までにBCPの策定を終える企業が5割に満たない見通し。特に商社/流通/小売業は遅れが目立つ。NTTコミュニケーションズ・第二営業本部の森正敏担当課長は、「BCPの重要性は理解していても、数値目標を含めた計画にまで具体化できていない企業が多い」と分析する。
  
BCPの策定済み企業に、具体的に何をリスクとして想定したかを聞いた。最も多いのは「地震」の94.2%(図2)。停電やシステム障害、通信障害など、情報システムを直撃するリスクを想定する企業も多い。
  
具体的な対策としては、「無停電電源装置(UPS)の導入」が83.8%で最多(図3)。「バックアップデータの遠隔地での保管」(49.3%)、「社外データセンターにサーバーなどを移設」(35.1%)が続いた。

 

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パスワード管理最新事情


ベネッセの個人情報の流出問題は、各方面の情報管理体制のあり方についての議論を巻き起こしています。
確かに現在の情報化社会は、IT技術なくしては成り立ちません。
しかし今回のような事件が1度起こると、企業ブランドの失墜はもちろん、莫大な補償費等の経済的ダメージを受けるリスクがあります。
そういった情報管理の基本が、個人のパスワード管理です。
メールへのログイン、会社のネットワークへのログイン、銀行や証券会社へのログイン等、様々なログインが日常にはありますが、フィッシング詐欺に見られるようにそのパスワードを狙う犯罪も頻発しています。
OPCでは一般事務の派遣案件も多数扱っていますので、是非こういった記事を参考にして頂ければ幸いです。
日経パソコンの2014年3月24日号のレポートです。
パスワード管理の現実解
パスワードの管理は、常に悩みの種だ。
簡単な文字列の利用や使い回しは厳禁とされているが、実用性を考えるとこうしたルールを厳密に遵守するのは難しい。
しかし工夫やルール次第では、安全性と実用性を両立させたパスワード管理が必要になる。
「123456」「password」「12345678」「qwerty」―。 これらは、世界で最も多く使用されているとされるパスワードのベスト4だ。米スプラッシュデータが、2014年に情報漏洩事故によってインターネットに流出したパスワードを集計し、多い順から並べた。上位には、誰でも思い付きそうなパスワードが並ぶ(図1)。
 
ここまで単純でなくても、覚えやすさを優先して、他人から推測されやすいパスワードを使ってはいないだろうか。自分の誕生日、電話番号、名前などだ。分かりやすすぎるパスワードだと、漏洩しなくとも不正利用を招く恐れがある。
◆パスワードが多すぎる
 
とはいえ、ユーザーが管理すべきパスワードが多すぎるのも事実。ブログやSNS、各種ネットサービスはもちろんのこと、パソコンの起動時や無線LANへの接続などにも、パスワードは不可欠だ(図2)。
 
シマンテックが2013年9月に実施した調査では、パスワードが必要なWebサイトを10以上利用しているというユーザーは、3人に1人だった。利用するサービスや機器が増えるにつれ、管理すべきパスワードも増えていくことになる。
 
安全なパスワードに求められるルールは多い(図3)。なるべく複雑なパスワードにするのは基本。加えて、「定期的に変更する」「使い回しはしない」「安易にメモしない」なども励行したい。
  
しかしパスワードが必要なサービスや機器がこれだけ増えてくると、これらのルールを実践するのは難しくなっていく。簡単なパスワードを設定したり、パスワードを使い回したりしたくなるのも無理はない。
  
実際、安全なパスワードのためのルールを順守しているユーザーは少数派のようだ。情報処理推進機構(IPA)の調査によると、サービスごとに異なるパスワードを設定しているユーザーは、27.2%しかいなかった(図4)。多くは大なり小なり、パスワードを使い回していることになる。8文字以上の分かりにくい文字列にしているユーザーも、半数強にとどまっている。
◆使い回しが狙われる
こうした「甘い」パスワードは、悪意のある攻撃者にとって好都合。購買サイトやSNSなどを不正利用しやすくなるからだ。
簡単なパスワードは、第三者が容易に推測できてしまう。数字だけのパスワードや短いパスワードは、文字列を総当たりで変えて不正アクセスを試みれば難なく破れる。こうした手法は「ブルートフォース攻撃」と呼ばれている。「力ずく」の攻撃という意味だ。
一方、パスワードの使い回しを狙うのが「パスワードリスト攻撃」だ。セキュリティ対策の甘いWebサイトからIDやパスワードを盗み出し、同じ組み合わせでほかのWebサイトヘの不正アクセスを試みる(図5)。この場合、同じIDとパスワードを複数のWebサイトで使い回しているユーザーが、不正アクセスの被害に遭う。IDとパスワードが流出したのとは別のWebサイトなので、被害に気付きにくい。
 
そうならないためにも、適切にパスワードを管理することが重要だ。安全かつ確実に実践できるパスワード管理法はどういったものか、考えていこう。
◆実践しやすく安全な方法で管理する
 
誰でも無理なく実践でき、それでいて不正アクセスなどに利用されない安全なパスワード管理法とは、どのようなものだろう。
 
パスワードを安全に管理するという観点で、守るべき原則は次の3点。
「全て違うものにする」、「複雑で推測できないものにする」、そして「他人の目に触れないようにする」(図1)。この3原則を同時に満たす管理方法を実践しなければならない。
 
前述のように、安全性を考えるとパスワードはなるべく複雑にしておきたい。例えば数字だけでパスワードを作成すると、組み合わせは4桁なら1万通り、8桁にしても1億通りしかない。アルファベットと記号も使ったパスワードにすれば、兆の単位の組み合わせになり、破るのは非常に難しくなる(図2)。
 
とはいえ、このような複雑なパスワードをサービスごとに設定すると、たいていのユーザーは正確に覚えきれず苦労するだろう。入力時に間違えたり、思い出せなかったりする恐れがある。こうしたジレンマを解決するには、パスワードを管理するための台帳を作るほかない。
◆一元管理の台帳を作る
IDとパスワードを、ファイルやノートで一元管理しておく。こうすれば、パスワードが非常に複雑でも、数が多くても、困ることはない。記憶に頼らずに済むので、最も桁数が多く複雑なパスワードにして安全性を高めることができる。パスワードを使い回す必要もない。
 
もちろん、パスワードをファイルに保存しておいたり、メモに書いたりすることには、情報漏洩のリスクがある。どのように台帳を作るか、その台帳をどう保管するかが重要になる。
具体的な実践方法は、次の3通りだ。「パスワード管理ツールを使用する」「Excelなどのファイルに保存する」「メモや手帳に書いておく」である(図3)。この中から自分に合った管理法を選択しよう。
 
パスワード管理ツールは、パスワードを管理するための専用ソフトやアプリのことだ(図4)。利用するサービス名とユーザーID、パスワードを登録しておき、入力時にいつでも参照できるようにする。
 
ほとんどのツールは、パスワードを記録したファイルを暗号化して保持する。 Windows用ソフトのほかにスマートフォン用のアプリを用意し、オンラインストレージに保存してあるパスワード情報を同期できるツールもある。
専用のツールだけに、最も安全性と利便性が高い。ただし、パスワードは個人にとって最重要な情報。それを預けるのだから、ツールは販売元や開発者の信頼性も考慮して慎重に選ぶべきだ。主要ツールについて、52ページ以降で紹介する。
◆ファイルや紙で管理
専用ツールではなく、Excelやメモ帳などのソフトでパスワードを一元管理する方法もある。普段使っているソフトなので、すぐに始められるのが利点だ。ただし、ファイルを盗まれたら元も子もない。ファイルの情報漏洩対策に自信のあるユーザー向けと考えておこう。
 
パスワードを記入したファイルは必ず暗号化し、ファイルの盗難に備える必要がある。 Excelであれば、パスワードを使用して暗号化する機能が標準で搭載されているので、それを活用する(図5)。 Excel以外でも暗号化ソフトなどを使って、ファイルを盗まれてもパスワードを見られることがないよう、万全を期したい。パスワード付きでZIP形式などに圧縮しておくのもよい。
 
ファイルは、オンラインストレージを使ってスマートフォンと共有すれば、外出先でもパスワードを確認することが可能になる。例えば、DropboxのiPhone用アプリでは、Excel標準の機能で暗号化したファイルを復号して閲覧できる(図6)。ただし、暗号化の方法によっては、スマートフォンのアプリで復号できないこともある。利用環境であらかじめ確認しておこう。
 
紙でパスワードを管理するという選択肢もある。メモや手帳にパスワ-ドを書いておき、いつでも閲覧できるようにする。もちろん、メモや手帳の紛失または盗難、第三者の盗み見への対処が必要だ。自分なりの工夫を上手に加えておけば、実践しやすい最も手軽な方法だろう。
単純にユーザーIDとパスワードを書き連ねておくのではなく、例えばサービス名やユーザーIDと、パスワードを分けて管理する(図7)。一方の紙には、番号とサービス名、ユーザーだけを書いておく。もう一方には、番号とパスワードだけ1を書く。携帯するのはパスワードを書いたメモや手帳だけ。サービス名を書いた紙は自宅などに保管する。どの番号がどのサービスかだけは記憶しておこう。
こうすればメモや手帳を盗まれたとしても、何のパスワードなのか分からない。紛失に備えてパスワードの紙をコピーし、ユーザーIDの紙とは別の場所にも保管しておくとよい。
 
パスワードをメモや手帳に書く際に、一定のルールで余分な文字を付加するなども有効な対策だ。例えば、8文字のパスワードの前後に2文字ずつ、ダミーの文字を書き加えて12文字のパスワードのように見せる。もし誰かがメモや手帳を盗んだとしても、正しいパスワードを知るのは困難になる。
◆事前に強度をチェック
万が一流出した場合のリスクに応じて、パスワード管理の厳重さをレベル分けするという考え方も現実的だろう(図8)。オンラインバンキングや決済サービス、クレジットカード番号で支払いが可能な購買サービスなど、パスワードを見破られると大きな損害を被るものについては、できるだけ複雑なパスワードを設定。一方、漏洩しても実害のほとんどないサービスなら、自分の覚えやすさを優先したパスワードで済ませる。
 
なお、パスワードの「強度」は、Webサイトなどで客観的に測ることができる。作成したパスワードを入力するだけでよい(図9)。どのようなパスワードが強いのか、事前にチェックしておこう。主要なSNSやグラウトサービスで、「2段階認証」と呼ばれる仕組みの導入が始まっている。 IDとパスワードによる認証に、もうl段階、携帯電話やスマートフォンを使った認証を加える方法だ。
 
通常は、IDとパスワードが盗まれれば不正アクセスが可能になる。しかし2段階認証では、IDとパスワードだけではログインできない(図1)。あらかじめ登録しておいた携帯電話やスマートフォンに確認コードとして送られてくる、「ワンタイムパスワード」による認証が必要になる。つまり、登録済みの機器が手元になければログインできない。
 
パスワード管理を徹底するのに加えて、こうしたサービス側か提供する認証強化の仕組みを利用することで、安全性はいっそう高まる。ほとんどのサービスでオプションとなっており、設定にやや手間はかかるが、できるだけ有効活用したい。
 
設定済みの場合、まずIDとパスワードで認証。初めてログインするWebブラウザーのみ、2段階認証の画面が表示される(図2)。同時にスマートフォンなどにSMSやメールで数桁の数字が確認コードとして送られてくるので、それを入力する。
◆対応サービスは増加中
2段階認証に対応するサービスは徐々に増えている(図3)。 2014年2月には、アップルの「Apple ID」が2段階認証に対応した。
詳細な設定方法を、グーグルのサービスを例に見ていこう。 まずGoogle検索やGmailなどでログイン状態のときの、画面右上に表示されているアカウント写真をクリック。表示されるポップアップ画面で、「アカウント」を選択する(図4)。するとアカウント関連の設定画面が表示されるので、「セキュリティ」タブにある「2段階認証プロセス」の「設定」を選ぶ。
 
ここで指定するのは、確認コードを受信する携帯電話やスマートフォンのメールアドレスだ。携帯電話会社が提供するキャリアメールのアドレスを入力する。キャリアメールを保有していないなら、下にあるラジオボタンで「音声通話」を選び、携帯電話番号を入力しよう。
 
入力を終えると、確認のためのコ-ドがメールで送られてくる。音声通話を選んだ場合は、電話が着信し、自動音声で確認コードを告げる。それを画面に入力。これで設定は完了する。なお、[このパソコンを信頼できる……]にチェックを入れておけば、同じパソコンのWebブラウザーでの次回以降の確認コード入力を省ける。
さらに念のため、「バックアップコード」をダウンロードし保管しておこう。携帯電話やスマートフォンを紛失した場合に、確認コードの代わりに使えるコードだ。あらかじめ10個作成できる(図5)。
◆アップルやMSも対応
新たに始まったApple IDの2段階認証機能も基本的には同様だ。2段階認証を有効にするには、確認コードを表示するためのiPhoneやiPadが必要になる。
 
まず、iPhoneまたはiPadに、遠隔管理アプリ「iPhoneを探す」をインストール。Apple IDでは、SMSかこのアプリで確認コードを受け取る仕組みになっている(図6)。
 
「https://appleid.appIe.com/」にアクセスし、「パスワードとセキュリティ」画面を開く。まだ携帯電話番号を登録していない場合は、番号を入力。この電話番号にSMSのメッセージが送られてくるので、記載された確認コードを入力し登録する。電話番号を登録すると、Apple IDにひも付いているiPhoneやiPadを、確認コードの送り先として選択可能になる。設定後は、新しいパソコンやiPhoneなどで有料コンテンツを購入しようとすると、2段階認証が求められる。
 
Windows 8.1やマイクロソフトのグラウトサービスで使用する「Microsoftアカウント」も2段階認証への切り替えが可能だ(図7)。このほかのサービスも、おおむね同じ設定手順である。
いくつものサービスを2段階認証に切り替えると、確認コードを記したSMSやメールがそのつど送られてくるので、意外に煩わしい。それらの受信を省く方法として、認証アプリが利用されている。2段階認証の際には、認証アプリが表示するコードを入力するという使い方だ。
特に、グーグルが提供する認証アプリは、同社のサービスだけでなくMicrosoftアカウントや「Dropbox」「Evernote」などのサービスにも対応しているので便利だ(図8)。
◆パスワード管理ツールは慎重に選ぶ
最も安全に、しかも無理なくパスワードを管理できるのは、パスワード管理ツールを使う方法だ。ツールの多くは、Windows、Android、iPhoneと、複数の機器向けにそれぞれ専用アプリを用意。いつでもどこでも、パスワードを登録・参照できるタイプが増えてきた。多くのツールが、複雑なパスワードを作成する機能や、パスワードをWebページに自動入力する機能などを備えている(図1)。
ただし、機能や価格だけでツールを選んでしまうのは早計だ。例えば、や「Google Play」「App Store」などで入手可能なアプリは、一定の審査を経ているとはいえ、悪意のある機能が紛れ込んでいることがあり得る。開発元が何らかの事情でツールの提供を停止する、といったことも考えられないわけではない。重要なパスワードを扱うツールであれば、特に慎重になった方がよい。54~55ページで取り上げたパスワード管理ツ-ルは比較的実績があるものをピックアップした。
◆ブラウザーにも管理機能
専用の管理ツールのほかに、身近なソフトウェアにもパスワード管理機能がある。機能や使い勝手はいまひとつだが、利用するなら仕組みをきちんと理解しておこう。
 
まずはWebブラウザー。パソコン用の『Chrome』と「Firefox」の最新版には、簡易なパスワード管理機能が搭載されている。パスワード保存機能を拡充したものであり、保存したパスワードを一覧表示したり編集したりできる。
 
Chromeでパスワード管理機能を利用するには、「設定」で「詳細設定」を表示させ、「パスワードとフォーム」の項目にある「保存したパスワードの管理」を選ぶ(図2)。パスワードは伏せ字になっているものの、パスワードを選んでからWindowsのパスワードを入力すると表示され、編集が可能になる。
 
Firefoxのパスワード管理機能も同様であり、さらに「マスターパスワード」を設定することができる。
パスワード機能を利用する際に、このマスクターパスワードによる認証を求める設定にすることで、セキュリティを強化できる。マスターパスワードさえ入力すれば、登録済みのパスワードを自動入力してくれる。
 
「Internet Explorer」の場合は、Windows 8.1との組み合わせなら、コントロールパネルの「資格情報マネージャー」で、保存したパスワードを確認可能バSafari」では、iCIoudを介してパスワード情報を同期して自動入力する「iCloudキーチェーン」を利用できる。
◆セキュリテイソフトで管理
セキュリティ対策ソフトに付属するパスワード管理ツールもある。いずれもセキュリティ対策ソフトの購入が前提となるが、機能面では専用ツールに劣らない(図3)。
 
シマンテックの「IDセーフ」は、「ノートン セキュリティ」「ノートン アンチウイルス」などに付属するパスワード管理ソフト。ウイルス対策ソフトをインストールすると、WebブラウザーにIDセーフのプラグインが追加される。
 
Webブラウザーで通販サイトやSNSにアクセスし、IDとパスワードで認証すると、その情報をIDセーフのデータベースに登録する。登録済みのパスワード情報は、プラグインから一覧できる。ただし、こうした機能を利用するには、インストール時に指定したマスターパスワードで認証しておく必要がある。
 
IDセーフにはAndroid用の無料アプリがある。パソコンで登録したパスワード情報を。シマンテックのサーバーを介して、Android搭載機でも利用できる。現時点では英語版のみの提供になる。
マカフィーの「Safekey」も、IDセーフと同様の機能を搭載。Webブラウザーのプラグインとして動作する。販売サイトやSNSなどで認証すると、パスワード情報登録画面をポップアップ表示する。ユーザーはWebサイト名やカテゴリーなどを編集して登録する。パスワード情報は暗号化して保存する。
 
IDセーフとの最も大きな違いは、AndroidだけでなくiPhone/iPad用の日本語アプリが提供されている点だ。いずれも無料で利用できる。
ソースネクストの「スーパーセキュリティZERO」は、管理画面で機能をオンにすると、パスワード管理機能を利用できるようになる。こちらは、Windowsパソコン単体で利用するツールである。

 

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外国人は戦力になる!?


日本が抱えている大きな問題の一つに、人口問題があります。
2025年には65歳以上の占める割合は25%を超えると予想されており、このままだと実に4人に1人が高齢者という危機的状況に陥ります。
これの意味するところは、“何らかの対策を打たないと、現在の日本の経済活動を維持できない”ということです。年金問題がよくマスコミで取りざたされますが、それ以前に国の税収の原資である経済活動が縮小していく問題に直面しているのです。
著名な投資家ジム・ロジャース氏は、「日本が最優先すべき課題は、人口問題だ」と言い切っています。
そんな人口問題は産業のあらゆる局面に影響しており、特に労働力不足が叫ばれている建設業界は顕著です。
その解決の方向性の一つが、「外国人の活用」です。外国人と一言でいっても、様々な国があり、異なる民族、宗教、価値観、習慣があります。そこを、どうマッチングしていくか。その最新の取り組み状況を記したレポート記事を、ご紹介したいと思います。
「外国人」は戦力になるか?
「技術移転」か「人材確保」か、復興・五輪を視野に揺れる制度
現行の外国人技能実習制度は、2010年7月から運用されている。一定の要件を満たす企業が単独で技能実習生を受け入れる方法と、非営利の監理団体を介して傘下の企業が受け入れる方法がある(下の図)。
いずれも、実習生は日本国内の受け入れ企業と雇用契約を結び、労働法規や最低賃金法規の適用対象となる。入国前後に一定期間、日本語や日本での生活に関する教育が義務付けられ、実習本番は最長3年間。
建設関係では法律上の在留資格としてとび、型枠施工、鉄筋施工など約20職種(2~3年目の在留資格「技能実習2号」の対象)が定められている。専門工事会社が監理団体を介して受け入れる例が目立つ。
3年間で、“日本流”の技能をどれほど身に付けられるのか。この2月19日、日本建設業連合会と海外建設協会は、同制度の啓蒙や活用促進で10年度から実施している「ベストプラクティス表彰」で専門工事会社3社を選定した。これら3社の取り組みから、考えてみたい。
3年で技能者として1人前に
同表彰で日建連国際委員長賞に選ばれた向井建設(東京都千代田区)は、躯体工事がメーンの専門工事会社だ。同社は1989年に旧建設省の要請で中国から海外研修生(当時)の受け入れを開始。
2009年以降は主にベトナムから、建設業振興基金を監理団体として受け入れてきた。
12年1月からは、首都ハノイ市から約85km南方のニンビン市にある職業訓練校で、独白のシステムによる事前研修を開始。 13年2月に受け入れ企業約30社と任意団体「ベトナム人海外技術・技能者人材育成協議会」を結成し、共同訓練の場として活動を本格化させている。
事前研修は4ヵ月間で、4月と8月、12月にそれぞれ開始。鉄筋施工、型枠施工、とび、内装工事の4工種で各20人を受け入れる。参加者はネットやテレビ、新聞などを通じて募集。2日間で数学(現地の中学校中級レベル)と一般常識のペーパーテスト、実技試験、面接を行う。
「対象年齢は23~40歳、高卒以上で建設業経験5年以上を受験資格にしているが、履歴書はあまり当てにならない。実技試験は、図面と材料を渡してつくってもらう」と向井建設の池上朋之常務取締役は話す。
◆卒業できるのは8割
合格後はまず1ヵ月半、日本語や日本の文化・生活、安全・品質に関する知識、現場特有の言い回しや用語、道具などについて座学でみっちり教育する。
「現場で職長が『あれを持ってこい』と言ったら、『あれ』とはどの範囲を指すか。そうした慣用表現の解釈まで教える。ベトナムにない道具も多い。実技の前に、こうした知識を身に付けてもらう」(池上常務)。
講師は在日経験のあるベトナム人日本語教師と、向井建設などから派遣された職長クラスの技能者が担当。日本での技能実習を終えたべトナム人OBも、言葉や技能面の通訳として加わっている。毎週小テスト、毎月月末テストを実施し、成績順位を教室に張り出す。成績不良者には「イエローカード」を発行し、3枚たまると退学だ。
座学を終えると、基礎的な実技研修を約1ヵ月半実施。そして最後の1ヵ月は応用研修。訓練校の敷地内に実習生用の新しい寮を建設中で、その現場に加わってもらう。実技研修に入っても、日本語教育は継続する。日本語能力試験で最も難易度が低いN5級の取得も、卒業の条件だ。
最終的に合格者の8割程度しか卒業できない」(池上常務)。
来日して監理団体による1ヵ月間の座芥研修後、実習生は受け入れ企業に。制度上、正社員として受け入れることが義務付けられており、各種保険も適用され、給与は月給制。
育成協議会では地域を問わず東京の賃金ベースで、宿舎の利用費なども含めて一律に定めている。
1社当たりの受け入れ人数も制度上、企業規模などに応じて決まっており、常勤職員50人以下は3人まで。育成協議会のメンバーを含めて、専門工事会社ではこの人数枠に該当するケースが多い。
 
職業訓練校の卒業者は一定の日本語能力と技能を身に付けているが、特に優秀な人には多少延長して訓練校に居残ってもらい、リーダー教育を施す。リーダーを核にしたチームで実習生を編成し、受け入れ企業に割り振るようにしている。受け入れ経験が浅い企業などでも、リーダーに指示すればチームで動けるようにするためだ。
◆実習生OBが緩衝役に
ペストプラクティス表彰海建協会長賞の大崎建設(東京都文京区)は、とび・土工を得意とする専門工事会社。元々80年代に、東南アジアの現地法人で必要な職長クラスの技能者を育成するために、当時の制度で日本での技能研修を行っていた。
91年、同社が旗振り役となり、専門工事会社十数社とマルチコントラクター協同組合を設立。同組合が監理団体としてフィリピンから技能実習生を受け入れ、加盟企業が技能実習を実施している。加盟企業は現在、鉄筋施工、型枠施工、とびなど二次下請けクラスを中心に約100社で、年間の受け入れ人数は合計200人程度だ。
募集は現地の送り出し機関が、実施。高卒以上で40歳以下、建設業で3年の経験が募集条件だ。書類選考を経て、面接と実技試験で応募者数の3割程度に絞り込む。
「必ず受け入れ企業の経営者なども同行し、面接や実技試験にも立ち会う」。大崎建設の久々湊佳貴労務担当部長はこう説明する。
送り出し機関で、日本語教育などを約2ヵ月間。現地に帰国した実習生OBも指導員として事前教育を行う。入国直後の1ヵ月間は、協同組合が実用日本語や生活上の注意点、日本の建設現場の状況などに関するオリエンテーションを実施。その後、実習生は受け入れ企業と雇用契約を結んで、技能実習に入る。
「小規模な会社が多く、実習手法や各種手続きなどは組合が指導している」と同組合の森山篤理事長は話す。他方、受け入れ経験の豊富な企業では独自のマニュアルなどを整備しているところもある。
さらに協同組合でもフィリピン人実習生OBを数人抱え、受け入れ企業を定期巡回。実習生の悩みや相談に応じるほか、2年目以降の実習継続に必要な技能検定基礎2級の受験のサポートも行う。企業側との調整役も果たす。「こうした緩衝役が絶対に必要」(森山理事長)。
また、受け入れ企業で実習生を直接指導する職長クラス向けの研修も、年3回程度行っている。
◆資格も取得してもらう
ベストプラクティス表彰で奨励賞を受賞したカワグチ鉄工(静岡県沼津市)は社員30人弱の鉄骨メーカーだ。監理団体を通じて2007年に中国からの実習生を受け入れたのを契機に、11年からはベトナム人実習生をほぼ毎年3人ずつ受け入れてきた。現在は、6人が実習中だ。
実習生はいずれも20代前半で、入国前に溶接に関するJIS(日本工業規格)相当の資格を取得済み。同社に受け入れた後は、王掛け技能講習の資格も取得してもらい、工場作業だけでなく、現場作業にも加わってもらっている。
「受け入れ始めた当初は、言葉や母国流の考え方、習慣・文化の違いなどで苦労した」(河口博幸社長)。だが継続して受け入れることで、先輩格だったり、日本語に比較的堪能だったりする実習生が他をフォローするようなサイクルが生まれているという。
「3年目を迎える頃には、いずれも技能者として一人前と言っていい。事実上、大切な戦力になっている」と河口社長は話す。技能者としての資質自体は日本人の若い新規入職者とさして変わらないという見方で、他の受け入れ企業でも同様の意見を多く耳にした。
時限措置で継続・再入国が可能に
政府は4月4日、建設業の人手不足対策として、外国人技能実習制度で受け入れ期間の延長などを含む時限措置を講じると発表。適用は2015年度から20年度まで。夏までに詳細な実施要項を発表する見通しだ。
時限措置の主な内容は、次の通り。現行で最長3年間の実習期間を継続して2年の延長を可能にする。また3年間の実習を終えて帰国した人が再来日して、再び2~3年の実習を受けられるようにする(下の図)。
受け入れ側に対する監理体制も強化。時限措置に基づく継続実習などを実施できるのは、「優良」な監理団体・受け入れ企業に限定。過去5年間に不法行為や処分歴がないことなどを認定条件にする。建設業法に基づく国土交通省などの立ち入り検査や監督・処分、実習現場の元請け企業による受け入れ企業(下請け会社)への監理状況確認といったメニューも、現時点で盛り込まれている。
◆元請けにも変化の兆し
 
外国人技能実習生は全産業ベースで15万人強と、近年は右肩上がりで増えてきた。国際研修協力機構(JITOO)の統計では、建設関係で実習2~3年目の実習生がこの3月末時点で4865人(速報値)。現状ではほとんどが建築系だ。
「受け入れニーズは、この2年ほどで急激に増えている」(マルチコントラクター協同組合の森山理事長)。国内の人職者が減少するなか、実習生を事実上の“戦力”と捉える企業は多い。
大手建設会社にも、変化の兆しがある。元々は国内現場への受け入れを敬遠する例が多かったが、この1年で、受け入れ側へのヒアリングや送り出し機関の視察など、情報収集の動きがじわりと広っている。
例えば大成建設は昨年6月、基幹協力会社を対象にベトナム人技能実習生の受け入れに関する説明会を初めて開催。今年3月にも2回目を開き、現地送り出し機関と国内監理団体の組み合わせで4組がレクチャーを行った。
「協力会社の中には、以前から積極的に受け入れに取り組む会社が複数いる。そうした経験や正しい知識を皆で情報共有しようと企画した」。同社土木本部の秋里乃武宏企画室長は説明する。
◆実習生OBのフォローがカギ
外国人向けの研修・実習制度は以前から、開発途上国への技術移転という建前と、人材確保策として期待する多くの受け入れ側の本音という矛盾を抱えてきた。雇用・賃金面の保護策が強化された現行制度の運用開始後も、内在する矛盾を指摘する批判が国内外で根強く残る。
政府が示した時限措置は、震災復興と五輪向けの対応という意図が明白。“労働力”として、お墨付きを与えるに等しい。「技能伝承を通じて海外に知日派、親日派を育てるのが本来の趣旨。労働力として期待するのは日本側の勝手な都合で、使い捨てととられかねない」。向井建設の池上常務は、こう懸念する。
他方、多くの受け入れ側が、「ようやく一人前になった頃に帰国するのは残念」という率直な思いを抱いているのも実態だ。それだけ、貴重な戦力と評価しているとも言える。だがこうした受け入れ側も、時限措置の内容を手放しで歓迎しているわけではないようだ。
育成には、手間と時間が必要。人材不足対策と位置付けて受け入れ人数が急増すると、全体として質の低下を招く」、「受け入れの経験上、海外への出稼ぎ文化が浸透した国の実習生でも、継続在留は3年が気持ちの限界。さらに長い期間になじめるか」、「帰国後は他の職種に就く実習生OBが多い。再入国の場合、技能力などの面でゼロからのスタートにならないか」。こうした声もある。
どのような方向に進むとしても、関係者の多くが重要と指摘するのは、実習生OBのフォローだ。例えば大崎建設は09年度に国交省などが実施しか「外国人研修生・技能実習生への建設技能移転高度化モデル事業」で、OBの人材データベースを提案。試作版を開発し、その試行や体制づくりを継続中だ(上の図)。
「国内の元請け会社から、海外工事の人手を求められる際などのニーズを想定した」(同社の加賀谷昭年統括部長)。同様の取り組み例は、他の受け入れ企業にもある。時限措置が掲げる再入国のケースが現実化すれば、こうしたツールが別の価値を生む。受け入れ企業にとっては、自社で育てた優秀なOBを再び招くのが最も安心で、「さらなる高度化」という制度の趣旨にも沿うからだ。

 

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上場にあたってやるべきこと


上場を決意して先ずするべきことは?
2回目の今回は、上場をしたいと思った時に、先ずするべきことについてお話します。
上場会社は、不特定多数から資本金を集めます。その時投資家が参考にするのが、その会社の財務諸表です。決算期末における貸借対照表と、過去1年間の損益計算書、そしてキャッシュフロー計算書です。
こういった財務諸表が正しくその会社の実態を示しているかどうかをチェックしてくれるのが、公認会計士事務所である監査法人です。
従って会社を上場するためには監査法人の監査を受けて、その財務諸表を決められた日までに開示しなければなりません。そのためには、各部署及び管理部門がしっかりとした経営資料を作らなければなりません。
上場を決意したら、先ず公認会計士事務所に短期調査をしてもらって、そういった会計監査に準じた方法で財務諸表をつくり直してもらいます。
というのは、普通の中小企業の場合は、上場会社が行なっているような企業会計原則に則った監査ではなく、税務会計といって、税金を適正に納めるための会計処理をしていることが多いからです。この場合どちらかと言うと会社の実態を正確に表しているかどうかよりも、どうすれば納める税金を減らせるかに重点が置かれがちです。
短期調査は公認会計士の先生3人程が3日間ぐらい会社に来られて、会計帳簿を調べたり、経営者、管理部門や営業部門の責任者に面接をしたり聞き取りをしたりします。そして、2~3週間でその報告書が出来上がります。費用は会社の規模や調査内容にもよりますが、50万円から100万円ぐらいです。
これによって上場をするのに致命的な問題はないか、改善すべき点は何かを指摘してくれます。その内容を見れば果たして上場できるのか、何年ぐらいの時間がかかるのか、おおよそのところが分かります。
この結果を見ると、大抵の経営者の方はびっくりされます。それは自分が思っていたよりも会社の財務内容が良く無いことが多いからです。
場合によっては、実質的に債務超過になっているということもあります。でも、これでがっかりする必要はありません。会社の実態を正確に知ることは、経営者が先ずしなければならないことだからです。問題点をどのように一つ一つ解決して行くか?むしろ経営者に取っては、より良い会社にする意欲が湧いてくるきっかけになります。
上場を決意された社長様には、ぜひこの短期調査を受けられることをお勧めします。また、上場を目指さない方も、会社をより強くするためにご活用されるのが得策です。

復興現場の実情


『復興が抱える不安』特集の続編です。
地元との軋轢、技術者不足、利害調整等、様々な問題提起がされています。
テレビだけではなかなかわからない実像が浮かび上がってくる、優れたレポート内容です。
「人口減少」を意識した土地利用が必要
多くの自治体が、防潮堤の背後に広がる低平地の使い方に悩む。
 
例えば、悩みの一つが防災集団移転促進事業(以下、防集事業)で買い取った土地の活用策だ。被災宅地は基本的に買い取り可能だが、地権者が希望しない宅地や工場・作業場の土地などは買い取りの対象にならない。そのため“飛び地”ができてしまう。また震災で広域的な地盤沈下を起こした土地は、利用するとしてもかさ上げしなければならない。かさ上げには漁業集落防災機能強化事業の制度を利用する方法がある。漁業集落の再興を図る事業限定ではあるが、かさ上げのほか生活基盤の整備などができる。
 
もう一つの方法が、防集事業の移転先の造成工事で発生する残土の処理場としての利用だ。搬入費は防集事業費でもつ。しかし、敷きならしや転圧までは費用を認められないので、宅地に造成するのは難しい。復興交付金事業で敷きならしや転圧が可能になった例もある。石巻市鮎川浜地区で、13年末に防集事業の基幹事業として、復興庁から認可された。跡地利用を明確にした場所だけ、転圧や敷きならしができる。
◆都市間競争が起こる懸念
被災地の復興計画の作成をアドバイスしている東北大学土木工学専攻の平野勝也准教授は、「自治体職員の多くが、人口減少の時代にあるという意識が乏しい。土地があれば有効に利用するのが当然と思っている」と話す。無駄に大きい震災公園の計画などは最たる例だ。 
「高台移転で市街地を拡大した分、“土地を減らずという発想が必要になる」(平野准教授)。野村総合研究所社会システムコンサルティング部の神尾文彦部長は、「漁業など土地に生業がない町では、高台移転が進んでも町に益を生み出すために精力的に土地を開発せざるを得ない。どうしても拡大基調になってしまう」と指摘する。 
被災自治体の職員には「隣の町よりも良い復興計画を立てて人をつなぎとめる、または人を呼んでくる」との思いが強い。そのため無駄に空き地を開発してしまう、悪い意味での都市間競争が起こる恐れがある。
利用減少下での復旧に議論紛糾
◆不安2  線路の行方
JR東日本の被災路線で、復旧の過程に大きな差が生じている。本復旧で既に工事着している路線、BRTで仮復旧している路線、バスで代行輸送している路線。利用者数が減少下にある鉄道の復旧はどうあるべきか。最終的な鉄路の行方をめぐってJRや沿線自治体の主張がぶつかり合う。
震災によって、JR東日本で東北地方を走る7路線が津波被害を受けた。そのうち八戸線を除く6路線約246kmの区間では、3年を経た今も運休状態だ。同社は震災直後に、「責任を持って復旧する」としたが、現状は路線によって復旧のロードマップに差が生じ始めている。
例えば、石巻線や仙石線は2015年に運転再開の予定だ。一方、山田、大船渡、気仙沼の3路線は復旧のめどがいまだに立っていない。
 
同社は被災路線の復旧に関して、四つの条件を提示。3路線の復旧に大きく立ちはだかるのが「乗客の安全確保」と「まちづくり計画との整合」という条件だ。
 
3路線はほかと比べて、流失した駅舎が多く、広範囲で被災した。復旧の具体策の検討では、「津波を防ぐ防潮堤がいつ、どのように整備されるか」、「復興まちづくりの計画で鉄道がどのように配置されるのか」といった周辺のインフラ整備とも密接に関連する。地域全体の復旧・復興と足並みをそろえる必要があるから、一筋縄ではいかないのだ。
「解決に時間が掛かり、被災した路線を何年もこのままにしておけば、住民に鉄道を使わない生活が定着せざるを得なくなる。せっかく復旧しても、使われなくなってしまう」と、JR東日本総合企画本部の熊本義寛復興企画部長は話す。
 
そうしたタイムラグを埋めるために、復旧までの応急的な交通システムとしてJR東日本が沿線自治体に提案したのがBRT(バス高速輸送システム)だった。
◆大船渡線、気仙沼線はBRT受け入れ
JRの提案を受け入れるか否か。沿線自治体の意見は分かれた。結局、具体化したのは大船渡・気仙沼の2路線だった。
 
2路線が走る気仙沼市の小川良直震災復興・企画課長は、「気仙沼線が不通になったことで、乗客の大多数を占める学生の通学などに支障が生じていた。そのため鉄道復旧までの仮復旧ということで受け入れた」と振り返る。代替交通の民間バスが不便だったことも要因の一つだった。
 
気仙沼線は12年12月から、大船渡線は13年3月からBRTを運行開始。専用道路整備率も上がっており、乗客は徐々に戻りつつある。
 
他方、本復旧に向けての調整は難航中だ。2月5日にJR東日本が公表した復旧費の概算額も、さらなる課題を突き付けることになった。気仙沼線の原状復旧費は300億円。一方、津波に対応すべく移設やかさ上げを実施して、沿線自治体のまちづくりと連携する形で復旧する費用は700億円に跳ね上がるというのだ。
JR東日本は原状復旧費の工面を表明する一方、残りの400億円には自治体や国の支陂を求めている。
一方、BRTの受け入れを拒否したのが山田線の沿線自治体だ。元々、民間バス会社2社による路線バスが充実しており、復旧まで路線バスを強化すればよいという結論に至った。
◆山田線は原状復旧費以外も工面
「復旧時期をJRは明言しておらず,先が見えないなかで受け入れられなかった。最初から「本復旧」の方がお金も掛からない」(岩手県大槌町の澤田彰弘総合政策部長)。
山田線の場合、JRが13年3月に示した原状復旧費は140億円。「安全」と「まちづくり」を考慮した復旧費は全体で210億円で、うち70億円は工面できる見通しが立ち始めた。自治体との調整で区画整理事業の盛り土上に線路を敷設するなど、復興交付金を当てにできそうだ。
しかし、この1月末に状況は新たな局面を迎える。JRが三陸鉄道に山田線を譲渡する意向を表明したのだ。三陸鉄道は1981年に発足した第三セクターで、47ページの図のように山田線の南北に連なって走る。山田線と一体的に運営することで経営コストが下がるというのが、譲渡提案の理由だ。
今後、一定期間の赤字補填や鉄道施設の保有形態、復旧方法など、検討すべき項目も見えてきた。
例えば、復旧方法では三陸鉄道と山田線の規格の違いが問題になりそうだ。山田線を単に原状復旧して移管すると異なる規格で維持しなければならない。規格を三陸鉄道に合わせて復旧して移管した方が、維持管理の負担は減る。
様々な問題が山積みで復旧までの道のりは長くなった。最終的な決断はまだだが、市町長らは前向きに検討する意志を表明している。
◆JRの利用促進に自治体が協力
3路線の行方に注目が集まる背景には、これらが震災前の時点で、乗客数減少の悩みを抱えていたことと無関係ではないだろう。
山田線は沿線人口の減少や鉄道駅付近の病院施設の移設などが影響して、震災前の輸送人員はJR発足時点と比べて約6割も減っていた。
 
JR東日本の被災路線復旧の条件には、「一定の輸送需要の存在」が盛り込まれている。人口減少下の時代に震災でさらに人が減り、復興後に震災前の乗客数を確保できないのは目に見えているからだ。
山田線については、同社は沿線自治体に利用促進策の検討を打診。関係自治体は13年5月から、利用促進検討会議を開いて議論を続けている。
 
例えば宮古市では、市役所を駅の近くに移転するなど、できるだけ鉄道を使いやすい環境をつくる計画だ。ソフト対策では、13年末から月に1度、市職員を対象に「ノーマイカーデー」を実施している。
 
JRの鉄道の利用促進に関して、自治体が主体的に関与する動きはこれまであまり例がなかった。地域交通に詳しい東京工業大学人間環境システム専攻の屋井鉄雄教授は、「利者が減少する全国の鉄道に波及すればよい」と期待する。
13年末に廃線勧告を受けた岩手県の岩泉線のように、災害で甚大な被害を受けて、従前の利用者が少なかったために復旧せず廃線に追い込まれたケ-スもある。今後、地方の鉄道の利用者減少が見込まれるなか、同様の事例は増えるだろう。
「日頃から、鉄道をどれだけ支えているか。地域を挙げて、利用者を増やす取り組みをしているか。今後、赤字路線を残すか廃止するかの判断では、そんな視点も重要視されるのではないか」(屋井教授)。
◆BRTのメリットも見えてきた
一方、仮復旧で始めたBRTに、新たな交通機関としての可能性を評価する声も上がり始めている。気仙沼線や大船渡線で導入したBRTは一般道を併用して走る区間が多く、定時性や速達性の面で鉄道よりも劣るとされていた。
 
しかし、13年9月時点で専用道区間を気仙沼線は路線全体の約40%、大船渡線は約30%まで整備し、速達性や定時性は向上。気仙沼線は今後、70%にまで整備する予定で、鉄道並みの機能を期待できる。
BRTならではの利点も確認できた。現在の運行頻度は、多い区間で既存鉄道の2倍以上に増大した。
そのほか、「BRTはほかのバス路線と相互直通できる点が優れている」と、都市交通などを専門にする横浜国立大学交通と都市研究分野の中村文彦教授は指摘する。例えば、既存のバス路線と組み合わせて山間部への直通便をBRTに設定することができる。また、仙台市など遠方にも、建設中の三陸縦貫自動車道の供用開始後にBRTバスの高速便を設けることも可能だろう。
 
ある鉄道事業者の幹部は、鉄路の復旧に次のような疑問を投げ掛けた。
 
「鉄道の被災区間の多くでは、人口減少や高齢化が進んでいる。鉄道を元に戻すだけで良いのか。形は変わっても以前より高いサービスを提供することで、公共交通機関の利用を促し過疎化の流れが少しでも止まるのであれば、それも一つの復興の形ではないか」。
◆不安3 切迫する覆工板不足
被災地で、生コンの次に不足が懸念されている資材が覆工板だ。リース会社への聞き取り調査で、今後、在庫の4倍以上の覆工板が必要になるという報告もある。資材不足の対策は、現場で「不足している」という声が聞こえ始めてからでは遅い。国も事態を重く見て、情報収集に乗り出した。
震災後、被災圸で長らく資材不足の代名詞となっていたのは生コンだった。官民がプラント新設や供給調整に苦心した結果、生コンの需給が均衡してきた地域もある。一方、新たに懸念されているのが覆工板の不足だ。
 
「覆工板不足で工事ができないという状況にはまだ至っていないが、今のうちに対策を練らなければ、お手上げ状態になる」。
仮設資材のリース会社、ヒロセの中村文明東日本復興本部副本部長はこう話す。同氏は、同業者で組織する重仮設業協会の活動として、震災以降、覆工板需要の情報収集を続けている。
仮設資材のリース会社、ヒロセの中村文明東日本復興本部副本部長はこう話す。同氏は、同業者で組織する重仮設業協会の活動として、震災以降、覆工板需要の情報収集を続けている。
例えば復興道路の一つ、宮古盛岡横断道路では今後の2年間で2万㎡の覆工板が必要になる見通しだ。また各地で堤防高が決まったことを受け、橋梁工事などの発注が本格化し始めている。河川や谷での施工となれば桟橋が必要で、覆工板が欠かせない。
同協会の会員各社への聞き取り調査によると、関東・東北地方で保有する覆工板の在庫は2013年10月時点で全保有量の15%を切っている。他方、既に受注済みの分と、引き合いなどで今後必要になる見込み分を合わせると、在庫の4倍超の需要が見込まれる計算になる 
◆まずは工事情報の収集で対処
不足する見通しを受けて、国土交通省も動き出した。
「これから発注する工事情報を細かく収集して、覆工板の今後の需給見通しをまずは把握する」と、東北地方整備局企画部技術管理課の鈴木之技術検査官は意気込む。
 
13年12月に開いた建設資材対策東北地方連絡会で国交省は、東北6県に対して、これから発注する工事で覆工板の納入や撤去の時期を報告するように依頼。覆工板はリース材として流通するケースが多いので、使用時期が集中しないように工事間で調整すれば、転用でやり繰りできるという考えだ。
震災後にいち早く不足が露見した鋼矢板で、同様の取り組みを先行して実施している。鋼矢板の場合は、発注者が輸送費をみる代わりに名古屋以東の遠隔地から調達することで品薄状態を解消した経緯がある。
 
覆工板も同じように遠隔地から調達できれば良いのだが、現状を見る限り難しそうだ。重仮設業協会の佐川知吉事務局長は、「豪雨災害などによる復旧・復興や補正予算による工事の発注増で、覆工板は全国的に不足気味だ」と話す。各地で覆工板をやり繰りするだけで精一杯という状況だ。
◆リースではなく買い取りを視野に 
全国的に覆工板の総量が足りないのであれば、メーカーは増産するのか。実際、産業振興(東京都江東区)のように、今年1月に新日鉄住金釜石製鉄所構内に覆工板の加エセンターを新設したメーカーもある。 
しかし、メーカーが増産に踏み切っただけでは事は収まらない。公共事業では覆工板は基本的にリース材だ。リース会社が事業量の増大に応じて、メーカーから覆工板を購入する必要がある。
現状で、震災復興の需要は永続的ではないとする見方が多数で、リース会社にとっては短期的に在庫を急に増やすことは経営上のリスクにもなる。数年間の償却(リース会社によって違う)が終わらないうちに余剰在庫を抱える恐れがあるからだ。
 
ヒロセの中村副本部長は「長い工期や海岸部での施工のように仮設の覆工板がスクラップになる可能性の高い工事で使う場合は、発注者などがメーカーから買い取る方法を国にお願いしている」と話す。
◆不安4 安全対策に黄信号
目立つ「基本がおろそか」な労災
「稼働する重機の周囲で立ち入り禁止措置を取らず、誘導員も配置していない」。法令の順守など、安全対策上の基本がおろそかにされた結果、労災につながる例が目立ち始めている。人手不足を背景に作業員から現場監理者まで、経験が浅い人が増えたと指摘する声もある。
今年2月13日、釜石労働基準監督署は、管内の建設工事現場で生じた労働死亡災害に関し、施工会社などを書類送検したと発表。昨年9月中旬に発生した事故だ。作業中のバックホーの近くで、高齢作業員がランマーを使った締め固め作業を行っていた際、バックホーのアームが突然旋回。その動きに驚いた作業員は思わず、ランマーから手を離した。反動で暴れたランマーのハンドルが腹部に当たって重傷を負い、4日後に死亡した。
この被害者は、二次下請け会社の作業員。同署は、釜石市内に本社を置く元請け会社と東京都内の一次下請け会社、および元請けの現場代理人、一次下請けの工事課長の計4者を労働安全衛生法違反の容疑で書類送検した。
「車両系建設機械を使う際は、周囲に立ち入り禁止措置を講じるか、誘導員の配置が必要。元請けも複数の下請け作業員の連絡・調整を行うべき義務がある。いずれも怠っていた」。
岩手労働局労働基準部監督課の高橋嘉寿満課長はこう説明する。
◆一斉監督指導で違反率70%超
右上のグラフは岩手、宮城、福島の3労働局が発表した労働災害の発生状況。労働者死傷病報告における死傷者数で、1月~12月の累計値だ。 2013年分は各労働局がこの1月、速報値として発表した。通常は、速報値の後に公表される最終集計値「確定値」のほうが多くなるもの。しかし岩手のみ、速報値ベースで建設業全体、土木工事ともに前年の確定値を上回っている。
建設工事の労働災害は一般に、工事量に比例して増減すると言われる。工事量の差を無視した地域間あるいは各年の単純比較は、あまり意味がない。しかし高橋課長は次のように話す。「昨年末に3局で実施した現場の一斉監督指導でも、岩手管内の違反率は70.7%と最も高かった。法令順守などの基本がおろそかにされている違反例が少なくない」。
同局では13年、従来の一斉監督指導に加えて、工事量の増加を見越した労災対策を複数実施してきた。例えば大型工事が多い地区などで、地元労基署が顧問となって施工会社の連絡協議会を設立し、互いに安全パトロールに出向くといった取り組みだ。それだけに危機意識は強い。
 
速報値ベースで労災発生数が前年より減少した宮城でも、警戒感は緩んでいない。「建設業全体としては前年より減ったが、土木工事での労災の減少幅は他の工種ほどではない。河川や道路、各所のかさ上げなど、増えてきた復興工事での労災が目立つ」(宮城労働局労働基準部健康安全課の昆野良久課長補佐)。
 
復興工事本格化の一方で、常態化・深刻化する人手不足。労災との因果関係を明確に示すデータはないが、無関係とは言えないだろう。「経験年数の浅い人や高齢者の被災例が目立つ」と厚生労働省労働基準局安全衛生部建設安全対策室の釜石英雄主任技術審査官は話す。
◆代理人・職長クラスも熟練度不足
深松組(仙台市)の林正次環境安全部次長は自社の現場のほか、仙台建設業協会などの活動として他社の現場に安全パトロールに出向くことも多い。「新規参入や若年の作業員など、経験不足から危険に対する認識が薄い人が各所の現場で増えたと実感している」と打ち明ける。
 
写真のように作業中の重機に不用意に近寄る人や、所定の資格保持者でも斜面で不安定な態勢でアームを旋回する重機オペレーター、玉掛け作業で危うい吊り方をする人なども見かけるという。
「震災前は重機の転倒事故はあまり聞かなかったが、今は増えている。熟練者なら行わない動作・操作をする人が目立つ」(林次長)。
 
作業員だけでなく、現場代理人や職長クラスの熟練度不足を指摘する声も多い。「例えば、現場のポスターなどに『墜落災害防止』と掲げながら、具体策を問うと不明瞭。教えられていないのが分かる」。やはり安全巡回指導に従事する建設業労働災害防止協会宮城県支援センターの千葉善三所長はこう話す。
同センターは、現場の技術者・技能者向けの安全教育活動にも取り組んでおり、11年度と12年度は新規参入者向けの講習に特に重点を置いた。13年度は重点対象を職長クラスにシフトしている。
また岩手労働局でも大船渡労基署が石巻労基署(宮城労働局)と合同で1月、三陸沿岸地域の工事に従事する職長クラスや作業員をターゲットにした安全セミナーの開催するなど地域を挙げて現場での安全意識の底上げに取り組んでいる。
◆ 「潜在化するメンタルリスク」 発注者の職員もストレスが常態化
「先の見通しが立たないことに、ストレスを感じている人が多い」精神科嘱託医として、岩手県や地元自治体の職員からメンタルヘルス相談を受ける岩手県立大学社会福祉学部の青木慎一郎教授は、このように話す。
「保健・福祉や商工・観光など一定の落ち着きを取り戻した部門もあるが、建設をはじめ水産、農林といった社会インフラ整備に関する担当部門では業務量が震災前の通常時より圧倒的に増えていることもあってか、職員からの相談が依然として減っていない」(青木教授)
人手や資材の不足による苦労、なかなか進まない用地買収、集団移転事業などに伴う合意形成、仮設住宅で生じる住民トラブルの収拾といった業務に強いストレスを感じる職員が少なくない。
「震災直後は組織全体で『無理をするな』と休息・休暇の取得を奨励していたが、復旧から復興の段階を迎えつつある現在は、部門や部署によってそうした配慮に差が生じているのかもしれない。ストレスが心身・行動の異常、ひいては精神疾患にもつながるという認識を共有して、互いにきめ細かく声を掛け合うことが、今だから大切と言える」。青木教授はこう指摘する。
◆不安5 復興後の建設業
『震災前よりも競争激化の兆候』
復旧・復興需要で被災地の建設業は潤っているものの、楽観視はできない。需要は数年程度。その後は仕事は激減し競争の激化が予想されるからだ。被災規模が比較的小さく、「復興後」にいち早く移行した仙台市では、震災前と同様、またはそれ以上に不毛なたたき合いが始まっている。
被災地の建設業にとって復旧・復興事業は、長い目でみると一過性の需要だ。いずれ仕事は激減する。復興後の建設業の在り方を今から考えておかなければ、少ないパイを争ってきた震災前の状態に逆戻りするのは目に見えている。
「復興後」の業界の姿を先んじて示しているのが、仙台市だ。例えば舗装分野では、震災に伴う復旧工事が2013年度までにほぼ出尽くしたと言われる。その結果、通常工事で入札価格1円単位での競争が激化。同額入札による抽選も増加し始めた。
その仙台市が13年に発注したある道路工事の入札結果で、地元業界に激震が走った。復興後の受注競争のシビアさを予感させる出来事が起こったのだ。
この入札案件で注目が集まったのは、抽選の対象となった会社の複数が、ある全国規模の建設会社X社と近い関係にあったことだ。
 
「入札に参加した数社のうち、どこが抽選に当たっても問題のX社グループが工事を担当する取り決めになっていた」。仙台市に本社のある建設会社の社長はこう憤る。問題のX社が落札可能性を高めるために行った工作とみている。
この社長によると数社とは、X社の子会社、震災後に県外から本社を移した会社、地元の土木会社などだ。どの会社が落札しても問題の会社グループが下請けで参加することになっていた。
 
「こんなやり方がまかり通れば、こうした会社とつながりのない地元企業はさらに受注機会が減って疲弊する」(先述した建設会社社長)。
『「震災以前から本社がある」を条件』
この事例のように、地元の建設業にとって競争激化の懸念要因の一つに、復旧・復興事業で急増した県外企業の存在がある。復旧が一段落した後も残り、通常の入札で参加することも少なくないようだ。
震災以降、宮城県の建設業許可業者数は増加傾向にある。復旧・復興需要を見据えて本社や営業所を県内に新たに構える会社が増えた。
 
下請け会社も含めて、全国から被災地に集まった建設会社は地元建設業にとって、適切なビジネスパートナーかどうか。それを見極めるために、信用調査会社などへの照会調査の依頼がかなり増えている。
 
自治体は一般的に、公共事業の入札で公平性とともに、地元建設業への配慮も盛り込む。しかし、入札参加資格の要件で『域内に本社がある』という制約を設けても、震災後に本社を移した会社と昔から地元に根付く会社とを区別できない。
 
あえて区別している自治体もある。多賀城市では13年度から、一般競争入札での参加資格要件に「震災以前から多賀城市内に本社、支店または営業所などを有すること」という文言を盛り込んだ。
 
同市総務部管財契約係によると、震災以降、営業実態が分からないような市外の会社参入力が増えたために資格要件で絞り込んだという。
『資金繰りに悩む被災地の会社』
復旧・復興の需要で、直近の12年度の決算ペースでは被災地の建設業はおおむね、売上高や利益は好調を保っている。だが、この傾向が長続きするとみる向きは少ない。例えば、12年度決算は資材や労務の単価高騰などの影響がまだ反映されていない。今後、その影響がじわじわと顕在化してくるとみられる。
東日本建設業保証が四半期に1度実施している被災地の景況調査によると、今までほぼ右肩上がりだった景気や受注総額の景況判断指数は、この3月で下落。収益の同指数についてはここ1年ほど減少傾向が続いている。
 
さらにこれから、被災地の建設会社を悩ます恐れがあるのは資金繰り。東日本建設業保証の調査によれば、宮城県内の建設会社は、資金の流動性を表す流動資産や当座資産が全国平均と比べてもかなり低い。自己資本比率も平均を下回っている。
「震災前は公共事業の削減が続き、内部留保が十分でなかった。復旧・復興で大量の工事を受注しているために、資金繰りが厳しくなっている」と東日本建設業保証宮城支店の西弘志次長はみる。
 
前払い金を受け取った後、発注者側の支払いが遅れていることも理由として考えられる。復旧・復興工事は設計変更が多く査定が難しいため、出来高の確定が遅れ、完成引き渡し後の精算までに、建設会社が立て替えせざるを得なくなるのだ。
被災地では発注ロットが拡大しており、10億円を超える大型工事が多数発注されている。5億円以上の工事の設計変更は、基本的に6ヵ月以上を要する議会承認案件となる。より支払いが遅れ、受注者を悩ますことになる。
『宮城県が今後の建設業振興を模索』
自治体も手をこまねいているわけではない。宮城県は、復興事業が一段落した後の建設業の生き残り策を模索。08年度から4ヵ年計画で始まり、震災後に事実上、宙に浮いていた「宮城建設産業振興プラン」を見直す形で1月末から検討し始めた。
「旧プランは、震災前の公共事業が激減するなかで考えられており、新分野参入やパートナーシップの構築が柱だった。震災を経て視点が変わることを加味して新しくプランを組み直す」と、県土木部事業管理課の相澤義光課長け説明する。プラン作成に向けた県と宮城県建設業協会との意見交換会では、災害対応を可能にした建設業の必要性を盛り込むようにという要望が上がった。
同協会の千葉嘉春専務理事は、「震災直後の緊急的な道路の啓開作業などは、協会会員で何とか対応できた。震災がもし2~3年遅かったなら、企業数はさらに減っていて対応できなかったはずだ」と説く。
◆不安6 福島の憂鬱
『原発事故が生むもう一つの人手不足』
慢性的な人手不足に悩む被災地。特に福島県では原発事故で、多くの社員が域外に避難してしまったという建設会社も多い。3年たった今も社員数は震災前の水準に戻っていない。除染作業に流れる人も多く、同県での復旧工事の人手不足は他県よりも深刻な問題だ。
「震災で多くの社員が離散した。何度も呼び集めはしたが、半年ほどたてば、避難先での生活基盤が整い、人間関係も構築されるため、戻って来ない社員も多かった」。
 
福島第一原子力発電所の事故で、避難指示区域にあった町に本社を構えていた建設会社の社長は、当時をこう振り返る。
同社はほかの地域に移転して事業を継続したが、社員は震災前の6割に減少。工事繰り越しの影響もあるが、2012年度の売上高は従来の10分の1ほどに落ち込んでしまった。
現在は、地元の避難指示解除準備区域などで発注され始めた工事を請け負って業績を立て直している。この会社は、震災直前時点で経営基盤に多少の余裕があったために大幅な受注滅でも立て直せたが、震災後に休業に追い込まれた会社も少なくない。特に下請け会社などにその傾向がある。
震災後、いわき市に事務所を移したある建設会社の社長は、「今まで懇意にしていた協力会社の社員が離散したり陣容が変わっていたりして、工事を依頼したいのにできない。そのため、新たな協力会社と仕事をしている」と話す。そうした協力会社とはまだ信頼関係が十分と言えず、工事がうまく回らないことも多々あるようだ。
『ベテラン世代が建設業から引退』
福島県の建設関係者が抱く不安は、岩手、宮城の2県でのそれと比べて、異なる点が多い。
 
福島県建設業協会の高木明義専務理事は、「原発事故による避難で全国に散らばった優秀な技術者や作業員が、避難先で採用されている。岩手や宮城と違った人手不足の問題が顕著に現れている」と説明する。高木専務も口にするように、福島で最大の不安要素は原子力事故に伴う影響だ。冒頭で紹介した「会社の移転」の背景にもつながっている。
 
そのほか、長い避難生活で働く意欲を失い、原発事故による補償金を目当てに建設業から引退するベテラン世代が増えている。他県では復旧や復興で大きな役目を担っている世代だけに、痛手であることは間違いないと言える。
『除染に流れる作業員』
他方、除染が始まって以降、それに関連した問題を囗にする人も増えている。例えば、高い日当に引かれた建設作業員が除染作業に流れてしまうことだ。職を鞍替えする若手作業員もいる。
 
「除染作業員大募集」。上に挙げた資料はいわき市内でまかれた求人広告の例だ。除染が始まって以降、広告には絶えず除染関連の募集が載っているという。
 
相馬市にある建設会社の社長は、「ただでさえ被災地の人手不足が懸念されているなか、特に除染に手を取られる福島県では、人手を確保するのがより難しい」と指摘する。
 
一方、除染現場から建設現場へ人手が流れるという逆パターンもある。バックホーの運転が要求される除染作業と一般的な土木作業が同じ能力でできると考えて、経験不足の重機オペレーターが除染現場から工事現場に鞍替えするケースだ。
 
土木工事をメーンとするいわき市の建設会社の土木部長は「せっかく人手を確保できたと思ったら、除染経験のある“にわか”の世話役と数名の作業員だった。作業員は全くの“素人”で、非常に効率が悪かったという印象が強い」と憤る。
 
図に示したように、除染の実施計画を作成している市町村は14年1月時点で36自治体に上る。それだけに除染が及ぼす影響力は大きい。
『除染ばかりでモチベーション下がる』
除染に特化して仕事を受注している会社も、不安は尽きない。
住宅の除染に携わる建設会社の工事係長は「今まで土木工事をメーンにやっていたのが、原発事故を機に、除染作業に比重を置かざるを得なくなった。庭の汚染土を掘り起こしたり住宅を高圧洗浄したりの繰り返しで、モチベーションは下がる一方だ」と嘆く。  
だが、除染を終わらせなければ復旧工事の段階に進めない地域が多く、泣く泣く除染をしているのが現状のようだ。
福島県は、岩手や宮城と比べて復興が2年遅れていると言われている。県の施策では、まずは除染中心で安全一安心を確保することが先決で、その次が復興だ。13年12月末時点で市町村の除染進捗率は、道路が3割、住宅は4割と先は長い。国直轄の除染も、まだ終わりは見えていない。
  
原発事故と除染による不安を解消して、ようやくほかの県が直面する復興の課題にたどり着く点で、福島県内の関係者が直面するハードルはより高い。 
『「業界の声」県境では宮城県への人手流出も』
「被災3県」とひとくくりに言われることが多いが、福島県は原発災害の影響を直接的に受けており、復興絡みの問題点は岩手や宮城と様相が異なる。
 
避難指示区域の指定を受けた場所にあった元請け会社は移転し、小規模な下請け会社は社員が離散してしまった。元請け会社は他の地域に仮事務所を構えても、下請け会社がいないと機能しない。そのため、まずは下請け会社の社員を呼び戻すことから始めなければならなかった。
  
避難指示が解除されて、住民が帰還するために復旧工事などが発注され始めた地域も出てきた。だが、まちの将来ビジョンが描かれていないため、避難した地元の建設会社は、戻るべきかどうか判断に困っているようだ。
  
最近は、技能者の賃金格差が問題視されている。型枠工の労務単価は宮城県が福島県よりも8000円近く高い。
 
県境の技能者は、仙台が通勤・通学圏なので、元々宮城県に出る傾向にあったが、労務単価に差が開いて流出がより顕著になっている。危険手当てが付く除染にも技能者が流れる傾向もあり、人手不足の問題は深刻だ。(談)

 

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復興が抱える不安


2011年3月11日(金)14時46分、東日本大震災が発生しました。その時から、3年以上の月日が経とうとしています。
テレビや雑誌では被災地住民の方のその後や福島原発の処理、放射能汚染の問題が頻繁に取り上げられていますが、再発防止も含めた復興の進捗についてフォーカスされたニュースは少ない気がします。
そこで日経コンストラクション2014年3月10日号に、現地の復興に向けた現状を詳しく記したレポートが掲載されていましたので、ご紹介したいと思います。
国、宮城県、紀仙沼市、住民による話し合い、合意、そして復興に向けた工事というプロセスの中で、どんな問題が起こっているのか。
地震大国日本の今後の対策に関する貴重な事例として、非常に参考になると思います。
復興が抱える不安
防潮堤設備や鉄道復旧など見え始めた官民のズレ
震災以降、行政職員や建設関係者、住民らは、目の前の課題に一丸となって立ち向かうことで精一杯だった。丸3年がたち、次第に現状を客観視できるようになり、立場によって異なる不安を口にするケースが増えてきた。人手や資材の不足などは以前から声高に叫ばれており解決策も取られ始めているが、まだまだ不安要素は多い。今後の顕在化が予想できる問題も含めて、復興の現場にまん延する「不安」を追った。
◆巨大防潮堤に揺れる/命を守る壁の妥協点
震災から3年がたち、被災地の沿岸部で防潮堤の建物が進んでいる。写真は宮城県気仙沼市の野々下海岸だ。防潮堤の高さは海抜9.8m。津波から命を守ることを引き換えに、海が見える景色は失われつつある。
防潮堤の役目は、数十年から数百年に1度程度発生するレベル(L1)の津波を背後地にあふれさせないこと。東日本大震災のような最大クラスのレベル2(L2)の津波に対しては、防潮堤が一定の減災効果を発揮するものの、背後地への多少の浸水は許容することになる。
防潮堤が高くなるのは2011年の時点である程度、判明していた。津波を体験した住民は、「高さ」の受け入れにそれほど異論がなかったという。しかし、日を追うごとに震災の記憶は薄れ、潮目が変わりつつある。
宮城県内の防潮堤建設の合意形成率は、この1月末時点で81%とそれほど低くない。だが、管理区分ごとにみると差が生じている。同県の防潮堤は農地海岸、漁港海岸、建設海岸、港湾海岸、治山と五つの管理区分に分かれる。漁港海岸については合意状況が45%と低い。
「漁港は数が多く、全ての集落で合意形成に向けた説明会を開催できているわけではない。背後の土地利用計画が具体的に確定していないこともあり、合意形成率はほかと比べて低い」と、宮城県土木部河川課の門脇雅之課長は話す。
◆合意形成の最前線、「内湾地区」
漁港海岸でなかなか合意に至らなかったケースが、気仙沼市の気仙沼漁港にある内湾地区だ。防潮堤をめぐり、高さや位置、形状について問答を繰り返して、この2月にようやく一定の決着を迎えた(41ページ参照)。当初計画で、6.2mだった防潮堤嵩は、L1津波高を防ぐという水準を維持して4.1mまで下げられた。
村井嘉浩宮城県知事が何度も関係者の集まりに足を運ぶほど、防潮堤の建設に必要な合意形成のまさに“最前線”だった。
気仙沼漁港は、全国に13港しかない特定第3種漁港に指定されている。水揚げ量が多く、遠洋漁業の基地港としても知られる。同港の内湾地区は、飲食業や観光業などで賑わい、気仙沼市の“顔”と言われる。防潮堤は元々なく、海は生活圏の一部だった。それだけに、防潮堤の高さをめぐる議論は混迷を極めた。
気仙沼商工会議所の菅原昭彦会頭は、「復興初期に行政に不信感を募らせたことが、後々、合意形成が長引く要因の一つとなった」と話す。
菅原会頭は、合意形成で住民側の中心的な役割を果たした一人でもある。
◆当時の印象は「乱暴な説明」
菅原会頭が内湾地区の防潮堤に足を踏み入れるきっかけとなったのが、12年夏から始まった県による防潮堤建設の説明会だった。菅原会頭は、自らの地区以外の説明会にも参加。そこで感じた印象を「乱暴な説明だった」と表現する。
「防潮堤の管理区分ごとに、漁港や河川の話を次々に聞かされた。話に出てくる専門用語は分からない。さらには『防潮堤を造る場所と造り方は変える余地はあるが、高さは変えない』と言われた」(菅原会頭)。
菅原会頭をはじめとする住民有志は、「仮に防潮堤に反対するとしても、理解して納得したうえで判断したい」という思いから、8月に「防潮堤を勉強する会」を設立。専門家などを招いた勉強会を2ヵ月間で十数回の頻度で開いて知識を蓄えた。
住民らがこれだけ熱意を持って情報を収集するのは、元の町に戻りたいという意志が比較的、固かったからだ。同市建設部都市計画課の村上博課長は、「土地所有者に意向調査を3度ほど実施したが、震災から時間がたっても、戻って住み続けたいという割合が下がる傾向はなかった」と話す。
しかし、内湾地区を守る防潮堤の考えについては、一枚岩ではなかった。魚町付近の住民から防潮堤に反対する声が上がる一方、日頃から海が見えない南町付近の住民からは、防潮堤賛成の声が上がった。
少し内陸に位置する気仙沼市役所付近の住民からは、「防潮堤を低くすることで、自分たちの居住区まで災害危険区域の指定範囲が広がるのは困る」という苦情が殺到。
同市の条例では原則として、L2津波で少しでも浸水する範囲については、建築基準法に基づく災害危険区域に指定する。新築や増築などの制限が、掛かってしまうわけだ。
◆知事と市長と住民が議論を交わす
合意形成の歯車がかみ合い始めたのは、菅原会頭が13年7月に「内湾地区復興まちづくり協議会」の会長に就任してからだった。翌月には村井県知事が「防潮堤を勉強する会」の意見交換会に参加。翌9月も知事は足を運んで議論に加わる。
丁寧に話を進めるうちに、防潮堤に反対する住民が、腰高や胸高までなら許容できると態度を軟化。「海抜からの防潮堤高だけが焦点になっていたため、防潮堤の見かけの高さなどに対する意見を引き出せなくなっていた」と菅原会長は言う。
このときに、宮城県と気仙沼市、住民の3者は歩み寄ってまちづくりを進めることに合意する。「防潮堤高の決定に時間を掛けて、まちづくりをこれ以上遅らせられない」という共通の思いが根底にあった。
その後、13年12月に出された住民側の提案に対して、宮城県は当初は拒否していたフラップゲートの採用を認める代わりに、水質汚濁や船舶交通への支障を理由に湾口防波堤を却下。一方、市には背後地のさらなるかさ上げの了承を、まちづくり協議会には防潮堤高3.8mではなく4.1mの高さでの許容を提案した。
「それぞれが互いに譲歩しあった」と、県農林水産部漁港復興推進室の阿部勝美技術副参事は話す。そしてこの2月15日の全体説明会を経て防潮堤問單は決着を迎えた。結果的に、宮城県はL1の津波高を第1線堤である防潮堤で守る当初の目的は果たせた。住民も見かけの防潮堤高を胸高程度の1.3mにできた。
◆防潮堤に対する歴史が異なる
宮城県と比べて、防潮堤の建設が先行して進むのが岩手県だ。震災前の防潮堤に対しておおむね2倍以上の高さに復旧・新設するケースが多い宮城県に対して、10mを超えるような防潮堤が元々あった岩手県では、景色が激変するほどの変更はなかった。高い防潮堤と共存してきた期間が長い点も、同県が防潮堤の整備を進めやすい要因の一つだ。
そのような背景のある岩手県だが、ここに来て防潮堤に異論を唱える動きが生じ始めている。その例が、大槌町町方地区だ。同地区には、既往最大津波高をもとに高さ6.4mの防潮堤があった。震災後、14.5mの防潮堤が計画されている。
 
同町では、町長を含め幹部クラスの多くが津波で亡くなった。その後、町長選挙を実施するなどで、復興のスタートダッシュは遅れたが、11年10月と11月に防潮堤に関する説明会を集中的に開き、同年12月末に復興基本計画を作成した。
 
説明会では、津波被害を防ぐために防潮堤が以前より高くなることへの異論は、ほとんど出なかったという。大槌町の那須智復興局長は「元の防潮堤がそれなりに高く、海が見えるような生活圏でなかったことも影響した」とみている。
◆巨大防潮堤の維持管理に疑問
「住民側は表明していなかっただけで、潜在的に不満を抱いている人は多い」。ごう話すのは。同町で自営業を営む阿部敬-一氏だ。阿部氏は防潮堤の高さや合意形成の在り方に対して積極的に意思表明していくために、13年10月に「住民まちづくり運営委員会」を立ち上げた。
 
「町方地区だけで防潮堤と水門の建設費用は350億円と言われる。さらに今後、巨大な構造物に見合った維持管理が必要になる。そういった費用の話などは議論されていない」と阿部氏は指摘する。
 
しかし、計画をこれから見直すのは苦難が多い。13年の暮れに開かれた住民説明会で、阿部氏が防潮堤についての質問をすると、「話を蒸し返すな」と他の住民から非難される一幕もあったという。
「反対するだけでは復興を遅らせることになる。そのため、段階的整備で逆に早く住めるような代案を提示したい」と、阿部氏は意気込む。防潮堤の高さを下げつつ、背後地に盛り土をするなどして津波に対応する案を専門家とともに検討している。
◆防潮堤が先かまちづくりが先か
紹介した二つの事例のように防潮堤をめぐって議論が紛糾したり、再考されたりするのはなぜか―。
震災後、国の中央防災会議が津波に対する防災の方針を早急に決め、さらに被災地はそれを適用して復旧を進めた。結果、「高さが大きく変わる防潮堤の議論を十分にせず、合意形成を進めて復旧せざるを得なかったことが、後に混迷を来す背景にある」とみる自治体職員は多い。
他方、住民と行政の視点のギャップも大きな要因だろう。
 
まちづくりを進めたい住民と、防潮堤整備を進めたい行政。住民にしてみれば、防潮堤はまちづくりの要素の一つに過ぎず、目線は絶えず「自分たちの町をどうすべきか」に向いている。元から視点が違うため、同じ土俵で話し合えず、考え方に大きな“ズレ”が生じるのだ。
 
気仙沼商工会議所の菅原会頭は、「防潮堤の高さや区画整理、災害危険区域など、“地べた”のことしか議論せず、町の将来像に対する議論がおろそかになった」と悔やむ。

 

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悪夢の設計トラブル


どんな仕事も、設計業務は重要です。
グランドデザインが誤っていたら、どんなに一生懸命やっても間違った方向にいってしまいます。
今回は、建設業界における設計トラブルに関するレポート記事をご紹介したいと思います。行政側からの賠償請求も起こりかねない“設計トラブル”。
ポイントは、「条件明示は、発注者の責任」、「成果品の品質は、受注者の責任」です。
悪夢の設計トラブル
「経営を左右するリスク」の回避策を探る
大阪府と日本シビックコンサルタントが「設計ミス」を巡って鋭く対立している。これまでも、受注者の役割・責任分担の曖昧さが、数えきれないほどのトラブルを招いてきた。
それでも、発注者が受注者に億単位の損害賠償を請求し、受注者が真っ向から抗戦するケースが公になるのは極めて珍しい。
悪夢のような設計トラブルを「対岸の火事」と捉えるのではなく、改めて受発注者の責任分担やミス防止に向けた対策を議論し、経営を揺るがすリスクに向き合わなければならない。
◆「設計ミス」に億単位の請求
その設計トラブルが表面化したのは、2013年11月28日ころのことだった。
大阪府の松井一郎知事が会見で、「コンサルの設計ミスで阪神高速大和川線のトンネル工事に、41億の追加費用が発生した。責任を追及し、「大きな部分」については求償していく」宣言。億単位の賠償請求をほのめかしたのだ。
「コンサル」とは、日本シビックコンサルタントを指す。
この工事は、シード機の発進・到達基地となる深さ40メートル超のたて坑2基をニューマチックケーソン工法で沈設し、向かい合うたて坑間の230メートルを深さ40メートルまで掘削するというものだ。
側面の地盤を削り取られた2基にたて坑は支えを失い、背面の土圧と水圧の押されて内側に滑動、もしくは転倒する恐れもあった。
府は、ケーソンたて坑の設計を担った日本シビックコンサルタントが外力の設定などを誤る、「設計ミス」を犯したために、工事中の安定性が確保されず、このような事態を招きかねなかったと非難。工事が中断し、安全性を確保するために多額の追加工事が生じたと主張。
◆日本シビックは大阪府に反論
年間売上高18億円(13年3月期)の日本シビックコンサルタントは、賠償請求まではのめかされて混乱に陥る。翌日の新聞には、「設計ミス」の見出しとともに社名が躍った。シールドトンネル設計のパイオニアとしての信用は揺らいだ。
同社の松沢裕範取締役は、「たて坑の安定性は、他社が担当する開削区間の設計段階か、施工段階で検討することになっていた」と主張する。
しかし、設計に瑕疵はないと考える同社にとって、事態は最悪の状況へ加速する。弁明の機会が与えられないまま、府は同社が「過失により成果品を粗雑にした」として、13年12月19日から6ヵ月間の入札参加停止措置を講じた。同社は取り消しを求めたが、府はこれを却下した。
 
業を煮やした同社は14年1月15日、入札参加停止の取り消しを求めて大阪地裁に仮処分を申し立てた。そして、「あらゆる法的手段をもって厳正に対処していく」などと綴った資料をホームページに掲載。府との対決姿勢を鮮明するに至った。
◆舞台はランプと合流する開削区間
 
設計トラブルの舞台は、府の都市整備部富田林土木事務所が整備を進める阪神高速大和川線の「シールドトンネル区間」と、常磐東ランプが本線と合流する「開削区間」だ。
シールドトンネル区間は、冒頭で触れたたて坑2基を建設し、東西に上下線2本の本線を構築する。開削区間では、2基のたて坑に挟まれた延長約230mを深さ40mまで掘削して鉄筋コンクリート製の道路躯体を構築し、埋め戻す手はずだった。
日本シビックコンサルタントは06年12月、本線シールドトンネルやたて坑などの詳細設計を約2800万円で受注した。開削区間の詳細設計は、日建技術コンサルタント(大阪市)が約1950万円で受注。たて坑の建設と開削区間の山留め・掘削工事は、吉田組JVが約166億円で、開削区間の躯体工事は清水建設JVが約76億円で請け負った。
大阪府が主張する日本シビックコンサルタントの「設計ミス」が発覚した経緯は、次の通りだ。
吉田組JVが掘削工事を進める過程で、道路の躯体工事を受注した清水建設JVから、たて坑の安定性に対して疑問が投げかけられた。府が有識者に見解を求めると、このまま掘削を続ければたて坑の安定性が確保されない、との回答だった。
府は12年8月に進行中の掘削工事を休止。地下水位の低下や、2基のたて坑を支える床版を30mにわたって構築するといった安定化対策を決定した。古田組JVの工事を打ち切り、清水建設JVに残りの掘削と追加工事を任せることにした。
府は議会での答弁で、過去にも2回、日本シビックコンサルタントにたて坑の安定度について確認したことがあったが、同社は「問題ない」と回答したと説明している。
真っ向から食い違う両者の言い分大阪府は詳細設計業務の特記仕様書を示し、日本シビックコンサルタントが契約上の義務を果たさなかったと主張する。仕様書には業務遂行上の留意点として、「開削区間が隣接しているので、この区間との調整を十分に行い業務を進めること」などと記している。これをもとに、「開削区間を考慮してたて坑を安定した構造物として設計することが、契約に基づく同社の義務」とした。
また、同社が成果品として納めた検討書の中で、「たて坑の開削区間接合部側壁部は掘削され、土圧力i期待できなくなる」と記し、ケーソンの滑動などに関する検討結果を示したうえで、「安全であることを確認した」と記述していることも、「設計ミス」の根拠に挙げる。府の都市整備部事業管理室技術管理課の片木詳三統括参事は、「同社が開削区間を考慮した設計が必要だと認識していた証拠だ」と指摘する。
府の主張に、日本シビックコンサルタントは真っ向から反論する。
同社の松沢取締役は、「開削区間との接合方法に関する条件が未確定の状況で、工事発注に図面が必要だと急かされた。そこで、府との打ち合わせで『開削区間の工事がたて坑の安定性に与える影響については考慮しない』と説明し、了承を得て設計した」と言う。「受注者間で協議して進めろというが、発注者を抜きに話を進めるなどあり得ない。府が、各受注者の見解を調整できなかったことが問題だ」(松沢取締役)。
さらに府が「設計ミス」の根拠とした検討書について、同社の木戸義和技師長は「工法を選定するために実施した当たり計算の結果だ」と説明する。つまり、ニューマチックケーソン工法が成立するかどうかをたて坑の本格的な設計の前に試算した結果に過ぎない、というわけだ。木戸技師長は「大阪府は、自分たちに都合の良い箇所を抜き出して、我々に非があるというストーリーを作り出している」と憤る。
「府と当社、開削区間の設計者、施工者による協議で安定化対策の必要性について議論し、倒れないように『突っ張り』をしよう、といった対策を決めていた。議事録もある。なぜ、何ら対策を講じずに掘削したのか理解できない」(木戸技師長)。
◆大阪府は2月に数億円を請求
大阪地裁は3月31日、入札参加停止の取り消しを求める日本シビックコンサルタントの申し立てを却下した。同社は、4月11日に大阪高裁に抗告。徹底抗戦の構えを崩さない。「黙った瞬間にミスを認めたと思われる。高裁で何らかの疎明が認められれば、本訴に踏み切ることも考える」(同社の松沢取締役)。
トラブルは収束するどころか、本格的な法廷闘争に発展する公算が高まってきた。訴訟を検討しているのは、大阪府も同じだ。実は、府は2月28日に工事の遅延や追加工事に掛かる費用を、日本シビックコンサルタントに請求済み。両者は金額を明かさないが、数億円に上る模様だ。
大阪府の片木統括参事は「請求に応じてくれれば、裁判をせずに済むが」と話す。納付期限は4月末だが、日本シビックコンサルタントの松沢取締役は「とても承服できない」とし、4月中旬時点で請求に応じない方針を示す。府が損害賠償訴訟を起こす場合、5月20日に開会する議会で承認を得てからになる。
◆業務委託が抱える課題を内包
大和川線を舞台に、現在進行形で進む設計トラブル。当事者以外も、他人事として済ませることはできない。従来から指摘されてきた受発注者が抱える課題を内包しているからだ。これまで見てきたように、設計条件などを巡る双方の主張の食い違いは、受発注者の責任分担の曖昧さを改めて浮き彫りにしている。
「知事は設計にミスがあったから求償していくとコメントしているが、初歩的なミスを見抜けなかった大阪府にも瑕疵があるのではないか」。13年12月の大阪府議会では、発注者としての府の技術力不足や体制の不備を問う質問が、繰り返された。
ベテランの退職や職員数の削減に伴う発注者の技術力低下は、約1800人の土木職員を抱える大阪府でも例外ではない。府は、設計成果品については日本シビックコンサルタントに責任があると強調しつつ、若手の技術力向上や第三者の設計者によるクロスチェックの導入などを例示し、再発防止策をまとめる考えを示した。プロジェクトチームを設けて、2月から検討を始めている。
建設コンサルタント会社は、「設計ミス」を理由に途方もない損害賠償を請求される事態が現実になったことを、自覚しなければならないだろう。日本シビックコンサルタントの松沢取締役は「契約金額に比して、あまりにもリスクが大きい。仕事ができなくなる」と指摘する。
建設コンサルタンツ協会など4協会の建設コンサルタント賠償責任保険を取り扱うアールアンドディセキュリティがまとめた保険金の支払い状況をみると、1件当たりの平均支払い額は増加傾向にあり、12年には3000万円を突破している。目の前の業務が企業の存続を揺るがす多大なリスクをはらんでいることを改めて認識し、設計トラブルの防止に力を入れなければならない。
次ページからは、受発注者の役割と責任の分担に根差した課題の現状と対応策について、国や受発注者の取り組みを探っていく。
◆じわり進む「責任」の仕分け
「責任が曖昧なことが、品質低下の一因」。国土交通省はこうした考えで、設計ミスの防止や成果品の品質向上に対策を講じてきた。条件明示は発注者の責任で、成果品の品質は受注者の責任で。受発注者の責任の「仕分け」を徐々に進めている。
発注者が、設計条件をなかなか決めてくれない。しつこく催促すると、「設計者で決めてくれ」と言われたので、打ち合わせの際に条件を提示し、合意して業務を進めたはずだった。ところが、設計成果品の納品後に、提示した条件に関する不具合が発覚。発注者は「条件を決めたのはそちらだ」の一点張りで、責任を押し付けてくる。反論しようにも、明確な証拠が残っていない―。
もし、このような設計トラブルが起こったとして、設計者側か責任の多くを負わされる可能性が高いことは、想像に難くない。
◆受注者も「条件明示シート」を活用
「結局のところ、設計ミスを巡ってもめるケースでは、誰が条件を提示し、いつ、何を根拠に決まったかが明確でない場合が非常に多い」。オリエンタルコンサルタンツの青水滋取締役はため息をつく。「的確に設計を進め、成果品の品質を高めるためにも、条件を確認することは極めて重要だ」(青木取締役)。
そこで、同社が「設計ミスの防止」と「自衛」の両面から活用しているのが、国土交通省が作成した「条件明示チェックシート」。本来は、発注者側か設計条件や関係機関との協議の進捗状況などを記載し、受注者に提示するためのツールだ。
発注者による条件明示が不明確だったり、遅れたりすると、設計業務の履行期間を圧迫し、手戻りが生じることが多く、ミスの温床となりがちだ。そこで、国交省が2012年度から導入を進めてきた。
 
このシートは、道路詳細設計、橋梁詳細設計、樋門・樋管詳細設計、排水機場詳細設計、築堤護岸詳細設計、山岳トンネル詳細設計、共同溝詳細設計の7工種それぞれにある。
国交省北陸地方整備局が砂防詳細設計版を新たに作成しており、14年度から試行する予定だ。
 
オリエンタルコンサルタンツではこのシートを活用し、「いつ、どのような条件を発注者が示したか」を後から追跡できるようにしている。また、抜け落ちている条件があれば発注者に申し出て、詰めていく。同社は、受発注者が互いに活用することで、条件の漏れなどによる手戻りが大幅に減ると期待している。
◆発注者を律する対策に歓迎の声
このような対策は、「調査・設計等分野における品質確保に関する懇談会」(座長:小澤一雅・東京大学教授)における議論に基づいて、国交省が数年前から進めてきた。
条件明示チェックシートと同じく設計条件の明確化や共有を図るために、11年度から導入したのが受発注者による「合同現地踏査」だ。この仕組みにも、受注者からは好意的な声が上がる。
「例えば、山奥の橋梁を設計する際に、ザイルで崖を降りてまで詳細に現地を調査するのは現実的には不可能だ。それなのに、工事が始まって崖下で木を伐採すると、設計条件と地形が異なっていると分かり、発注者から『設計ミスだ』と言われて無償で修正を命じられることもある。できること、できないことを事前に共有できれば、そのような理不尽な指示はなくなる」(ある建設コンサルタント会社の幹部)。
今年2月28日の懇談会で、国交省は設計不具合の最近の発生状況を示した。同省が発注した設計業務を対象に着工前に実施する3者会議(発注者と設計者、施工者による協議の場)で指摘された設計不具合をまとめたものだ。
12年全月~12月と13年4月~12月に3者会議を実施した業務を対象にそれぞれの期間に発生した不具合の状況を調べたところ、以前から多かった「現場条件の設定ミス」に起因する不具合の割合は、「構造」と「施工」のいずれに関する事項でも減少した。国交省は条件明示の徹底や合同現地踏査の実施で、さらにミスを減らしていく考えだ。
 
設計条件にまつわるトラブルを避けるために、国だけでなく高速道路会社も手を打ち始めている。
西日本高速道路会社が13年11月に示した、「調査等請負契約における設計変更ガイドライン」は一例だ。条件提示の遅れなどに伴う設計変更について、変更条件や手続きの流れなどのルールを定めた。受注者が正当な理由で変更を申し出ても、「検討は契約の範囲内だ」などと、発注者が却下するケースがあったからだ。
中日本高速道路会社でも建設コンサルタンツ協会と意見を交換しながら、14年度中をめどに同様のガイドラインを作成する。同社技術・建設本部技術管理部技術管理チームの野村謙ニチームリーダーは「何かできて、何かできないかを示す。業務の進め方についても全般的に盛り込む。いつまでに誰が何をやるかを記録に残し、そのために工程をどう管理するか。社内の良い事例も取り入れたい」と話す。
◆「赤黄チェック」は実質義務化へ
現場条件の設定ミスによる不具合の割合が減少する一方で、単純ミスに分類される「図面作成ミス」の割合は、12年の42.3%から13年は54.5%に、12.2ポイントも上昇した。
国交省は単純ミスを減らすために、照査を徹底させる方針だ。あくまでも「照査は受注者の責任で実施する」と前置きしたうえで、実効性を高める仕組みを導入する。具体的には、13年度下期から全国約60の詳細設計業務を対象に「赤黄チェック」を試行している。
赤黄チェックとは、照査技術者が設計図面と数量計算害を照らし合わせて見つけた不整合などを赤色のペンでチェックし、担当者が黄色で消して赤色で訂正する、という伝統的な照査方法だ。
建設コンサルタンツ協会品質向上専門委員会で委員長を務める八千代エンジニヤリング内部統制室品質環境マネジメント部の宇佐美正好参与は、「昔は図面が青焼きだったので、目立つように黄色を使っていた」と説明する。問題がない箇所を黄色でチェックして赤色で修正するなど、会社によってやり方は異なる。
国交省も、細かな手法までは指定していない。成果品の納入時に照査の「痕跡」が分かる資料を提示できればいいとの考えだ。提示を求める分、照査費用は上乗せを認める。工種によって異なるが、道路の詳細設計では現状から50%割り増す。
試行では工種を分散させて結果を分析し、効果が高い場合は本格実施する。例えば、関東地方整備局では道路の詳細設計や樋門の詳細設計など4件を、近畿地方整備局では橋梁上部構造の詳細設計や河川護岸の詳細設計など5件を対象としている。
成果品の「責任」には警戒の声も 発注者が自ら設計する時代から、作業や計算の一部を外注する時代を経て、建設コンサルタントが発注者の指示の下、自らの裁量で設計する時代となって久しい。
長年にわたって曖昧だった受発注者の責任分担が、以前に比べて整理されてきたことに受注者はおおむね歓迎ムードだ。しかし、国交省が示すメニューには警戒の声も上がる。
例えば、「発注者による検査範囲の明確化」。ある建設コンサルタント会社の品質管理担当者は、次のように懸念する。
「要するに『発注者は成果品を検査するけれど、会計法に基づく検査範囲を超える部分は責任を負わない』という内容だ。品質確保は受注者の責任で実施するというが、その『責任』の範囲がよく分からない。今のところ、全て受注者側に押し付けられているように感じる」。
加えて注視すべきなのが、社外の第三者による照査制度。国交省は今後、本格的に検討を始める方針を示している。以前から俎上に上っていたが、ミスが発生した際の責任分担などが難しく、事実上、棚上げになってきた。
一方、東日本大震災の被災地で採用されたコンストラクションマネジメント(CM)方式のように発注者の技術力や人員の不足を背景として、建設コンサルタントに役割や責任を委任するケースも増えそうだ。
受注者は、徐々に進む責任の「仕分け」の行方と、新たな仕組みへの対応に注意を払う必要がある。
国が推進するミス回避チェック方式を活用しながら、設計トラブルによる莫大な事後請求を民間企業はどう回避するか。
そうはいっても、売上が欲しいのも事実です。
法的見地も重要ですが、日頃からの密なコミュニケーションと信頼関係の構築が、それ以上に重要です。

 

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はつり工不足を、解析予測で解決!


現場のハンディを、どう克服するか。
今回の事例は、「コンクリート取り壊し工事におけるはつり工と敷き鉄板の不足」です。
20人のはつり工が必要にも関わらず、確保できたのは6人。
三次元衝撃解析によるシミュレーションと現場での実験で効率化を図った今回のケースは、事前予測も重要な要素であることを教えてくれます。
解析で機械施工の実現性を実証
橋梁地覆コンクリート取り壊し(北海道新十津川町)ほか
・はつり工不足を機械施工で補うため、その実現性をシュミレーションと実験で確認
・運搬時に現場に敷く鉄板の品不足を見越して、廃材と木材チップを使った代替工法を開発
北海道では、建設作業員の不足が新設工事だけでなく補修工事の進捗にも影響を及ぼしている。 2013年度は道開発局や札幌市などで、橋の高欄を取り替える補修工事の発注が急増した。
砂子組(北海道奈井江町)が13年7月から現場に入った滝新橋補修外一連工事はその一つ。同現場では、はつり工の人手不足に直面した。
主な工事は地覆コンクリートの取り壊しだ。人カブレーカーで、橋長754mにわたって両側の地覆コンクリートをはつる。発注者は、4組の作業グループで工事を進める工程を引いていた。1班当たり5人程度と考えると合計20人のはつり工が必要になる。
しかし、砂手組が受注後に確保できたはつり工の人数はわずか6人。工事の発注時期が比較的遅かったため、既に主だったはつり工はほかの現場と契約を結んでいたのだ。現場代理人を務めた同社士木部土木課の平島博樹工事長は、「人が足りないと想定していたので、受注時から改善策を模索していた」と振り返る。
同社が発注者に提案したのが、油圧ブレーカーによる取り壊しの方法だ。同社の技術顧問をしている北海学園東北アジア研究交流センターの佐藤昌志特別研究員は、「労働集約型の仕事が多く、以前から機械を使った作業に改めたいと考えていた」と明かす。
◆足場の設置中に現場で実験
油圧ブレーカーを使用した取り壊しは、特殊な工法ではない。ただし、発注者の多くは補修工事での採用になかなか踏み切れない。取り壊し範囲外の橋梁への悪影響を懸念するからだ。
「油圧ブレーカーの衝撃で、取り壊し範囲外の鉄筋の付着力が低下したり、振動によって微細なクラックが入ったりするリスクがあった」と平島工事長は言う。微細なクラックに水が浸入すれば、凍結融解などで劣化を招く。
そこで砂子組は、取り壊し範囲外の橋梁の健全匪を確かめるために、三次元衝撃解析によるシミュレーションと現場実験を実施した。
シミュレーションの結果、コンクリートにはチゼルの打撃点から直径10cm程度の範囲しかはつりの影響が及ばないことや、既設の鉄筋には最大でも2N/mm2ほどしか引張力が掛からないことが判明した。
現場実験では、ひずみゲージを付けてひずみを測定。鉄筋の降伏応力に相当する1700μのひずみ上限に対して、測定値はわずか10~20μ。コンクリートのひび割れを招くひずみは上限60μに対して、10μ以下に収まった。人カブレーカーの取り壊しによる影響度も測定したところ、油圧ブレーカーとそれほど違いがなかった。
受注後にすぐにシミュレーションに取り掛かり、吊り足場などの設置中に現場実験を済ませた。人手不足を想定し、早期に対策を練ったかいもあって、取り壊し工事の準備が整ってから数日で、油圧ブレーカーによる施工承諾が下りた。
◆作業サイクル改善で25日間短縮
そもそも人カブレーカーによる取り壊しには、振動障害の制約がつきものだ。そのため、1日当たり平均して約2時間しか作業ができない。作業の効率が悪いうえに作業員への負担は大きい。高欄の取り替え工事が、割に合わないと言われるゆえんだ。
一方、油圧ブレーカーによる取り壊しは、人カブレーカーのような制約がない。作業効率は向上し、1日当たりの取り壊し量は大幅に増えた。滝新橋の場合、6人の作業員による取り壊し延長は、人カブレーカーでは1日当たり20mだったが、油圧ブレーカーの使用で同35m延びた。橋の両側の地覆約1400m分の取り壊しで、最終的に延べ155人日の削減、25日間の工期短縮を実現した。
解析処理や油圧ブレーカーの燃料などの費用は掛かったものの、工期短縮に伴う経費や人件費の削減で、当初の実行予算よりも利益率を多少改善できた。
「人がいないからといって工事ができないと諦めない。何か違った形で工事ができないかを考えることが重要だ」と平島工事長は強調する。
◆万能ではない敷き鉄板
砂子組は、工事の発注増で全国的に不足が懸念されている敷き鉄板へも強い関心を持っている。
軟弱な表層をダンプトラックが走る場合や地耐力が足りない場所に重機を据え付ける場合などで、敷き鉄板を地盤の養生に使うケースは多い。鉄板がなくなれば困る現場も出てくる可能性がある。
そこで、砂子組は鉄板の代用品を検討し始めた。きっかけとなったのが、13年6月から始まった夕張シューパロダム熊の沢林遣外工事だ。ダムの近くの現場は泥岩が多い。水を含むと泥岩はヘドロ状になりやすい。林道工事のように未開地で施工する場合、地盤の悪い運搬路をいかに養生するかで作業効率が変わってくる。
「敷き鉄板がいずれ手配できなくなったとき、現場に雨が降ればどう対処するのかを今のうちから考えろ」。技術顧問の佐藤特別研究員は、同工事で現場代理人を務める土木部土水課の山元康弘課長代理に、この林道工事では地盤の状況が悪い現場が多い。敷き鉄板を設置してもヘドロの上に鉄板が浮き上がり、トラックの急ブレーキなどで鉄板自体が滑ることもある山元課長代理が手にしているのが、運送会社が荷役台として使っていた1.1m四方のパレットの廃材ように命じた。敷き鉄板の代替品を検討するように、たき付けたのだ。
実は佐藤特別研究員は、敷き鉄板が万能ではないと感じていた。雨が降って地盤が粘土状になれば鉄板が滑るし、凍結すればタイヤが滑る。さらに鉄板は重量物なので設置、撤去時に事故が起こりやすい。これを機に、本当に万能な養生工法を生み出したいという思いがあった。
◆廃材パレットと木材チップを使用
 
山元課長代理は佐藤特別研究員や土木部長らと共同で、ダンプトラックなどの重機の走行匪を向上させることを目標に敷き鉄板の代替品の開発に乗り出す。
そして14年に生み出しだのが、廃材と木村チップを利用した「ハマラーズ工法」だ。
同社は、運送会社などが荷物を載せる荷役台として使うパレットの廃材に注目した。廃棄されているパレットであれば費用が要らない。
ハマラーズエ法は、タイヤが走る部位にパレットを並べて、上下を金網で挟み込む。パレットには荷重の分散、金網にはパレットの動きを拘束しつつ連結させる膜の効果を、それぞれ期待できる。パレットと金網の上をダンプトラックでならした後心吸水と緩衝の効果を持つ木材チップをまけば完成だ。
ハマラーズエ法開発の発端となった熊の沢林遣外工事に、同工法を採用するには至らなかったが、14年2月には千歳市内の現場で試験施工を実施。その結果、ダンプトラックの運転手からは「走行しても違和感はなかった」、「急発進してもタイヤが滑る感覚はなかった」という意見が上がった運転手からは好感触を得ている。
敷き鉄板を60日間借りた場合のりース料は1㎡当たり約1900円。ハマラーズエ法は金網を転用すれば、材工其の費用が1㎡当たり約1500円で済む。林道工事で発生する木材を現場で破砕してチップに加工すれば、さらにコストは下がる。パレットの代わりに麻袋を検討 一方、試験施工ではバックホーが通過した際に、クローラーが金網を巻き込むなどの課題も見つかった。金網の代わりに、防じん対策として現場を囲う高強度のポリプロピレン製のネットを代用するなど、改良案を用意している。
 
さらに、リサイクル率の向上を視野に入れ、さらなる進化版を考案中だ。パレットの代わりに木材チップを入れた麻袋を使う。麻袋は破損しにくいので、リサイクルに向いているからだ。
ただし、麻袋はパレットに比べて、荷重を分散する効果が劣る。さらに麻袋は平たん性がないため、段差を解消するために表面に木材チップをまく必要がある。これらの課題が問題となるか否かを今年の3月に実験したところ、施工性や走行性に大きな問題は出なかった。
 
現場で本格的に導入する日はそう遠くなさそうだ。山元課長代理は5月以降に始まる林道工事の現場を担当すると既に決まっている。除雪後の地盤状態が悪い現場なので、廃材パレットや麻袋などの導入を検討している。

 

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作業員不足を、一括打設で解決!


建設現場で声高に叫ばれる、作業員不足。
仙台市の橋梁の新設工事は、復旧工事のあおりを受けて、人手不足状態に陥りました。
その困難を打開したのは、足場設置や配筋作業を集約化できるキャンバーフォーム工法でした。
人手不足と工期短縮を実現したこの工法は、知り合いの会社からの情報提供がキッカケだったそうです。
やはりどんな仕事でも、日頃からのネットワークが大事ですね。
20m橋脚の一括打設で打開
復旧とは関係のない橋梁の新設(仙台市)
・震災後に復旧工事を優先させるなか、震災前に開始した工事は人手不足の影響をじかに受けた
・作業を集約できる工法の採用で作業員の手持ちを減らす
被災地でまん延する人手不足。その傾向は、緊急性の高い復旧工事よりも通常の工事で顕著だ。
 
仙台市の広瀬川上流部で実施された新鳴合橋新設工事は、人手不足の影響をじかに受けた現場の一つだ。施工者は鹿島と奥田建設(仙台市)のJV。渓谷に大口径の深礎杭基礎とP1橋脚を構築後、張り出し工法で長さ約160mのPC(プレストレスト・コンクリート)桁を架設する。
工期は2010年12月~13年3月。冬季の準備期間を経て工事を始めようとした矢先に震災が発生した。被災地の発注者は、震災時点で受注済みの工事に4ヵ月の中止命令を出す。震災時に作業を開始していた他現場と異なり、新鳴合橋の現場では、実際の作業に従事する建設作業員を抱える下請け会社との契約が、これからという段階での中断だった。
11年7月に中断は解除されたが、復旧工事が本格化するなか、作業員の新たな確保は困難を極めた。
◆作業員の到着遅れて工程ずれる
それでも鹿島JVは、喫緊の作業に必要な人員を集めて、同年8月末から工事を再開した。ただし工程は徐々に遅れ始める。
現場付近は、切り立った崖に歩道のない1車線の道路が走るだけで、工事用の作業スペースがない。深礎杭やP1橋脚の施工には、現道を谷側に拡幅して重機を据える場所を確保し、谷底に作業構台を構築する必要があった。工事にはそのほか、法面への法枠やグラウンドアンカーの設置など多岐にわたる作業力斗半う。
「人手不足がたたって、必要な作業員を、工程どおりにタイミングよくそろえることは非常に難しかった」と、鹿島JVの田村富夫所長は話す。現道の拡幅が終わっても、予定した杭打ちの作業員の到着が遅れて構台の設置が始めらないこともあった。1~2週間の単位で工事が進まないケースも珍しくなかった。
震災後に引き直した工程で、12年3月に終える予定だった深礎杭基礎が、同月にようやく取り掛かれるというほど、工事は遅れていた。工事全体の工期を守るには、同年8月までにP1橋脚を構築して上部工事に取り掛かる必要があったものの、このままでは不可能だった。
工期短縮はもちろん、今後も続く人手不足の解消策も考えなければならない。そこで、知り合いの会社からの情報提供をもとに奥田建設が提案したのが、新設では適用実績の少ない「CF(キャンバーフォーム)工法」だった。
◆型枠や鉄筋を一度に積み上げる
同工法は、清都組(北海道石狩市)が06年に開発したコンクリート打設用の型枠組み立てを省力化する技術だ。新技術情報提供システム(NETIS)に登録されている。同JVは同工法を使って、高さ20m、長辺8m、短辺3mの八角形断面のP1橋脚を1日で打設した。
工法の特徴は、足場と型枠を差し込むガイド用のH形鋼、型枠、鉄筋を、それぞれ一度に積み上げて、一気にコンクリートを流し込む点にある。
一般的には、型枠の高さ3.6~5.4mを目安に、足場設置、型枠構築、配筋、コンクリート打設、養生を実施。これを1サイクルとして所定の高さまで、作業を繰り返す。
ただしこの場合、大工や型枠工、鉄筋足場鉄筋工、コンクリート工を各施工段階で呼び集める必要がある。作業員がタイミングよく集まらなければ、工程に遅れが生じ、工期は延びてしまう。作業員を囲い込む手がある一方、作業をしない「手待ち」の時間が発生するため、人件費は膨らむ。
CF工法はこの繰り返し作業をやめて、足場設置や配筋などの作業を集約した。作業員を抱える下請け会社は、現場に一度来て仕事をすればよい。作業員を呼び集めやすくなるというわけだ。
足場や型枠をまとめて積み上げることから、倒壊対策にも特徴がある。
通常は、打設済みの下層のコンクリートを控えにして、上層の足場や型枠を固定する。しかし、同工法はコンクリートを1回で流し込むので、控えが取れない。そのため、地盤や作業構台からワイヤで足場の控えを取るほか、型枠とH形鋼、対面のH形鋼同士をつないで、仮設全体で倒壊を防ぐ構造にしている。
◆2.5月から1ヵ月に短縮
新しい技術は、その効果や現象を理解するまで、採用になかなか踏み切れないものだ。しかし、不測の事態に陥った現場では、一刻も早い決断を迫られる。決断の遅れは、工程や原価に響く。
田村所長も初めは、「20mどころか10mを一度に打設した経験も皆無だった。コンクリートの側圧の影響などを考えると、1回での打設は不可能だと思っていた」と振り返る。
それでもCF工法の実施を決めたのは、工程を軌道に乗せられるという理由のほか、「打設理論は間違っていない」との考えからだ。弱点の打ち継ぎ目が不要になる「1回での打設」は理想の工法のはずだ。
「40~50mの場所打ち杭は一度に打設するのに、橋脚は不可能だとする明確な理由はない」(田村所長)。懸念されたコンクリートの側圧の影響は、足場を含めた仮設全体で受け持てば、問題ないと判断した。
ただし、田村所長は万が一を想定。型枠の傾きを測量して、変位が5cmになれば打設中止という‘保険”をかけた。型粋が変状をきたしても、中断して打ち継ぎ処理をすれば、打設したコンクリートは無駄にならない。実際の変位は0.5~1cmしか生じず、無事に打設を完了。ひび割れは想定内に抑制できた。
通常の打設工法では、作業員をタイミングよく呼び集められたとしても、橋脚の構築に2.5ヵ月を要する予定だった。CF工法の採用でそれが1ヵ月に短縮。予定どおり、12年8月に上部工事に移れた。同工法の採用に伴う施工費用は増加したもの、工期短縮で経費は大幅に削減できたので、橋脚の構築に掛かる総コストはほぼ変わらない。
◆熟練の技術が必要ない
CF工法はこの採用を皮切りに、復興工事で使われる機会が増えた。14年4月時点で、国土交通省や県の復興工事で5件に適用。「職人不足に対応できる」、「工期短縮につながる」などの点が評価されているようだ。
同工法を開発した清都組の清都一章社長は、「一般の作業員でも習得できる型枠の組み立て方法だ」と説明する。通常の型枠組み立てには加工作業を要するため、熟練の技能が必要だった。同工法は建て込んだH形鋼に規格化した型枠を差し込むだけで済む。
“必要は、発明の母である”―そのことを思い起こさせる事例です。建設工法の進化にもアンテナを張ることが、優れた現場監督への道にもつながりますね。

 

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直接雇用、ルート変更、議論…究極の改善運動


日本企業の競争力の一つは、現場での業務改善力です。
トヨタの“カイゼン”は、世界的にも有名です。トヨタのカイゼンの神様と呼ばれた大野耐一氏の『鬼十訓』は、その精神を見事に表現しています。
第1訓 君はコストだ。まずムダを削れ。それなくして能力は展開できない。
第2訓 始めたらねばれ。できるまでやめるな。中途半端はクセになる。
第3訓 困れ。困らせろ。安易を好む人と決定的な能力格差がつく。
第4訓 ライバルは君より優秀だ。すなわち君は「今」始めることでのみ勝てる。
第5訓 仕事に痕跡を刻め。十割を命じられても十一割めを自前の知恵でやれ。
第6訓 平伏させず心服させろ。そのためにはだれより長い目で人を見ることだ。
第7訓 「できる」とまず言え。そこに方法が見つかる。
第8訓 失敗を力にしろ。真の自信も運もリカバリーから生まれる。
第9訓 労働強化を避けよ。人間「ラクになるには」に一番頭が働く。
第10訓 お客の叱声は成功の呼び声だ。逃すな。いじけるな。考え抜け。
今回の事例も、生産性を上げるため、直接雇用の推進、ダンプのルート改善、直行直帰を禁止して日々の改善ミーティングの実施等、まさに改善運動の見本です。
運搬回転率のアップを追求
堤防の腹付け盛り土工事(群馬県桐生市)
・ダンプや重機の不足が慢性化し、多くの土砂を扱う築堤工事で十分な台数を集められない
・積み込みの作業効率向上や運搬時間の短縮を図り、少ない台数で工事を終わらせた
2013年度末の工事の繁忙期にダンプトラックの不足に悩まされた現場は少なくない。関東地方は特にその傾向が強かった。被災地で復旧工事が始まって以来、東北地方からの出稼ぎによるダンプの流人は減少。築堤工事などの発注件数の大幅な増加が、不足傾向に拍車をかけた。
「今年は例年と比べてダンプトラックや重機が特に集まらなかった」。元請け会社から、土工や土砂運搬を主に請け負う細村建設(埼玉県東松山市)の土木部機械課の関根篤主任はこう振り返る。
 
細村建設は数多くのダンプトラックや重機を保有している会社だ。年度末に複数の現場を切り盛りするには、自社分だけでは足りず、協力会社に要請して手配している。
「近年は繁に期に1日最大100台以上のダンプが我々の現場で稼動していたが、13年度末は工事量が多かったにもかかわらず、最大で50台強しか確保できなかった」(関根主任)。
それでも細村建設は、ダンプトラックの不足を様々な工夫で補い、全ての工事を元請け会社から要求された工期内に終わらせた。その一つが、河本工業(群馬県館林市)から約7600万円で受注したH24元宿町地先堤防補強工事の現場だ。
土取り場から約1.2万㎥の土砂を運搬し、河川敷内の約549mに腹付け盛り土を施工する。細村建設が当初、元請け会社の工程をもとに見積もったダンプトラックの必要台数は15~20台。それに対して、実際に役人できたのは12~13台だった。
◆一度に積む量と運ぶ量を割り増し
想定よりも少ないダンプトラックの台数で、細村建設はどのようにして現場を回したのか。
 
渡辺将史営業課長からは、「作業効率を上げて、稼動するダンプや重機1台当たりの仕事量を増やした」というシンプルな答えが返ってきた。同社は元々、効率を上げるために他社とは異なる戦略を採っている。
 
例えば、自社保有のダンプトラックは全て12t積みだ。特殊車両通行許可が必要になるものの、一般的な10t積みと比べて車体が1.5m長く、1回の運送で積み荷の量は2割増す。元宿町の現場には、この12t積みを投入して作業効率を上げた。
さらに油圧バックホーには、車体の規格よりも大きなバケットを付けて1回の積み込み量を増やしている。例えば、規格が0.7㎥のバックホーには、バケット容量0.9㎥を装備する。
こうした使い方は法的に問題がないものの、熟練のオペレーターがいなければ効果を発暉できない。技能不足のオペレーターが、通常より大きいバケットを装備したバックホーを運転しても、不慣れなために緩慢な作業になり、逆に効率は下がる。転倒して事故を招く恐れもある。
オペレーターの不足が目立つ昨今、現場のタイミングに合わせて熟練者を手配するのは難しい。反面、細村建設は昔から直接雇用でその問題に対処してきた。最盛期よりも数は減ったものの、重機のオペレーター12人、ダンプの運転手15人を社員として雇用する。工程の厳しい現場や工事の要所で役人すれば、着実に効率を上げられる。
◆右折を回避するために搬出路を新設
少ない台数で仕事量を増やすため、運搬回転率のアップも欠かさなかった。1台に積み込む量が増えても、現場までの運搬回数が少なければ作業全体の効率は落ちかねない。土取り場は一般的に発注者が指定するため、運搬距離は決まっている。細村建設が重視したのは、最短距離ではなく最短時間だ。同社は元宿町の現場で、市街地を通る7~8kmの運搬ルートを見直して、約2km延びるものの、信号の少ないルートを提案。運搬時間を縮めた。
さらなる時間短縮のために土取り場の搬入出路にもこだわった。元々、搬入出路は一つしかなく、土取り場に左折で入って、右折で出ていく想定だった。
「現道に右折で出れば、対向車待ちに伴って一般道の渋滞を招くリスクが高い」と、渡辺課長は説明する。渋滞を招けば後に続くダンプトラックほど渋滞の影響を強く受け、運搬時間が延びる。そこで、細村建設は左折で現道に出られる搬出路の新設を提案した。
運搬ロスに直結する細かいリスクを一つずつ洗い出して改善すれば、1回の運搬当たり数分の時間短縮になる。たとえ数分でも、1日の運搬回数分を掛ければ、数十分の短縮につながる。元宿町の現場では、当初の計画では1日当たり往復5回の運搬が限度だったが、工夫を凝らして6回に改めた。1日1回の運搬回数増が、少ないダンプで仕事をこなすための重要な分岐点になった。
◆直行直帰をさせず会社で議論
日々の現場作業でも、常に効率アップを追求する。細村建設は、オペレーターと配車の責任者らによる作業後の打ち合わせを日課にしており、オペレーターの現場への直行や現場からの直帰を認めていない。元宿町の現場では、毎日1時間半掛けて会社に戻って来させた。
必ず会社に戻らせるのは、その日の作業報告を義務付け、効率の良い作業方法について議論するためだ。ダンプトラックの走り方から、バックホーの積み込み角度やすくい方まで、効率の良い方法を追求する。
元宿町の現場でも打ち合わせから効率の良い提案が生まれた。当初、敷き鉄板の上をダンプトラックが走り、降ろした土砂をバックホーでならした後にブルドーザーで整地する予定だった。しかし、盛り土材が想定よりも良質だったため、敷き鉄板は不要と判断して工法を変更。ダンプで自走して土砂を降ろした後、ブルドーザーで直接、整地した。
敷き鉄板の設置・撤去のほか、バックホー1台とそのオペレーター1人の手配が不要となり、施工コスト削減につながった。
改善とは地道な日々の取り組みであり、現場を隅々まで把握していないと実現できない活動だと、まさに実感させられるケースです。
 

難しいプロジェクトほど燃える日揮のDNA


OPCでは、海外の技術者派遣の案件を多数扱っています。
ただ、実際の仕事の現場は残念ながら詳細にお伝えすることはできません。
そこで、実際のお取引先でもある日揮を特集している記事を見つけましたので、ご紹介したいと思います。
灼熱の砂漠地帯で、どのように巨大プラントを構築していくのか。
その高い利益率は、どのように実現されるのか。
気になる実像を詳細に伝えてくれるレポートです。
日揮 プラントエンジニアリング会社
難しい工事ほど燃える
洋上や極寒地など難所で、LNGプラントを相次いで受注している。
多国籍の労働者を束ね、コスト管理の徹底で高い利益率を誇ってきた。
プロジェクトが巨大化する中、リスク管理能力の真価が問われる。
4月下旬、日揮の川名浩一社長はアルジェリアの首都アルジェにいた。テロ事件で関係者17人を失ってから1年以上経った今も、襲撃されたイナメナスの天然ガス関連施設は工事がほとんど止まったままだ。
対面した発注元の国営炭化水素公社(ソナトラック)のゼルクイン総裁は強く訴えた。「日揮に帰ってきてほしい」。アルジェリアにとって、天然ガスの生産は経済成長に欠かせない。1960年代から多くのプラントを建設し、現地の信頼が厚い日褌に工事をもう一度託そうというのだ。
川名社長は施設での設備や軍隊などの安全対策を一つひとつ聞いた上でこう告げた。「すべての関係者が安全対策に納得できるかどうかが大事で、我々だけでは決められない」。 
灼熱の砂漠、高温多湿のジャングル。日揮は居住や作業が難しい地域で巨大プラントの設計・調達・建設(EPC)を手掛けるプラントエンジニアリング会社だ。もともと危険を伴う仕事とはいえ、テロで人命を失う衝撃は大きかった。
 
二度と同じ被害に遭わないように、本社のセキュリティ一対策組識を「部」から社長直轄の「本部」に絡上げし、海外から専門家を呼び人数を4人から12人に増やした。経営陣は今、関係者と協議しながら慎重にアルジェリアでの工事再開の時期を探っている。
並の企業ならひるんだだろう。しかし野武士と呼ばれタフな人材が揃う日揮は、事件以降も行動原理を変えなかった。イスラム武装勢力による残虐な現場から生還した生存者は、既にほかの海外の建設現場などに赴いた。日揮の関係者は言う。「内面に複雑な感情を抱えているだろうが、技術者は大きなプラントを作るのが生きがい。新しい現場で泥にまみれ汗を流している」。
 
川名社長は「難しいプロジェクトほど燃えるのが日揮社員のDNA(遺伝子)」と言う。難所での巨大なプロジェクトでも、品質、スケジュール、コストを確実に管理しながらプラントを完成させる手腕への評価は高い。世界70カ国で2万件のプラントを建設した実績が、それを裏付けている。
◆利益率で競合他社を圧倒
 
ここ数年、業界でLNG(液化天然ガス)需要が急増していることが収益の追い風になっている。新興国などの経済成長でエネルギー需要が拡大している。さらに、日本で原子力発電所が停止し、電力大手が火力発電用の燃料を多く購入するようになっているためだ。日本が輸入するLNGの半分ほどは、日褌が作ったプラントで生産されている。
2014年3月期の営業利益は前の期比6%増の682億円と過去最高を更新した。この数年は受注残が1兆円を超え、増益基調を続けてきた。
プラント業界全体がLNG需要増の追い風を受けているが、中でも日揮は競合他社より利益率が高い。同社の前期の売上高営業利益率が10%超なのに対し、競合する千代田化工建設は5%。基準は違うが米KBR、米CB&Iは6%程度だ。中東で多くのプラント建設の受注を獲得している韓国企業も、計画よりコストが膨らみ苦しんでいる。代表格の韓国サムスンエンジニアリングは赤字に転落した。
 
日揮の利益率が高いのは、高付加価値の難しいプロジェクトを低いコストでやり遂げるノウハウを培ってきたためだ。
 
そのノウハウは一朝一夕には身に忖かない。まず、洋上や極寒地など難工事が予想されるプロジェクトを率先して受注する。着工後、予想外のリスクに直面しコストが膨らむこともある。だが経験を重ねるうちに、独自のリスク管理手法をいち早く磨き上げる。
 
例えば、現在高い収益性を誇るLNGプラントは、1970年代にいち早く日揮が建設した。失敗から多くを学び、競争力の高いプロジェクトマネジメントを作り上げてきた。その強さは、最先端の分野でも発揮されている。 
今年2月、あるニュースが世界のプラント業界を駆け巡った。マレーシア国営石油会社ペトロナスが計画する洋上LNGプラントのEPCを、日揮が受注したのだ。同国東部サパ州の沖合185kmにプラントを建設し、2018年からLNGを生産する。
需要拡大を受け、LNGの開発が陸地だけにとどまらず海にまで広がってきた。だが、洋上LNGは波によって揺れる上、建設の実績が少ないためコストを読みにくい。既に仏テクニップが2件を受注しているが、いずれも深海ではない。その意味で、水深1500mの深海から天然ガスを掘り出し、LNGを生産する難度の高いこのプロジェクトは、今後のプラント業界の趨勢を占う重要な案件だった。
 
ここには日揮だけでなく、IHIと三井海洋開発、東洋エンジニアリングなども応札した。だが、ペトロナスの希望する価挌とブラント会社の提示価格に乖離があり受注企業が決まらない状態が続いていた。
そこで日揮は、ある切り札を投入した。昨年12月末、アジア・オセアニア営業部の関川匡秀部長は、重久吉弘グループ代表を伴ってマレーシアに飛んだ。80歳の重久代表は海外営業の長として、日揮の海外展開を指揮してきた。世界のプラント業界で知らない者はいない。欧米の石油メジャーや、国営石油会社との人脈も深い。
首都クアラルンプールの高級イタリア料理店で、重久代表は旧知の仲であるペトロナスのタンサリ・シャムスルCEO(最高経営責任者)とテーブルを囲んだ。昔話に花を咲かせ、そのうち話題は洋上LNGへ移る。そこで、おもむろに価格の大幅な引き下げを提案した。するとシャムスルCEOの表情に変化が表れた。業界の重鎮である重久代表自らが出席し、周到に準備した大幅な値下げを切り出して受注を迫る、その執念が相手に伝わった瞬間だった。
業界では「赤字受注では」と噂されるほどの価格引き下げだったが、日揮は「一定の利益は確保する」と言う。それは、会談直前までの約3ヵ月でコスト削減策を徹底的に練り上げて作ったものだった。
◆モジュールエ法に強み
横断的な対策チームを結成し、約100項目のコスト削減策を検討した.そこでは、設備をマレーシア国外のよりコストが安い地域で作り、日揮が世界で先行しているモジュール手法を採用することなどが盛り込まれた.
モジュールエ法とは、プラントを構成する蒸留設備やタンクなど複数のモジュールを陸上で作った後、船上に運び、組み合わせる。船上で一から建設するより効率的だが、複数のモジュールをつなぎ合わせる作業が膨大で難しく、技術力の差が鮮明に出やすい。日揮はマレーシアで他社に先駆けて深海での採掘が可能な実践的手法を確立し、今後増えることが確実視される洋上プラントの受注競争を有利に運ぶ考えだ。
◆調達先の倒産リスクを回避
こうした新しい種類のプロジェクトでは特に、実際の工事に入ってから発生しがちな予期せぬリスクをいち早く察知し、対応できるかが重要になる。情報収集力と判断力が試されるのだ。その面で、日揮の底力を示す事例がある。
 
2012年、日揮が東南アジアで手掛けたあるプロジェクトで、資材の調達先が倒産するというリスクに直面した。調達部門がタワーやドラム、圧力容器など機器を生産する韓国のA社の経営状況が変化し始めていることを、同年1月に察知した。労働者への支払い遅延などが起きているという内部情報を、いち早くつかんだのだ。
さっそく調達部長がA社に問い合わせると、「資金不足だが解決できる」との返答。しかし、不安を払拭できないため、社内にプロジェクト部と調達部からなる検討チームを立ち上げた。倒産という最悪の事憩も想定し、別の会社に代替発注する準備も始めた。
倒産して裁判所の管理下に入ると資材などを持ち出せなくなり、傷口が深くなる。別の調達先へ代替発注すると、10億円のコストアップになり、納期が5ヵ月も遅れてしまう。期限は迫り、プロジェクト責任者はギリギリの決断を迫られた。結局、倒産を前提に、2月中に代替発注を決断した。なぜか。
世界で2万件に上るプロジェクトを手掛けてきた日揮。詳細な調査のデータと社内に伝わる経験則が、小さな損失にひるんで決断が遅れるより、早めに最悪の事態を想定して動いた方が、結果的には傷口が浅くて済むことを教えていたためだ。
日揮社員がすぐA社の工場に向かい、設計図や資材などを引き揚げて、港まで運んだ。作業が終わった直後の3月中旬にA社が倒産し、裁判所の管理下に入った。A杜に資材を発注していたプラント会社はほかにもあったが、資材を持ち出せなくなり、日揮と明暗を分けた。緻密なプロジェクト管理で、損失を最小限に抑えたのだ。
世界の様々な現場で通用するこうした管理能力は、入社直後から徹底的に鍛えられる。現在入社3年目のプロセスエンジニア、周玥氏は1年目にいきなりカタールのガス処理プラントの建設現場で6ヵ月間働いた。経験がない女性ということもあり、現地の労働者は彼女の言うことを聞こうとしなかった。と‘うすれば指示に従ってくれるのか。試行錯誤した結果、説明の仕方を根本から変えることにした。
個別の工事ごとに細かい注文をつけるより、まずプラントの全体像を示し、労働者にも理解させた上で、なぜその順番で工事が必要かを丁寧に説明した。すると労働者たちの彼女への態度が徐々に変わっていった。業務の最前線に放り込まれ、もまれることで、一人前のエンジニアとして認められるようになっていった。
これからも需要は堅調と見られているEPCだが、課題もある。今年5 月14日。株式市場に、日揮ショックが走った。
同社は、2015年3月期の営業利益が前期比19%減の550億円になると発表。収益性の高いプロジェクトが一巡し、営業利益率も7%に下落する。市場予測を大きく下回ったため、株価は前日比13%下落し、東証1部の下落率2位となった。同業の千代田化工の営業利益率は4%と、さらに低い水準だ。
◆常に挑戦する環境を作る
アルジェリアのテロ事件で、我々は本当に悲しい思いをして、社内の安全対策を強化した。アルジェリア政府とは40年の付き合いがあって兄弟のような関係だ。私が現地に行った際には政府関係者から何度も謝られた。万全の対策ということはないので、心の中ではいつもヒヤヒヤしているが、海外で挑戦しなけれぱ日揮らしさが失われてしまう。
昨年11月にイラクの首都バグダッドでシャハリスターニ副首相から太陽光発電所の建設と運営を頼まれた。電気は社会を明るくする。治安などの面で難しい国だが、電力不足の解消に少しでも貢献したい。
新興国などの経済発展に貢献するのが我々のビジネスであり、資金がない国もあるので、今後はEPCだけでなく、投資を伴う事業も強化していきたい。
主力のEPC事業では世界でエネルギー消費が伸び、LNGプラントの需要が急増した。シェール革命で北米市場が勃興したほか、アフリカ市場も拡大している。
陸上から洋上へというトレンドもあるので、そこで実績を積むことが次の受注につながる。海上でプラントを一から造ることは難しいので、陸上でモジュールを作って船上で細み立てる工法が必須になる。このモジュールエ法は労務コストが高い地域や極寒地にも応用できる。新しい分野で先行できれば、企業の発展につながる。
その考えは人材育成でも同じ。牡員にはあまり長い間、同じ地域を担当させない。同じ担当にとどまると慣れが出てきて成長が止まってしまう。5~6年で新しい担当に就かせて、常に挑戦させるような環境を作っている。
50年以上海外を飛ぴ回って感じるのは、真面目で誠実な日本人の気貿は世界でブランドになっていること。プラント建設現場で数万人の多国籍の労働者を束ねることができるのは、気配りのできる日本人だからこそ。
こうした良さを受け継ぐために、新入社員には1年目から海外の建設現場で訓練をさせている。(談)
背景にはEPC市場の構造的な変化がある。これまで主戦場は中東や東南アジアだったが、北米や、ロシア、アフリカなどでも需要が拡大してきた。総事業費が1兆円を超えるプロジェクトも増え、見積もりが甘かった場合などに被るリスクが拡大した。
受注後に新たなコストダウンをしても、プラント会社の手元に入る利益額が変わりにくい契約形態が出始めているという要因もある。利益率の水準をどう維持でさるかが課題だ。
このため、6月に財務統括役員の佐藤雅之副社長が会長lこ就任する人事を決めた。「計数管理的なアプローチで経営を捉える強みを生かしたい」と佐蘓次期会長は語る。大きな権限を持つ会長の立場から、全社の採算管理に目を光らせる。
◆事業投資にも業態を拡大
そして、新たな成長の糧として取り組み始めたのが事業投資だ。設備を受注して建設し、相手に引き渡すプラント会社の枠を越え、事業から生み出される安定収益を長期的に確保する。そこでも、強みである技術力を生かす。
例えば、日揮が開発した、低品質石炭を石油のような液体燃料に加工する技術を使う。プラントを建てるだけでなく、低品質石炭から液体燃料を生産し、販売する事業を検討中だ。インドネシアで実証機を建設し、試験運転を始めている。事業主体になるPTJGCCoalFuelの藤田哲男社長は、「(液体燃料に)関心を持つ企業は多い」と語る。既に世界の各地で電力や都市インフラ開発、病院運営などの事業に投資を始めており、ミャンマーの空港事業にも応札した。
砂漠やジャングルから洋上、極寒地まで。事業投資でも未開のプロジェクトへ、果敢に挑む。緻密な野武士たちの実力が、さらに大きなステージで試される。 
テロに遭った人でも、すぐ次の現場に向かうタフさ。
「技術者は、大きなプラントを作るのが生きがい。新しい現場で泥にまみれ汗を流している」という言葉が、印象的です。
日揮というブランドパワーの根源が、すこしわかる気がします。

 

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綿密な工程管理が、トラブル円滑処理を可能に


今、建設現場では、土木一級施工管理技士の資格を持った現場監督が圧倒的に不足しています。
河川や道路、橋や港湾、鉄道など重要な社会インフラの土木工事において、主任技術者もしくは監理技術者として施工計画を作成し、現場の工程監理、安全監理を行う人々です。
OPCでも、現場監督を求める案件を多数扱っています。
そういった人々は、現場でどんなスキルが求められ、どう動くのか。
今回ご紹介するのは、「作業が一つでも計画通りに進まなければ、工期内に工事が終わらないという状態が約5ヶ月も続いた」という逆境下で、見事仕事をやり遂げた人々のリアルストーリーです。
余裕のない工程、人手不足…。ヒントは、綿密な施工計画にありました。
綿密な工程でトラブルを円滑処理
○変状のあった橋台の撤去・新設(三重県紀北町)
・作業員を確保しづらい状況下で、沈下した橋台の対策工事を短工期で進めなければならなかった
・下部と上部、舗装を施工する3社が協力して工程計画を作成した
「作業が一つでも計画通りに進まなければ、工期内に工事が終わらないという状態が約5ヵ月間も続いた。これほどまで長期間にわたり、危機的な工程が続いた経験は今までになかった」。
東急建設出垣内作業所の水井隆之工事主任は、そう感慨深げに話す。水井主任は国土交通省中部地方整備局が発注した紀勢線出垣内地区道路建設工事で、現場代理人を務めた。
現場は三重県紀北町にある近畿自動車道紀勢線の一部。赤羽川橋のA1橋台とトンネルの間の土工が主な工種となる一般的な道路工事として終わるはずだった。ところが、2013年4月末に事態を一変する出来事が発生する。別会社が構築したA1橋台が大きく沈下して、使えなくなる事態になったのだ。
隣接部の道路土工を担っていた東急建設は、主な対策工事を一任される。発注者から課せられた条件は、「13年度内の開通」だ。タイムリミットまで約10ヵ月間しかなかった。
同社A1橋台付近で既に盛り土を施工していた。それを掘り起こして、変状のあったA1橋台を取り壊し、かつ新しい橋台を遣る(右上の図参照)。別の会社が担当する桁の架設や舗装の工事を含めた全体の工程に配慮しながら工程管理をしなければならなかった。水井主任は、「通常どおりのやり方では、絶対に間に合わなかった」と振り返る。
ただでさえ工程に余裕のない現場を、さらに「人手不足」の問題が襲う。建設作業員を十分に確保できないなか、最短で現場を進める手法が大きな課題となった。
◆歩み寄らねば間に合わない
短期間で工事を進めなければならない際、まず考え付くのは人海戦術による突貫作業だ。ただし、先述したように手配できる人手は限られる。下請けを担う会社も、長時間拘束される割に利益を出しにくい突貫作業を敬遠しがちだ。
「効率良く作業してもらい、長期間拘束せずに次の工事へ向かってもらう条件であれば、協力会社は来てくれる。それには綿密な工程、詳細な施工計画が必要だった」と水井主任は説く。
特に工程計画の作成には、かなりの労力を費やした。東急建設1社だけでなく、桁の架設など上部工を担当する瀧上工業(愛知県半田市)や舗装工事を担うガイアートT・Kのほか、国交省や設計を担うエイト日本技術開発が何度も一堂に会して、工程をすり合わせた。各社が歩み寄ってはじめて、3月末の完成が見えてきた。
工期は、当初に比べて1ヵ月ほど短縮できた。ポイントは、施工の取り合い部の作業手順の変更にあった。例えば、東急建設と瀧上工業との取り合い部では、落橋防止装置が支障となって生じる盛り土工事の遅れが懸念された。 
開通から逆算すると、東急建設は14年1月下旬までにA1橋台を構築して、現場を瀧上工業に引き継がなければならなかった。そのうえ、瀧上工業が桁を架設して落橋防止装置を設置するまで、東急建設は橋台背面の盛り土施工には着手できない。結果、舗装工事会社に盛り土区間を引き継ぐタイミングは遅くなる。
◆工程を単純化して干渉避ける
そこで東急建設と瀧上工業が提案したのが、先付け型の落橋防止装置だ。同装置を橋台にあらかじめ埋め込んで、桁の架設後に、桁と橋台をつなぐ構造に改める。
これによって瀧上工業が桁を架設する間に、東急建設が橋台背面の軽量盛り土の施工を進められる。2社間の引き継ぎが一度で済み、工程を単純化できた。
そのほか、A1橋台と桁の取り合い部では、仕上げ作業の手順に変更を加えた。通常の手順では、橋台に変位制限用のコンクリートを打設した後に、桁の架設に取り掛かる。
それをこの現場では、橋台を構築してから瀧上工業が先に桁を架設する手順に変更。同社が橋面の仕上げ作業に取り掛かって桁下空間が空いた際に、東急建設が再び橋台に上って、変位制限コンクリートを設置するようにした。
変位制限コンクリートの打設に必要な工程は元々、全体工程におけるクリティカルパスの一部だった。それを桁の架設と並行して進めるように手順を変更した結果、クリティカルパスから外せたわけだ。約7日間の工期短縮につながった。
足場の設置・撤去の手間も減らした。東急建設が橋台構築用に設置した足場を撤去せずに瀧上工業が桁架設の昇降用足場として転用。瀧上工業が吊り足場を設置するのに支障となる足場の撤去については、吊り足場の設置と同時に進めた方が早いとの判断で、同社のとび工が担当するように取り決めた。
◆型枠工の悩みを聞いて解決
3社が協力して作成した工程は、余裕を除いたかなり厳しいものだ。そのため、東急建設は下請け会社の作業員との入念な打ち合わせで、作業リスクを引き出し、未然の防止策を考えた。同社の池田澄人副所長は、「働く人の悩みを聞いてそれを解決してあげれば、工程に余裕が生まれる」と説明する。
橋台の構築では、型枠工や鉄筋工から工期短縮を図るための提案を求めるとともに、現実的にその策が実現可能なのかどうか意見を集めた。型枠工からは、パネルを大型化して設置の手間を減らす提案のほか、過密な鉄筋のため、セパレーターの設置に時間を費やすかもしれないという悩みを吸い上げた。 
そこで池田副所長は、型枠の仮設計算から必要なセパレーター数を算出。鉄筋と干渉しないようにセパレーターと配筋図の位置関係を示す資料を作成した。
作業員はその資料をもとに手が空いたときに事前にセパレーターを型枠に取り付けられる。足場上での作業の省力化につながり、工程に余裕が生まれた「目標」提示で工事の完了を確信 水井主任は、深礎杭の構築が始まった13年10月時点で、「現場はばたついており、予定どおり終わる確証がなかった」と思い起こす。それが12月には、翌年3月末の完成が確実に見えてきたという。
進捗が早まって工程に余裕が生じたわけではない。池田副所長の協力の下、年度内開通などの目標を現場で徹底して掲げ、その目標が下請け会社にも浸透してきたからだった。
「実工程は、計画から1週間ずれたことがない」と、水井主任は胸を張る。徹底した工程管理の末、同現場は無事に完成。 14年3月末に開通した。
こういったことは、現場経験を積まないとわからないかも知れません。
いろんな人とコミュニケーションを取り、必ずGOALを遵守する。
「働く人の悩みを聞いてそれを解決してあげれば、工程に余裕が生まれる」という言葉が、とても印象的でした。
まさに、プロの仕事です。

 

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ヒト、モノ不足を現場の知恵で解決!


今、国内の建設業界では活況に沸く一方で、人手不足が叫ばれています。
また人手不足だけでなく、各種資材やショベルカーやダンプといった重機類まで不足状況に陥り、工期の遅延にもつながっているのが現状です。
そうした課題に対して、解決策はないのでしょうか?
今回日経コンストラクション2014年4月28日号に、非常に参考になる現場の事例が掲載されていましたので、是非ご紹介したいと思います。
現場でできる工夫やノウハウは、共有することがとても大事だと感じさせる内容です。
解決!「ヒト・モノ不足」
難局は現場の知識で乗り越えられる
被災地から始まった人手、資材、重機の不足問題が、全国に波及し始めている。これから三重苦に悩み、工期を延ばさざるを得ない現場や利益を確保できない現場は少なくない。現場での「ヒト・モノ不足」への対策は緊急の課題だ。設計や工法の変更、綿密な工程管理、作業効率の追求、新技術の開発といった取り組みを通じて、厳しい局面を乗り切った現場に学ぶ。
◆10tダンプやポンプの不足/設計変更を繰り出し調達難を回避
○大規模下水処理場の復旧工事(仙台市)
・震災で被災した下水処理場の復旧では、短工期と資機材不足という課題があった
・調達リスクを避け、工期を短くする設計変更案を、施工者が次々と提示している
毎月1万㎥を超えるコンクリートを打設する巨大な工事が、仙台市の太平洋岸で進む。東日本大震災で甚大な被害を受けた市南蒲生浄化センターの災害復旧工事だ。1日当たり43万㎥相当の下水を処理するための沈殿池や反応タンクといった下水処理施設を、2015年度末の完成に向けて建設している。土木・建築工事だけで、発注金額は合計約250億円に上る。仙台市が事業主体となり、工事発注などの手続きを日本下水道事業団(JS)に任せた。
同センターの主要施設の建設工事を担うのは、フジタ・鴻池組・丸本組・後藤工業・皆成建設JVだ。震災後の復旧・復興工事の多くが直面する二つの課題を乗り越えながら、同JVの大西基成所長が約6haにわたる工事現場を切り盛りしている。
二つの課題とは、短工期を克服する工程管理と、被災地の工事量の増加に伴って不足感が強まった資材や機械の調達管理だ。
◆「2ヵ月は遅れていたのでは」
同センターは、仙台市の汚水の約7割を処理する重要施設。現状は被災した既存施設の一部を利用して下水処理を行っており、早期の復旧が求められている。約6haの敷地を掘削し、約20万㎥のコンクリートで構造物を構築する土木・建築工事の工期は、約3年半しかない。
被災地では復興工事などの本格化に伴い、工事用の資材や機械の調達が困難な状況にある。「現場に赴任した際に感じたのは、物がないということ。発電機やポンプ、鉄板、仮設事務所など、通常であれば電話一本で入手できるものが簡単に調達できない」と、大西所長は話す。この工事の主要材料であるコンクリートの調達でも、骨材の一部を海上輸送する段取りを整えるほどだった。
この現場でこれらの課題を解決する最大の武器は、大西所長のアイデアだ。仮設方法や施工機械の選定などで、課題を打ち払う多様なアイデアを提示。厳しい条件下で、順調に工事を進めている。
市下水道計画課の甲野藤弘憲課長は、大西所長が繰り出すアイデアをこう評価する。「部分的な提案ではく、工事全体の流れを考慮できている」。工事の流れも踏まえたアイデアによる設計変更がなければ、「2ヵ月程度は工事が遅れていたのではないか」と大西所長はみる。
◆砂地を走れる40tダンプに
様々な設計変更のアイデアのうち、大きな効果を発揮した工種が土留めと掘削だ。この現場では、東西方向約200m、南北方向約300mのヤード内を、最大13mの深さまで掘る。掘削土量は約20万㎥に及ぶ。 
JSが総合評価方式で工事を発注した際に、フジタJVが提示した設計案では、JSが想定した0.8㎥級のバックホーの代わりに、1.4m3級のバックホーを10台入れる予定だった。さらにJSによる当初設計案では、運搬に10tダンプトラックを用いることにしていた。
しかし、現場を率いることになった大西所長は、使用重機を変えた。バックホーにはより能力の高い2㎥級を加え、搬送用のダンプには場内で残土処分する点を踏まえて40tクラスを採用。より汎用性が高い10tダンプや1.4㎥級バックホーに比べて調達しやすい点を重くみた。
この変更は、単に重機手配の確実性を高めただけではない。現地は海に近い砂地盤。駆動輪の少ない10tダンプでは、地面に車輪が食い込んで動けなくなるリスクがある。そのため、ダンプ走路には鉄板などを敷く必要が生じる。
一方、40tダンプは駆動輪が多く、砂地盤でも走行できる。しかも、重機の性能を上げた分、1回当たりの積み込みや運搬の土量が増えて施工効率が高まる。鉄板を敷く手間やその調達リスクもなくせた。
◆土留めの自立でアンカー6割減 
土留めでは、工法を変更して手間の掛かる施工を減らした。当初の設計案では、下水処理施設の躯体構築に必要な最小限のエリアを区切る格好で鋼矢板を配置。鋼矢板はグラウンドアンカーで支える計画だった。
大西氏は、鋼矢板の設置位置を西面で約4m、東面で7~10mほどセットバックさせて矢板前面の土砂を残して掘削できるよう計画を改善。アンカーを使わなくても矢板が自立できる案をまとめた。これによって、アンカーの施工本数は、723本から261本に減った。しかも、鋼矢板の位置を変えて、一部の埋設構造物で矢板との干渉を避けた。
ただ、矢板は無条件で背面にずらせたわけではない。西側には貞山運河が存在し、この施設への影響を考慮しなければならなかったからだ。事業主の市が窓口となり、同運河を管理する宮城県と協議を実施。矢板のセットバックを認めてもらったうえで、設計変更を実現させた。
これらの土留め・掘削による工夫によって、単純計算で90日分に相当する施工手間を軽減できた。実際の掘削工事では、既存施設の解体工事などとの調整が生じたりして、思うように工事が進められない時期が生まれた。それでも、工夫を重ねたことで、ほぼ当初の予定どおりの工期で施工を進められている。
工事費でもメリットが出た。鋼矢板の設置位置を変えた結果、掘削土量は約1万㎥増えたものの、アンカーの設置手間の軽減などで計約7400万円を節約できた。
◆排水は150ヵ所から6ヵ所へ
この現場で大西所長が示したアイデアはほかにもある。水替え工事だ。大面積の掘削を伴う現場では、地下水のくみ上げも工程管理上、重要な工種だ。当初は、掘削面よりも低い位置に配した釜場と呼ぶ集水施設に流れ込んだ水をポンプアップする釜場排水工法を採用する予定だった。
この場合、掘削現場における釜場の想定箇所数は約150ヵ所に達する。「地震後に地盤沈下が多発。排水需要が増すなどしてポンプは手配が難しくなっていた」(JS東北総合事務所施工管理課の高瀬智主幹)。そんなポンプを、大量に用意しなければならない工法だ。
加えて、現場では解体工事なども動いていた。排水用のホースが干渉すれば、こうした工事などの支障になりかねない。大西所長は、ほかの工事への影響を抑えつつ、確実に水を抜ける工法に改める道を選んだ。
ここで選択されたのは、ウルトラディープと呼ぶ工法だ。井戸から真空ポンプを利用して強制排水する。排水箇所は6ヵ所で済んだ。工費は1800万円ほど増したが、当初の工法に比べて約30日相当の手間を軽減できたという。
◆土留め変更が桟橋削減に効く
このほか、クレーンやコンクリート打設用のポンプ車などの動線となる仮設桟橋の施工でも大西所長は知恵を絞った。当初、掘削敷地内を東西方向と南北方向に格子状で区分する予定だった配置計画を、南北方向が中心となる形状に変更。桟橋の施工面積を約2割減らした。
当初の計画では、桟橋と躯体が干渉する部分が大きく、桟橋を撤去した後で施工しなければならない部分が多く残ったからだ。東西方向の桟橋を減らす配置にして桟橋の施工面積を削減するだけでなく、桟橋撤去後の工事量も減らした。
桟橋の施工面積を削減できた理由の一つが、先に紹介した鋼矢板のセットバックだ。当初は西端に桟橋を設ける想定だったものの、鋼矢板の位置を変え、その前面を仮設道路としたので、桟橋の施工面積を減らせた。
一方、桟橋の幅は当初の10mから12mに拡幅した。10mの幅では現場で用いる70t級クレーンの背後をアジテータ車が走る際に、クレーンの向きを桟橋方向に変えなければならないからだ。通常、クレーンは桟橋と直角方向を向いて作業する。アジテータ車の移動のためにクレーンを動かせば、施工効率は落ちる。拡張すべき部分は仕様を拡大して施工性を確保した。工夫の効果は、単純計算で20日分の手間に相当する。
「仮設を考えるのが好き。施工者の提案が反映されやすいし、仮設が円滑に進めば、全体の工事もうまく運ぶから」。容易ならぬ大現場を動かす大西所長は、こう言って笑う。 躯体工事が本格化するなか、今後は労務管理も重要な課題となる。仮設は工夫による改善の余地が大きい。だが、仕様が固まっている躯体工事では、工期短縮のアイデアを絞り出すことが難しいからだ。
厳しい環境を乗り切るために発注者側も施工者を支援する意気込みを強く持つ。「仙台市とJS、JVが密に協議を行って、資材調達の状況や労務の状況を確認している。調達先などの確保については、私自身もこれまでの仕事で付き合いのあった会社を当たってみたりしている」(高瀬主幹)。
どんな状況下でも、必ず結果を出す。
今真っ盛りのワールドカップで勝ち抜く、強豪チームばりのプロ意識に脱帽です。

 

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持続可能な都市基盤構築


先日アップした日本各地の老朽化したインフラ整備問題。
それに連動する、国内建設案件をOPCでも多数扱っています。
今回は、日経コンストラクション2014年4月28日号に掲載されていた特別対談記事をご紹介したいと思います。
テーマは、「日本のインフラの老朽化対策」。気になるその市場規模についても言及されています。
センサーネットワークで持続可能な都市基盤へ
老朽化が指摘される、道路網や鉄道網などの社会インフラ。対策は急務だ。強靭化に向け、政府は取り組みを本格化。高速道路会社3社が大規模修繕などに向けた計画と、3兆円という費用の模を明らかにするなど、いよいよ市場の立ち上がりも見えてきた。そこで、橋梁を中心とする土木工学に詳しく、政府の戦略的イノベーション創造プログラムディレクターも務める東京大学の藤野陽三教授を招き、老朽インフラの「見える化」に不可欠なセンサーネットワークのひとつである「ダスト・ネットワークス」ソリューションを提供するリニアテクノロジーの小林純一氏を交えて話を聞いた。
―日本ではインフラの老朽化対策が喫緊の課題として指摘されています。持続性の高い都市基盤づくりに向けて、現在の状況を教えてください。
藤野 日本では高度成長期以降に、高速道路網や鉄道網をはじめ多くの構造物や建築物が造られました。ただし、当時は造ること自体が至上命題かつ社会の期待であり、50年あるいは100年も使い続けようという発想は乏しかった。そうやって造られた橋やトンネルなどが年月とともに疲労し、インフラの崩壊という不安がじわじわと私たちの社会に広がってきているのが実情です。
実際に2012年12月には中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し、不幸にも多くの方々が死傷してしまいました。この事故をきっかけとして、インフラの老朽化が進んでいることや、費用をかけたメンテナンスが必要なことが、強く認知されるようになりました。
2013年に高速道路を管理するNEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本の3社は大規模更新および大規模修繕に3兆円か必要と試算し、今後15年をかけて作業を進めていくことを表明しました。ただし、この3社が管理している橋や道路は日本全体のわずか数パーセントにすぎません。一般道路まで含めると数十兆円を超える費用がかかるのではないかとの指摘もあります。
―そうした課題を解決するには、まずはどこから取り組んでいくべきでしょうか。
藤野 ます、傷み具合を知ることです。お医者さんが患者を診察してから処方する薬を決めるのと同じで、例えば橋の修理をするのであれば、まずは橋が今どういう状態にあるのかを、定量的に把握しなければなりません。
小林  米ミネソタ州では、2007年に起きたミシシッピ川橋の崩壊事故を受けて、超音波探傷法などを使って亀裂の発生など劣化の兆候を見つけようという取り組みが行われています。日本でもそうしたセンサー技術やモニタリング技術が重要になってきますね。
藤野 政府の日本再興戦略では、重要インフラの老朽具合の「見える化」が取り組みのひとつに挙げられています。センサー技術や非破壊検査技術を活用した見える化の仕組みを、2020年までに、重要インフラの20%に導入するとしています。ただ、橋ひとつとっても構造や周囲環境、交通量はすべて違います。劣化を判断するために、どの部分をチェックし、どういったデータをどうやって集めればいいのかは非常に難しい問題です。やみくもにセンサーを設置するのでは、費用がかかるばかりです。ですから、まずは、どこにどの程度の傷みがあるかを知り、どのようにインフラをモニタリングしていくべきかを理解する必要があるのです。そのためには、実際にデータを収集・解析するパイロットプロジェクトも立ち上げて、経験を積んでいくことも重要です。
◆センシングはメンテナンスフリーが重要
―今、センサーの話がありましたが、そういった技術をインフラに適用するには何か課題になるとお考えですか。
藤野 ひとつは費用です。そしてもうひとつは、運用の負担を抑えることです。道路や橋の管理者は維持管理の対象が増えてしまうことを嫌がります。センサーを導入すると、そのセンサーそのものも管理対象になります。問題の一例が電池です。多くの場合、センサーやデータを送受信するデバイスは電池で動きます。電池が切れれば動きませんから、電池の寿命が来る前に交換する必要があります。こうした運用の負担が少ない方式でないと受け入れられにくいでしょうね。
小林 高速道路の監視技術の開発を進めている担当の方も、メンテナンスフリーが理想だと言っていますね。そういった要求に応えることは、メーカーの使命だと思います。
実は、私どもが提供するセンサー向けワイヤレスネットワーク技術は、電池だけで7年から10年も動く、超ローパワーが特徴のひとつになっています。買収したダスト・ネットワークス社の「スマート・メッシユ」と呼ぶ技術です。ネットワークの全てのノートが高精度な時計を内蔵し、決められた時刻に送信ノートと受信ノートが同時に目を覚まし、ごく短い時間だけ通信します。通信を終えるとすぐにスリープ状態に入るため、長期間にわたって使い続けられるわけです。
藤野 そういうテクノロジーがあるとは知りませんでした。電池だけで7年以上も動作するというのは素晴らしいと思いますね。既にどこかで使われているのですか?
小林  はい。先ほども触れた海外の橋のモニタリングのデータ収集に使われているほか、企業のプラントや太陽光発電設備の遠隔監視、市内の駐車場の空き状況をスマートフォンからリアルタイムに把握できるロサンゼルス市のサービスなど、延べ100を超える事例があります。現在、日本でもインフラ関連や農業など様々なお客様に紹介しており、高い関心を寄せて頂いています。
藤野 センシングでは信頼性も重要ですが、その点はどうですか?
小林 スマート・メッシュは、電波状況などによって通信できなくなった場合に、即座に代替ルートに切り替える仕組みを備えています。私どもは「三本の矢」と表現しているのですが、万が一通信に失敗した場合は、二の矢、三の矢を放つように受信ノートと周波数を切り替えて通信経路を確保し、再通信を試みます。また、高度な暗号アルゴリズムを実装して、外部からの妨害や傍受が出来ないなど、データの秘匿性にも優れています。こういった工夫により、インフラのモニタリングに求められる高い信頼性を実現しています。
◆民間の技術力や知恵に大きな期待
―センサー技術自体は、以前からありました。老朽化問題も、今に始まったわけではありません。にもかかわらず、インフラの老朽化対策はそれほど進んできていません。今後、加速させるには何が重要になってくるのでしょうか。
藤野 自治体など運営側のインフラ老朽化に対する意識を高めることと、企業の参入を促して活性化させることです。特に道路や橋梁の老朽化対策では重要です。
同じインフラでも、鉄道網の場合、鉄道会社は老朽化対策にもっと積極的です。というのも、電車や列車の運行管理までを担っていますから責任が重く、しかも遅延や運転見合わせは収益に大きく影響を与えるからです。
マーケットがないところに企業は入ってきません。老朽化対策にどの程度のお金が費やされるのかが分かれば、動きは変わってくるでしょう。その意味で、NEXCO3社が15年間で3兆円という修繕費用の規模を明らかにした事はとても大きな意義を持っています。
もうひとつ、企業が参加してパイロットプロジェクトを進め、こうすれば効率的かつ最小限の費用で老朽化対策ができるというベストプラクティスを作っていくことも重要でしょう。
小林 企業側から自治体などに対し、老朽化対策の必要性と、それを効率的に実現できる具体的な手法について、もっと訴えかけていくことも必要でしょうね。ニーズに応える技術を提供し、社会に貢献するのが当社の役割と考え、近々ダスト・コンソーシアムを立ち上げる予定です。そこでは、会員業がお互いの持つ強みを持ち合って、インフラモニタリングのシステムを構築するためのビジネスパートナーやビジネスチャンスの発見が出来る仕組みを作ります。
藤野 いつも申し上げているのですが、インフラはみんなのものです。ですから社会全体で守っていかなければなりません。何兆円もの対策費用を少しでも抑えられるのであれば国としては大いにプラスになるわけで、ぜひ民間の技術力や知恵を貸してもらえればと思っています。
修繕が必要な膨大な道路、橋、ダムなどの国土インフラ。それらをどう効率的にテコ入れし、できるだけ安くメンテナンスするかは人口問題と同じくらい、重要な日本のテーマです。
最近テーマに上がっているパチンコ税も、カジノ構想と抱き合わせの財源確保の一環の流れかも知れません。
いずれにしても、世界に轟く日本の民間先端技術をこういった分野にもどんどん取り入れる流れは、今後より加速しそうですね。

NTTドコモのVoLTEサービス


皆さんもご存知の通り、今携帯業界では、異業種の参入も加速し、サービスの多様化が進んでいます。
大手スーパーイオンの格安スマホサービスの登場は、業界に衝撃を与えました。
今後、更なるサービスの多様化が進むとみられます。
そこで重要になってくるのが、携帯電話及びタブレットに求められる“つながりやすさ”と“快適さ”です。通話のつながりやすさ、音質、通話範囲といった精度を高めるために通信インフラの整備が急速に進んでいます。
ユーザーにとっては、クリアな音質と、スイスイ動くかどうかが、よりキャリア選択のポイントになってくると思われます。
OPCでも、通信モバイル派遣案件を多数扱っていますが、そういった業界のトレンドを理解しておくことは、とても重要です。
今回は3大キャリアの一つでもあるNTTドコモの新サービスで、接続の速さや高音質のメリットがあるVoLTEサービスの記事を、日経パソコン2014年5月26日号からご紹介したいと思います。
◆3GはAMラジオ、VoLTEはFMラジオの音質
NTTドコモは6月下旬から、音声通話にLTEの通信網を使う技術のVoLTE(Voice over LTE)対応サービスを開始すると発表した。VoLTEに対応した製品同士で通話する場合、音声品質が向上する。KDDIも2014年度中のVoLTE対応を表明している。
現在のスマートフォンは、ほとんどが高速通信方のLTEに対応している。とはいえ、LTEの通信網を利用するのはWebページの表示などデータ通信のときだけ。音声通話では、回線交換網をベースとした3Gコア網を使う。VoLTEでは、Webページのデータも音声通話のデータもLTE網を経由して送る。
VoLTEでは3G方式よりも音声品質が向上する。NTTドコモの場合、3G方式では音声周波数帯域が300~3.4kHzだが、VoLTEではコーデック(信号処理)の改良により50~7kHzに広がる。実際に聞き比べた印象では、3G方式はAMラジオ程度であり、VoLTEはFMラジオのような明瞭さだった。
3G方式で発信すると「ププププ……」と鳴って相手が着信するまでに少し待たされる。これは発信時に通信の経路をLTEから3Gに切り替えているためだ。VoLTEではその手間が必要ないため、接続も速くなる。3Gでは着信までの時間が7~8秒だが、VoLTEでは3~4秒となり、約半分の待ち時間でつながる。
3Gでは相手と話しながら地図を見るなど、音声とデータ通信を同時に使う際にはデータ通信も低速な3G接続となっていた。 VoLTEの場合は、音声通話時でも最大150MbpSのLTE通信が利用できる。基地局は混雑時でもVoLTEの音声を優先送信するQoSの機能を備える。
 
ただし、通話相手がVOLTE非対応の既存機種などだと音声品質は従来通りとなる。山間部などLTEの電波が届いていない場合も3G網経由の接続となることがある。
今後どんどん進化する通信業界。快適さを追求するその裏で激化する、インフラ競争。目が離せませんね。

 

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浮かぶゼネコン 沈むゼネコン


アベノミクスによって、少しづつ景気回復の兆しが見えてきました。
高級宝石が売れ始めたり、最近は、カニ弁当が売れているそうです(笑)
そんな中、公共工事への投資回復が注目されています。
一部では、バブルが発生しているようですが、手放しに喜べる状況だけではないようです。
そのポイントは、“採算割れ”
当然ですが、企業活動の目的は、“利益追求”です。利益を生まない活動は本来するべきではありません。
そんな気になる状況にフォーカスした記事を、ご紹介します。
浮かぶゼネコン 沈むゼネコン
公共工事が増えるからといって、一概にゼネコン業界が潤うという図式は成り立たない。むしろコスト高によって、大赤字の危機に瀕するゼネコンも現れ始めた。
◆東高西低」「土高建低」が顕著 中堅ゼネコンの天国と地獄
国土強靭化銘柄として注目されることが増えたゼネコン各社だが、その得意分野などによって明暗がはっきりとしてきた。大手30社のランキングで、ゼネコン各社の実力を比べてみた。
東日本大震災の復旧・復興工事でゼネコン業界は息を吹き返す。そう期待されて2年ほどが事の急増に伴う労務費や資材費の上昇によって、コス上局に見舞われ、一気に収支が悪化したのだ。
1月10日、そんなゼネコンの1社である浅沼組が業績予想の下方修正を発表した。当期損失50億円に沈み、2期連続の赤字決算となる見通しで、合わせて150人の希望退職募集や、創業家出身の2人の取締役退任など、リストラ策も打ち出した。
浅沼組は大阪市に本社を構え、マンションエ事などで実績のある中堅ゼネコンだが、その得意ジャンルが裏目に出た格好だ。
「完成まで1円も支払いをしない、何か瑕疵があれば全面的にゼネコンが責任を負うなど、あまりにもひどい契約が多すぎる」―。
 
あるゼネコンのトップが嘆くように、民間建築工事の中でも、特にマンション工事は激しいダンピング合戦が繰り広げられており、赤字工事も珍しくない。
しかし、中堅ゼネコンで建築事業が主体となれば、その儲かりにくいマンション工事で糊口を凌ぐよりほかないのが実情で、浅沼組も例外ではない。さらに浅沼組は、あるマンションプロジェクトで痛い失敗もしていた。
◆基礎部分の欠陥発覚などマンション工事で疲弊
都会の真ん中にあるオアシスとして、おしゃれな店舗が集まる周辺地域と合わせて人気スポットとなっている靭公園(大阪市西区)。その靭公園と道路を挟んですぐの好立地に建つはずだったマンションがある。
大和ハウス工業の「プレミスト靭公園アイシア」と名付けられたそのマンションプロジェクトは、2010年8月に着工し、12年3月には完成する予定だったが、いまだに基礎がむき出しのまま、放置されている(左写真)。
基礎部分の欠陥工事が発覚して分譲中止となり、浅沼組が大和ハウスから買い取らざるを得なくなった物件なのだ。当然ながら、かなりの損失が出たと推定される。
浅沼組だけでなく、戸田建設や安藤建設、銭高組など、建築が得意な中堅ゼネコンはいずれも赤字転落となっている。
昨年6月にハザマとの合併を発表した安藤建設は、「建築の利益率悪化が陥落の理由」との見方がもっぱらだ。一方のハザマは土木に強い。
あるメガバンク関係者は「これからは安藤-ハザマタイプの再編を目指さなければ、建築主体のゼネコンは生き残りが難しい」と話す。だが、当のゼネコン業界は「安藤-ハザマはレアケース」とし、「再編にはメリットが少ない」と冷ややかで、再編が進みそうな雰囲気はまったくない。
今後もしばらくは、土木工事が増える一方で、コスト高が進むという構図に変化は見られそうになく、ますます明暗がくっきりと分かれそうだ。
表3‐1は、そうした環境下で「浮かぶゼネコン」と「沈むゼネコン」をランキングにしたものだ。
指標は四つ。①国土交通省発注の土木工事における元請け(スポンサー)としての受注実績、②受注高に占める土木比率、⑤完成工事総利益率、そして④本社所在地の4項目を点数化、点数の高いほうから並べた。
1位の五洋建設や3位の東洋建設、そして6位の東亜建設工業はいずれも港湾工事に強いマリコンだ。会社数が少ないため、過当競争にならないという業界環境があり、上位にランクインした。
2位の鹿島、4位の大成建設など、スーパーゼネコンも順当に上位に来ている。ただし、スーパー5社の中で唯一、建築主体の竹中工務店は下位に沈んだ。
問題の中堅ゼネコンは、いずれも厳しいが、前述した浅沼組が最下位になったのを始め、土木と建築どちらが主体かで分かれた形となった。
【ゼネコン30社ランキング】
※社名の次に3年合計受注額(百万円)、土木比率、完成工事純利益率を表示
1、五洋建設/58,302/52,2%/7,5%
2、鹿島/61,632/27,7%/7,1%
3、東洋建設/46,914/72,8%/6,9%
4、大成建設/49,393/22,7%/8,9%
5、清水建設/54,387/20,7%/5,7%
6、東亜建設工業/35,008/64,8%/8,5%
6、ハザマ/39,935/49,3%/8,4%
8、前田建設工業/40,845/36,4%/7,4%
9、大林組/28,895/23,3%/8,4%
10、東鉄工業/0/0/13,0%
11、戸田建設/30,183%/17,9%/4,0%
11、西松建設/18,746/49,2%/4,6%
13、熊谷組/20,600/35,1%/4,7%
14、三井住友建設/17,676/34,2%/5,2%
15、鉄建/8,660/47,2%/5,1%
16、飛島建設/1,859/61,9%/5,3%
17、フジタ/9,018/26,5%/7,1%
18、ピーエス三菱/3,401/43,2%/6,3%
19、大豊建設/4,151/46,2%/4,4%
20、大鉄工業/0/63,3%/9,6%
20、太平工業/0/9,3%/12,1%
22、鴻池組/12,394/33,7%/6,3%
22、奥村組/12,296/34,7%/5,7%
24、東急建設/3,733/19,2%/5,2%
25、大本組/4,469/33,3%/7,3%
26、長谷工コーポレーション/0/1,0%/7,8%
27、安藤建設/0/4,7%/5,1%
28、銭高組/5,848/22,9%/4,0%
29、竹中工務店/0/3,9%/6,9%
30、浅沼組/808/15,5%/▲1,0%
今後しばらく業界を取り巻く環境は、変わりそうにない。となれば、さらに格差が広がるばかりか、破綻に追い込まれてしまうゼネコンが出るかも知れない。

 

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◆国土強靭化のボトルネック ゼネコン襲う人手・資材不足
東日本大震災の発生からまもなく2年。被災3県では復旧・復興工事が続いているが、人手や資材の不足とコスト高に悩まされる日々だ。国土強靭化計画が進めば、全国的な問題となる。
生コンクリートは必要量のおよそ半分、盛土に至っては、必要量の7割以上が不足するのではないか―。宮城県の建設業界では今、こんな予測が流れている。
公共工事がピーク時の3分の1にまで落ち込み、リストラによって建設業従事者も激減した中で起きた東日本大震災。作業員が足りないのは当然だが、それ以外にも、重機やダンプカー、生コンなどの設備プラントに至るまで、ありとあらゆるものが不足している。
被災地で最も復興が進んでいる仙台地域はそうした状態がいち早く表面化しているのだ。
生コンの場合、宮城県内での月間生産能力は約42万立方メートル。ミキサー車で撹絆しながら運搬しなければならないから、遠方から持ってくることはできない。
ところが、原料となる砕石や砂が不足している。これらは県外から運ぶことはできるものの、大型船に対応できる港湾が不足しているため、十分な量を調達できないという問題が浮上している。
その結果、現在供給できている生コンの量は27万立方メートル弱。生コンが手に入らず、工事が遅れることで毎月、生コン必要量がさらに積み上がる。「これらを足し合わせると、おそらく半分くらいが不足しているという計算になる」(千葉嘉春・宮城県建設業協会専務理事)という。
◆人材確保に大わらわ 不調工事は相変わらず
これから問題が本格化すると恐れられているのは盛土だ。高台移転などに使われるもので、現在のところ3900万立方メートルの必要量に対して、900万立方メートルほどしか確保できない見通しだ。
さらに、沿岸地の防風林の下にも敷かれることが決まっているが、これは今のところ計算に含まれていないという。宮城県の海岸線に沿って盛土をするというのだから、おそらく気の遠くなるような量なのだろう。
 
不足している資材を代替品で賄える工事は入札が進んでいる。だが、代替品がない工事も多く、そうした入札は多くが不調(入札参加者がI社もないこと)になるという。
実際、宮城県における2012年4~9月の不調発生率は33%11年度は小規模工事を中心に不調が発生していたが、12年度は1億円以上の大規模工事にまで広がっている。
「県外などから来たゼネコンはこうした事情を知らないのか、地元が敬遠する工事に入札しているケースもある」というが、安易に飛びつけば大やけどしかねない。
資材に加えて、人手不足も深刻化している。
復興によって工事量は3倍に増えたが、人を3倍に増やすのは難しい。「ぎつい、汚い、危険」の3Kである上に、賃金も安い建設業は人気がないからだ。
純に言えば、必要人数の3単分の2程度を県外から連れてこなければならず、現場は大わらわだ。
 
ホテルだけでは足りず、民家を借り上げてリフォームし作業員宿舎に充てるなど、あの手この手で宿泊施設の確保に腐心するが、空前の売り手市場であるため、アフターフォローにもカネがかかる。
 
「あそこのメシはまずい」などといった文句が出れば、次の工事で人を集めるのが難しくなる。もちろん、そうした対応にもカネがかかる。
◆全国に普及するコスト高 大赤字転落の元凶に
こうした状況は、被災地のみならず、全国に波及している。
このところ、東京・大手町の再開発現場などでも人手不足で工事が遅れがちだ。納期1ヵ月前になるとカネに糸目をつけずに人をかき集めて、突貫工事で何とか仕上げるというような異常事態まで見られるようになっている。
労務費も高騰している。例え労ば型枠工の場合、「労賃は1.5倍くらいに値上がりしているが、ゼネコンの発注単価(契約時の見積もりに入る労街づくり計画の策定と事業推進集団移転・区画整理など(※実線は現在の取り組み、点線は今後予定されている取り組み務費)はこの3~4年で3分の2ほどに下がったままで、収益を圧迫している」。建設業コンサルティングを手がけるフューチャーソソリューションズの勘坂剛正社長はこう話す。
労務費や資材費は上がる一方だが、工事費への反映は道半ばだ。
というのも、「これまでは、コストが下がればゼネコンはこっそり儲けに計上してきたはず。なぜ値上げだけをのまねばならないのか」と発注者が反発しているからだ。
今後、国土強靭化で公共工事が増えれば増えるほど、ますますコス上局が進んでいき、ゼネコン各社は苦しむことになる。
表3-2にあるように、スーパーゼネコンであってもコスト高の影響はじわじわと表れており、特に建築部門は採算が確実に悪化している会社がほとんどだ。
さらに建築主体の中堅ゼネコンの場合、安値受注が常態化していたところにコスト高が襲ってきたため、大赤字に転落する会社が後を絶たない。
「極端な安値受注をしていた会社下請けや孫請けが逃げ出した廃業に追い込まれたりして、系列が崩れてしまっている」(あるゼネコン社長)から、かつてのように「多少安いけれど、長いお付き合いだから仕事を受ける」といがれき処理から地盤沈下の解消、高台移転に至るまで、被災地の工事は膨大な量。大石モノも不足しているつた人間関係が希薄になっている。
つまり、下請けなどを泣かして儲けを出すことが難しくなっており、これまで以上に市場価格の高騰がダイレクトに業績に反映してしまうのだ。
高い技術力を持つスーパーゼネコンと、国土強靭化などで恩恵を受けるであろう地場ゼネコンは仕事量を確保できるが、そのどちらでもない中堅ゼネコンは、仕事量は増えず、コスト高だけが襲ってくる。
急激な工事量増加がむしろ、命取りになるゼネコンも出てくるだろう。
◆工事急増で現場は大混乱 行政と業界に必要な意識改革
急激な工事量増加を吸収するためには、発注の仕組みや見積もりのやり方を効率的にする必要がある。行政やゼネコン業界の意識改革は進むだろうか。
「値上げをお願いしても、前例がないから、と一蹴されてしまう。」
大手ゼネコン幹部が憤慨するのは、いわゆる官庁工事での担当者の融通の利かなさだ。
これだけの労務費や資材費の高騰がいわれているにもかかわらず、頑として値上げに応じない姿勢は、民間発注者の比ではないという。国土交通省もヒアリングに乗り出したほどで、今後、どの程度正されるかが注目される。
被災地での復興工事に関しては、労務費や資材費の上昇を、後から上乗せできる体制が整っているとはされているものの、被災地のあるゼネコン社長は「本当に応じてくれるかどうか不透明」と指摘し、「事務作業も膨大に増えた」とこぼす。
例えば、これまで発生しなかった県外作業員の宿泊費用や食費、現場までの移動費などは、いちいち伝票を起こさなければならず、作業量は増える一方だ。
 
だとすれば、受ける側の県に膨大な量の伝票が集まり、混乱するのは想像に難くない。県のチェック作業が遅れれば、その分、支払いが遅れ、経営を圧迫する。
「県外からの人の調達が必要なことはわかりきっていた。その分を最初から見積もりに盛り込む体制にしてくれたらいいのだが」とこの社長はぼやく。
払う、払わないでもめた場合も気がかりだという。「心証が悪くなれば、いずれ平常時に戻ったときに、受注しづらくなるから」(社長)だ。
また、設計労務単価(見積時に用いる単価)を決める仕組みに対しても不満は多い。過去の入札における安値を基準に単価を決めてきたからだ。
結果的にダンピングが進み、地方では単価が4割以上下がったところも多い。
図3‐4にあるように、就業者の減少は続いてきた。仕事量の減少だけでなく、急激な賃金の減少も、建設業離れを加速させたのだ。「最低限、労働者が食えるくらいの賃金水準で労務単価をつくってもらえないものか」(同)。
◆被災地で進むCM方式 脱請負の切り札なるか
硬直化した発注システムを変えるべく、新しい取り組みも始まっている。
例えば被災地で国が導入したCM(コンストラクションーマネメント)方式。図3‐5にあるように、発注者が担うべき業務の一部を民間のゼネコンなどに委託することで、復興事業を早く進めようというものだ。
建設業界の人手不足が叫ばれているが、実は復興による急な工事量増加で人手不足に陥っているのは行政側も同じなのだ。
宮城県女川町や東松島市、岩手県陸前高田市などでの復興街づくり計画では、都市再生機構(UR)の協力のもと、CM方式での発注が決まっている。また、宮城県気仙沼市の漁港でも採用される見通しとなるなど、じわじわと広がりを見せている。
ある国交省幹部は「日本のゼネコンはいまだに請負業にばかり腐心するが、海外では大手ゼネコンはCM方式のようなフィービジネスが一般的。今後は全国でCM方式を増やして行きたい」と意欲を見せる。
つまり、被災地でのCM方式導入は、特に大手ゼネコンの意識改革を促したい国交省の思惑もあるのだ。
もっともCM方式には「ゼネコンへの丸投げとなる」との懸念の声も出ており、きちんとした監視体制を確立・運用できるかどうかなど、課題は少なくない。
しかし、急激に進んだ人手不足と、未曾有の大災害や政権交代などによって生まれた莫大な建設需要によるミスマッチを乗り切るためには、さまざまな受発注の仕組みを効率化することが必要不可欠となる。
談合がなくなり、一転してダンピングの泥沼であえいできたゼネコン業界。適正価格”や業務効率化を追求する取り組みはまだ道半ばだ。
行政側の意識改革は当然だが、ゼネコン自身も稼ぎ方に関する考え方を改め、収益構造を変えなければ生き残りは難しい。
◆被災地で賃金ピンハネ疑惑!下請けが抱える意外な事情
「元請けは高い労務費を支払っているのに、労働者はさほど高い賃金を受け取っていない」-。
昨年ごろから、被災地を中心にこんな現象が話題になっている。
途中で誰かがピンハネしているに違いない。事態を重く見た国交省も調査に乗り出しているというが、そこには意外な事情があるようなのだ。
背景には、突然降って湧いた公共工事によって、現場ごとの労務費の単価にかなりの開きが出ていることがある。
例えばガードマン。これまでは元請けと下請けとの問で、1日当たり8000円で契約していた。それが、人手不足が深刻になるにつれ、今では1万8000円もの高値で契約されることも珍しくない。
現場によって日給に2倍以上もの開きがあるわけだが、仕事はまったく同じ。賃金に差をつけては、大問題になることが目に見えている。
そこで、元請けから受け取る労賃が上がっているにもかかわらず、以前と同じ賃金を労働者に払っているのだ。
もっとも、社長の賃金を削って何とか会社を持たせていたような下請けも少なくないことから、仕方なくやっているとはいえ、このピンハネでようやく「メシを食える」と喜ぶ声も聞こえてくる。
一方、一番割を食っているのは、元請けのゼネコンだ。利益を圧迫されているにもかかわらず、末端の労働者に賃金アップ分か渡らないのであれば、いつまでたっても労働者を集めることにつながらないためだ。
ただでさえ3Kと敬遠される建設業労働者。特に若者は「コンビニで働いているほうが楽でいい」などと言って建設業の門を叩かないという。人手不足問題を根本的に解決するためには、業界を挙げた取り組みが必要だろう。

 

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笹子トンネル事故が示唆する老朽化という課題


前回掲載した「南海トラフ巨大地震」のシミュレーションによる、国土強化のための予算ニーズ。その背景には、当然東北大震災の甚大な被害経験があります。
想定外の大型地震の発生による原子力発電所の崩壊は、建物だけでなく、地域社会をも崩壊させ、心の傷に悩まされている人も多数います。
一方地震対策だけでなく、老朽化対策も重要な転機に差し掛かっているのが、今の日本の状況です。
2012年12月2日、山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで発生した天井板のコンクリート板落下事故。その区間は130メートルにも渡り、走行中の車複数台が巻き込まれ、死傷者も出ました。
高度成長期に大量に整備された日本国中に張り巡らされた道路、橋などのインフラ。それらの耐用年数に、限界がきている可能性があります。
景気対策としてのバラマキではなく、国民も納得できる税金の使い方が実現するのでしょうか。引き続き、週刊ダイヤモンドの興味深い特集をご紹介します。
『朽ちたインフラ』という飯の種
年を重ねるとともに病気がちになるのは、人間に限った話ではない。インフラも同様だ。
昨年の笹子トンネル事故を受けて、ゼネコンにとっての新たな飯の種が生まれた。
◆笹子トンネル事故に端を発し、盛り上がるゼネコンの“皮算用”
「構造物の老朽化や劣化が顕在化している」-。
NEXCO東日本、中日本、西日本の高速道路会社3社が、共同設置した技術検討委員会。その「設立趣旨」で、危機感を表明してから1ヵ月もたたずして、大惨事が発生した。
昨年12月に中央自動車道で起きた笹子トンネル事故だ。
上り線のトンネル内につり金具で固定されていたコンクリート製の天井板が、約130メートルにわたって次々と崩落。1枚当たり1.2~1.4トンのもの塊が、走行中の車3台を押しつぶし、9人の死者を出した。
「経年劣化も原因として考えられる」。NEXCO中日本の吉川良一専務が事故後の会見で、トンネル設備の老朽化に言及した通り、その後の調査で、上り線だけで1000ヵ所以上の不具合が発見された。
図2-1は、笹子トンネルと同じ構造を持つトンネルのうち、主に完成から30年以上経過しているか、もしくは天井板の総延長が100メートル以上のトンネルをまとめたものだ。
国土交通省は、これらを含む計48力所のトンネルについて、緊急点検を指示。また、すでに天井板の撤去工事を行った笹子トンネルと首都高速道路羽田トンネルの2ヵ所以外にも「撤去を検討しているトンネルは複数ある」と国交省は明かす。
ゼネコンにとって、パート1で見た“ミッシングリンク”と呼ばれる高速道路の未完成区間の事業推進とともに、笹子トンネルのような老朽化したインフラの更新は、過去に枯渇したはずの“鉱脈”が突如、息を吹き返したに等しい。
実際、ある地方のゼネコン首脳は、早くも皮算用だ。
「ミッシングリンクの事業など、大規模な新規事業は大手ゼネコンの独壇場だが、老朽化対策であれば、われわれにも十分お鉢が回ってくる」
むしろ、「人命最優先」というお墨付きを得た今、カネに糸目を付けないだけでなく、時の政権に左右されがちな新規事業と比べて、安定したビジネスと目されているのだという。
しかも、それはトンネルや高速道路にとどまらない。全国津々浦々に広がる大小無数の橋梁、港湾、そして学校といった公共施設も対象となる。
その慈雨を最も浴びるのは、他でもないゼネコンなのだ。
◆首都高で進む老朽化に高笑いするゼネコン
老いる日本のインフラー。そのシンボル的な存在が、初開通(京橋~芝浦間)から昨年12月20日に半世紀の節目を迎えた、首都圏を蜘蛛の巣状に走る首都高速道路(首都高)だ。
1月28日に聞かれた国土交通省の作業部会。首都高速道路会社の菅原秀夫社長は、老朽化した道路の更新(造り替え)や修繕費用を、通行料金のみで賄う場合、10%程度の値上げが必要だと訴えた。
その試算の土台となったのが、首都高の大規模更新を検討していた調査研究委員会が、1月15日にまとめた最終報告書だ。報告書では、首都高に必要な大規模更新費用と修繕費用の合計額を、7900億~9100億円とはじき出したのだ。
どれほど首都高は老いているのだろうか。まずは、図2-2を参照してほしい。
病状は、他の主な高速道路より圧倒的に深刻だ。総延長約300キロメートルのうち、開通から40年以上経過した路線が、最長でほぼ100キロメートル。同30年以上の路線を含めれば総延長の5割近くを占める。逆に、開通から9年以下の若い路線はわずか1割にとどまる。
老朽化に伴い、当然、損傷の数もうなぎ上りだ。首都高では、点検などで発見された損傷を「緊急対応が必要」なAランクから、「損傷なし」のDランクまで4段階で記録している。
このうち、緊急対応こそ必要でないものの「計画的な補修が必要」と判断されたBランク損傷のうち、いまだ補修されていない箇所が、2002年度の3万5700ヵ所から09年度には9万6600ヵ所と約2.7倍に急増している(図2-3参照)。
10~11年にそれぞれ年間547億円もの維持・補修費を投入するなど、毎年のように500億円前後のカネが道路保全に割かれているにもかかわらず、“放置”されたままの損傷が、積み重なっているのだ。
先の最終報告書では、大規模更新・修繕を行わない場合、今後100年間にかかる補修費は、合計2兆円と見積もる。しかし、大規模更新・修繕を行えば、その費用を合わせても合計1兆4500億円で安上がりと結論付ける。
首都高速道路会社は今後、05年の民営化の際に50年までとされた債務の償還期限の延長に加え、国や自治体に財源の支援を求めていく方針だ。
同社の担当者は言う。「何よりもまず、財源をどこから捻出するのか。国や東京都などと検討していくことになる」。
◆“カネのなる木”だから「撤去しても儲かる」
一方、東京都の新しい知事に就任した猪瀬直樹氏は、1月18日の就任会見で、首都高の再生に意欲を見せた。
「当然、老朽化対策はやらないといけない。大事なことは、首都高1号線に大型トレーラーが入ってこないような交通体系を考えながら、老朽化対策を急ぐことだ」
官民の思惑が錯綜する首都高の若返り議論の陰で、ほくそ笑んでいるのは、他でもないゼネコンだ。
「もちろん大規模な更新が決まれば、大きな天の恵みになる」と、大手ゼネコン幹部は皮肉な笑みを浮かべる。その上で、「そもそも首都高自体が、その役目を終えていると思う。いっそのこと、すべて撤去してしまえばいい」と持論を展開した。
別の大手ゼネコン幹部も、同様の意見だ。
「物流は、東京外郭環状道路さえあれば、現在とほぼ遜色ないレベルで機能する。首都高があるから、一般の車が流れ込んで渋滞も起きる。あれほどコストパフォーマンスの悪い高速道路はない」
なぜ、ゼネコンの関係者の間で“カネのなる木”であるはずの首都高を切り倒したいという発想が生まれるのか?
「首都高すべてを撤去するとなれば、それこそ、莫大な工事費用が発生する。更新しようが、撤去しようが、どっちに転んでもわれわれは閏う」(前出の幹部)―。
◆“バブルの塔”崩壊の危機!?都庁の設備更新費に780億円
「バブルの塔」とやゆされながらも、1569億円の巨費を投じて建設された東京都庁舎。
1991年の開庁から20年余りを経て、来年、第1庁舎および第2庁舎の空調や電気、給排水菅などを一新する大規模な設備更新工事が着手される。都は2月中にも、具体的な更新工事計画をまとめる方針だ。
背景は設備の老朽化。現在、1000基に及ぶ空調の大半は耐用年数を超え、トイレの水道管の破裂や絶え間ない雨漏りといった外観からは想像もできないトラブルがこの数年、都庁職員の頭痛の種となっている。
工事が完了する2018年度までの総工費は、概算で780億円と建設費の半分。このうち、本格改修に先立って09年度から始まった都議会議事堂やエレベーターなど昇降機の設備工事において、すでに200億円以上が費やされた。昇降機の設備更新だけで80億円かかったという。
そもそも現在の都庁舎は、東京の新たな“顔”になるよう、当時の鈴木俊一都知事と関係の深い建築家、丹下健三氏の案がコンペを経て採用された。ポストモダンのデザインが評価される一方、「修繕や維持コストを無視したものだった」(都幹部)。
複雑な構造から、雨漏りの原因とされる外壁の目地材の総延長は148キロメートルに及び、通常のビルならば1台で済む作業用ゴンドラが、第1庁舎だけで9台も設置されている。
財源について、都は都有地売却などで賄い、「極力、一般財源を投入しない」とする。旧約聖書のバベルの塔のように、東京都をつかさどる納税者の不興を買わないことを祈ろう。

 

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建設業界は、今バブル!?


OPCでは、多数の建設業界の案件を扱っています。
建設業界の動向と案件は密接にリンクしているため、日々幅広く情報収集しています。
今回はアベノミクスで沸き立つ建設業界のリアルな現状をレポートした、週刊ダイヤモンドの2013年2月9日号の特集をご紹介したいと思います。
タイトルはズバリ、『公共工事バブルで踊るゼネコン』です。なかなか刺激的ですね~(笑)。
印象的だったのは、国土交通大臣太田昭宏氏のインタビュー記事です。太田氏の経歴を見ると、京都大学工学部土木工学科の出身なんですね。素晴らしい適材適所です。“どんどん新しいインフラを造るのではなく、基本的には老朽化対策で国土の長寿化を図る”“ゼネコン側もこれをチャンスと捉え、社員や作業員の給料を適正にし、若い人が継続的に入ってくるよう考えてほしい”という言葉が印象的でした。
公共工事バブルで踊るゼネコン
政権交代で公共工事バブル到来 PART①
補正と当初予算合わせて約11兆円の公共事業が決定し、建設業界は沸いている。それもそのはず、10年余りもの間、公共工事は減り続け、苦しめられてきたからだ。
「うれしい悲鳴とはこのことや。関西の業界内じゃ、“和歌山バブル”って呼んでるわ」(地元ゼネコン幹部)
紀伊半島の南西、和歌山県の南部に位置し、風光明媚な海岸線で知られる田辺市。1市4町村が合併しても人口わずか8万人余りの小さな街が、突然にぎわい始めた。
市北部の山沿いに立ち並ぶ巨大な橋脚(写真)。これは紀伊半島を貫く近畿自動車道紀勢線の建設現場で、朝早くから多くのダンプカーが砂煙を巻き上げながら列を成して走っている。
「紀伊半島をグルッとつなげる!!」
和歌山3区選出の自民党議員で、建設族のドンとも呼ばれる二階俊博・元経済産業相は、昨年末の総選挙でそう繰り返した。
バブルで浮かぶゼネコンベスト10
1、五洋建設
2、鹿島
3、東洋建設
4、大成建設
5、清水建設
6、東亜建設工業
7、ハザマ
8、前田建設工業
9、大林組
10、東建工業
何をつなげるのか―民主党時代、無駄な公共事業のシンボルとされてきた高速道路だ。
現在、近畿自動車道紀勢線は、南紀田辺インター(田辺市)~紀勢大内山インター(三重県大紀町)間が、未開通、いわゆるミッシングリンクとなっている。それを、すべてつないで開通させようというわけだ。
これは、巨大な事業だ。例えば南紀田辺~すさみ間は、2015年度の供用開始を目指し、急ピッチで工事が進められているが、山深い土地だけにわずか総延長38キロメートルの区間に造るトンネルは22本。総事業費は、1970億円にも上る。
それだけではない。ひそかに車線拡張の動きも進む。民主党政権下の09年に全面凍結されたはずの御坊~南紀田辺の4車線化事業。その復活を見込んで、測量工事が進められているというのだ。
事業が相次いで進む背景について国土交通省は、「東南海・南海地震による津波発生時の代替ルートなどの役割が期待されている」と説明する。

 

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◆国の地震被害想定により庁舎の高台移転まで
和歌山県内では、「コンクリートから人へ」を掲げ、公共事業の削減を進めた民主党政権の3年間で、約300社の建設業者が姿を消した。
だからこそ、「自民党は『人からコンクリートヘ』をやってくれるはず」と、大物議員の“約束”に地元建設業者は大きな期待を寄せていた。そして昨年末の総選挙で自民党が圧勝。業者たちのボルテージが一気に上がったのは言うまでもない。
そもそも和歌山県では、11年9月、紀伊半島を中心に死者、行方不明者、合わせて100人近い被害者を出した台風12号を受け、復興費用として600億円の特別予算を組んでインフラ整備が行われていた。
また、15年に開催予定の国民体育大会に向け、ハコモノ建設も急ピッチで進められていた。そうしたところへ、ミッシングリンク解消事業である。ゼネコン幹部の言葉通り、バブルそのものだ。
そんなバブルをさらに膨らませる、巨額の公共事業が発生する可能性も高まっている。
東海・東南海・南海地震の同時発生を想定した既存の津波ハザードマップで被害軽微とされてきた沿岸部の各自治体が、昨年8月末に内閣府が発表した「南海トラフ巨大地震」の被害想定では大津波に巻き込まれるとされてしまったからだ。
例えば、田辺市では市役所が浸水する可能性は少ないとされていた。ところが、内閣府の想定では、市役所どころか、学校など指定避難施設の多くが津波に呑み込まれることが明らかになったのだ(図1-1参照)。
それまでは、築40年と老朽化した市役所について、耐震改修工事で対応する方針だったが、高台移転も視野に入れざるを得なくなった。市の試算では、現在地での耐震改修なら約20億円で済むのに対し、移転の上、新築するとなると、用地取得費用も含め約69億円と3倍以上に膨らむという。
田辺市以外も同様で、各自治体が高台移転を決めれば、さらに多くの仕事がゼネコンや建設業者に舞い込むことになる。

 

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◆社員5人未満の業者がダンプを買いそろえる
こうした状況は、建設族のドンのお膝元だけに起きるわけではない。今後、全国各地で同様の公共工事バブルが巻き起きる。
経済の再生を「一丁目一番地」と位置付ける安倍晋三政権が、年明け早々、事業規模20兆2000億円の「緊急経済対策」を決定したからだ。
最大の特徴は、公共事業だ。東日本大震災の復興事業に加え、天井板が崩落した笹子トンネル事故を受けたインフラの老朽化対策など、公共事業費に3兆8000億円を計上。今回特別に国が面倒を見る地方公共団体の分まで含めると5兆5000億円まで膨らむ。
これは12年度当初予算の公共事業費4兆6000億円を上回る。つまり、わずか3ヵ月問で、1年分の公共事業が一気に降ってくるわけだ。
おまけに、13年度の当初予算でも、5兆2853億円の公共事業費が計上され、学校の耐震化など国交省以外の事業も含めると合わせて約11兆円という大型の財政出動となった。
そもそも昨年末の総選挙の際、自民党は「10年で200兆円規模の公共事業」と訴えていたのだから、ゼネコン関係者の期待は否が応でも膨らんでいた。
図1-2をご覧いただきたい。これは、公共工事と建設業界を取り巻く環境をまとめたものだ。
02年度に小泉純一郎政権で10%以上削減して以来、公共事業は無駄の象徴として、リーマンショックや東日本大震災の後を除いて削減され続けてきた。
1998年度に14兆9000億円だった公共事業関係費が、11年度には6兆2000億円と半分以下にまで減少していたほどだ。
そのあおりを受け、中小の建設業者を中心に倒産が相次いだ。たとえ生き残れたとしても、リストラを実施するなど、ひたすら身を縮めて「どうにか生きているだけの状態」(建設業者幹部)だった。そうした厳しい環境から、いきなり目の前に大量の仕事をぶら下げられた建設業者は、「まさに狂喜乱舞している」(同)。
社員が5人に満たないある建設業者は、周りから借金をしてショベルカーとダンプカーを買いそろえた。また別の業者は、リストラなどで自らがクビにした技術者に頭を下げ、復職を求めている。
一方、地方自治体の首長や議員たちは毎日、国交省に集結し、事業を獲得しようと精力的に担当者回りをこなす。中には、国交省の廊下で円陣を組み「ガンバロー」と拳を上げる集団まで。民主党政権時代には見られなかった光景だ。
だが、こうしたバブルが思わぬ事態も生んでいる。
和歌山県のゼネコン幹部は、「仕事は山ほどあるが、人手とモノが足りない。業者間では技術者だけでなく、重機やダンプカーの奪い合いまで起きている」と明かす。
そこで特集では、13年ぶりに到来した公共工事バブルが、ゼネコンに与える影響やその将来について多角的に分析した。これまで苦しめられ続けてきたゼネコンは、本当に復活することができるのだろうか―。

 

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◆緊急性に鑑みて優先順位を決め、命を守る防災、減災を進める/太田昭宏・国土交通大臣
―2012年度補正予算で約5兆円の公共事業費を計上した。
日本全国のインフラは、第3ステージに入っている。第1ステージは戦後復興に伴う産業基盤整備、第2ステージは1975年ごろからの生活インフラ整備だった。
そして今は、東日本大震災で国土の脆弱さが浮き彫りになり、今後も南海トラフの巨大地震や、首都直下型地震が予想されている。しかも、東京オリンピック前に整備されたインフラは、50年が経過しようとしており老朽化も進む。いわば「国土のメンテナンス」を進めなければならないステージで、命を守るための「防災」「減災』を図るインフラ整備が必要だと考え、計上した。
―これまでの公共事業費1年分に相当する額となっている
もちろん限られた財源の中で優先順位をつけていくつもりで、決して青天井ではないし、バラマキ型でもない。現場から積み上げてきたものを吟味し、緊急性の高いものから手がけていく。その際には、中央防災会議の議論などを参考にしながら、地震や津波の恐れが大きい地域から予算を優先的に配分していく。
また、未整備のために高速道路が途切れているミッシングリンク対策も重要。東日本大震災で痛感したが、避難のための代替手段の選択肢を広げなければならない。本来よりも余地や余裕を設ける「リダンダンシー」の概念だ。
そうした事業を、地方でやっていただく。今回の補正では、特例的に地方負担分を国で肩代わりする交付金をつくるほか、別の交付金で自治体のインフラ補修を支援するなど手当てしている。
―安倍政権が打ち出す「国土強靭化』の考えに基づけば、膨大な費用をつぎ込んでいかなくてはならない。
そうは考えていない。どんどん新しいインフラを造るのではなく、基本的には老朽化対策で国土の長寿化を図る。そうすれば逆に費用も少なくて済む。しかも今後5~10年、いや、それ以上にやり続けていかなければならない。今回の補正は経済対策の一環でもあるため確かに公共事業費は大きいが、13年度本予算などは緩やかな上昇程度にしていくつもりだ。
―大震災の復興事業で、人件費や資材費などのコストが上がってしまい、苦労しているゼネコンも多い。
確かに、公共工事の減少によって限界以上にダイエットしているところに、腹いっぱい詰め込んでも消化不良になるだろう。
上がったコストを発注の際に反映させるなど努力しているが、最大の問題は人手不足だと考える。中でも、若い労働者不足が顕著だ。そういう意味では構造を変えていかなければならず、公共工事が増える今からのタイミングが最もよい。
国土交通省としても、現場に張り付けなければならない技術者の条件を緩和したり、入札の膨大な書類を簡便化するなど、人手不足でも対応できるような手法を取り入れていく考えだ。
また、複数の工事を束にしてロットを大きくして発注、ゼネコンに運営を任せる方法を採用するなど、さまざまな工夫を施し、公共工事のあり方も見直している。
ゼネコン側もしばらくは落ち着くだろうから、これをチャンスと捉え社員や作業員の給料を適正にし、若い人が継続的に入ってくるよう考えてほしい。

 

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◆公共投資に200兆円は必要。日本の災害対策意識は低すぎる/藤井聡・内閣官房参与
―自民党が掲げる「国土強靭化」のベースとなる考え方を示してきた。
2010年に出版した拙著『公共事業が日本を救う』でも、巨大地震が必ず起きること、そして道路やトンネル、橋などのインフラが老朽化し危険なことを指摘してきた。
日本は米国や欧州と比べても、台風や地震などの災害が非常に多い。また、これだけ国土が狭いから、大草原にまっすぐ道路を造ることができる国と比べると、工事にかかる費用は大きくなる。
こうしたことを考えると、日本の公共事業費の対GDP比は欧米の2~3倍くらいでちょうどいいのではないかと考えている。何の考察を比較もなく、やみくもに公共事業費が多いなどと批判することはとてもおかしなことだ。
―自民党は「10年で200兆円をインフラ整備などに投資する」と想定しているが、この金額は純粋な増加分を言っているのか。
政権が今後決めていくことではあるが、私がずっと主張してきたのは当然、純粋増加分の議論。100兆~200兆円は必要だろうと申し上げてきた。
建物であれば、火災が起きる確率が0.01%であったとしても、必ず非常階段を作る。一方で日本の場合、巨大地震が起こる確率は歴史的に見ても100%だ。にもかかわらず、例えば日本の大動脈である東海道新幹線にはスペアが存在しない。これは非常に危険なことだ。
新幹線や高速道路だけでなく、空港や港湾もスペアが必要だろう。例えば、南海トラフ地震が起きれば、関西国際空港が使えなくなるかも知れないが、スペアの空港を日本海側エリアなどに造っておけば、応急輸送などでずいぶんと助かる。
―これまでは、地方に空港などを造ることに対して批判があった。
巨大地震は、まさに東京や名古屋、大阪といった三大都市圏近辺で起きることがわかっている。都市機能がマヒしたときに、代わりになるものが何もないというのはまずい。
平時は、こうしたインフラが整うことで、地方へ生産設備などを誘導するインセンティブになるだろう。そして有事となれば、それは貴重なライフラインになる。
―インフラ整備の優先順位はどのように考えるのか。
まずは東日本大震災の被災地における復旧・復興。そして全国的な耐震補強や津波対策だろう。これらが最優先だ。その次がスペアづくり。最優先ではないとはいえ、耐震補強などと並行して手かけておかないと到底間に合わない。
自民党・公明党の連立政権が誕生してわずか2週間で補正予算が出せたことは、前政権時代を思えば画期的だ。これは、永田町が霞が関を上手に使ったということ。こうしたスピード感あふれる政策運営は、やればできるということだ。
―公共事業による景気浮揚効果は本当にあるのか。
国際通貨基金(IMF)は、財政出動による乗数効果は従来想定していたよりも高いと認めたが、私もまったく同意見だ。これは手短に言えば、公共事業による景気浮揚効果は、思っていたよりも高かったとIMFが認めたということだ。
ただし、予算がついたからといっていきなり事業がスタートするわけではない。景気浮揚効果が実感できるのは今年秋から、本格的には来年度になってからではないか。

 

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上場コンサルティングサービスがスタート!


OPCでは、新しいサービスが本格的に始動しました。それは、上場コンサルティングです。
OPCは海外への技術者派遣からスタートして、10年前から海外開発コンサル、つまりアジアやアフリカの途上国へ進出する日本企業様への支援やアドバイス業務を手がけてきました。近年は、スーダンやナイジェリアの職業訓練やジェンダー(女性の社会進出、就労支援)に実績を積みつつあります。
今年に入り、アジア等へ進出する中小企業様から、成長支援と上場についても手伝って欲しいとの要請を受けて、コンサル業務の範囲を広げています。
 
今日は株式を上場することのメリットについて、ご説明をしたいと思います。
 
株式を上場すると、資金調達や人材の獲得に有利であると言われています。これは事実ではありますが、中小企業、特にそのオーナー社長にとっては、他にもっとありがたいことがあります。
 
一言で言うと、“つぶれにくい会社になる”ということです。それは管理部門が強化されるため、企業業績の把握が早く正確になるからです。相互牽制、ダブルチェックが徹底されるため、不正や間違いが起こりにくくなります。
その結果、ひと月の営業成績である月次試算表が、遅くても翌月の10日までには出ることになります。前月に起こした行動がどういう結果をもたらしたのか、すぐに経営陣が知ることができます。そのPDCAのサイクルが速く回るようになるのです。
 
また、資金繰りについても早く正確に読めることになります。その結果、企業はつぶれにくくなるというわけです。
 
何よりも中小企業の社長にとってありがたいのは、上場すると、銀行等の借り入れに対してしている連帯保証がはずれることです。
 
現在の日本において、中小企業がつぶれるということは、社長が自己破産することとほぼ同義です。それまで築き上げた経済的な資産を、全て失うことになります。その結果、家族に与えるダメージは極めて大きいものです。そうなるのは、借入金の連帯保証があるからであり、有限責任の持株を失うだけで有れば損失はそれほど致命的なものではありません。
 
そして、上場した時実感する営業上のメリットは、情報をこちらから求めなくても、どんどんいろんな人や会社からもたらされるということです。何しろ毎日会社の株価が、全国紙各紙に掲載され、人事異動や業績についても、無料で広報してくれます。今は情報は即お金と言って良いくらい、企業にとっては極めて重要な経営資源でもあります。
以上3点について、中小企業にとっての上場メリットをご説明しました。他にも、事業承継がやりやすくなるとか、社員のプライドが高まるとかいろいろメリットがあります。いずれにしても、企業を成長させるのに上場は大きな起爆剤になります。
そういう意味でも、是非より多くの企業様に上場にチャレンジして頂きたいと考えています。

「グローバル人材」の定義とは?


今日本では、グローバルな経済活動において様々な資質が求められています。
OPCでも海外案件を多数取り扱っており、その案件ごとに求められる資質は若干変わるものの、共通部分も相当あります。
そういった側面について、ニューズウィーク日本版2012年4月18日号に興味深い記事が掲載されていたので、ご紹介したいと思います。
「グローバル人材」の勘違い
日本 戦略なきイメージ先行の国際化ブームが続けば、企業も社員も血みどろの戦いを勝ち残れない
日本の中堅メーカーに勤める立川友哉目(34仮名)にとって、初の外国生活となったタイでの駐在は苦しみの連続だった。新会社の設立準備が主な業務だが、現地の法務事情には疎いし、英語への苦手意識も拭えない。
てきぱきと仕事をこなすタイ人の部下から「もっと明確に指示してほしい」と要望されることもストレスだった。ある日、書類にミスが見つかると、自信を失い鬱状態に。結局、駐在1年弱で帰国を余儀なくされた。
立川のように異国で右往左往し、心を病むケースは世界各地で増えている。彼らは、日本に吹き荒れる「グローバル人材」育成ブームのひずみが生んだ被害者といえるかもしれない。
経済のボーダーレス化が加速度的に進み、「世界で稼ぐ」のが当然の時代、外国人と渡り合ってチャンスを物にできる人材を増やさなければ国も企業も生き残れない―そんな危機感に駆られて、日本では最近、グローバル人材待望論が花盛りだ。
外国人の新卒採用や英語の社内公用語化がメディアをにぎわし、東京大学は秋入学による国際競争力の強化を宣言。野田政権も「世界に雄飛する」人材の開発を重点目標に掲げている。
これは、日本企業がついに人事と組織の抜本的変革に踏み出した証しなのか。残念ながら答えはノー。むしろ、どんな人材をどう育てるかという本質から目を背けたまま、イメージばかりが先行している側面さえある。
世間のムードに乗り遅れまいと焦り、外国人の採用増という象徴的な判断にさえ他社の動向を気にする横並び主義。目指す人材像も、そこに至る戦略も曖昧なまま行われる付け焼き刃的な研修。「現状が続く」という幻想を捨て切れない社員。こうした時代錯誤が続けば立川のような悲劇はますます増え、日本 企業には環境変化に適応できずに絶滅した恐竜のような暗い未来が待っているかもしれない。
◆幕末の志士との違いとは
時代錯誤ぶりが顕著に表れているのは、「まずは英語から」という根強い英語信仰だ。英語の必要性は言うまでもないが、国内で「仕事ができる」人に英語力を加えれば、世界で活躍できると考えるのは短絡的過ぎる。
「異なる発想を持つ人が意見をぶつけ合い、相乗効果を引き出すのがグローバル社会の原則だ」と、グローバルーエデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツの布留川勝代表取締役は言う。
「同質の仲間との『あうんの呼吸』が重視される日本的な環境で成果を挙げるスキルとは、質が違う」
言語も商習慣も異なる現地スタッフの士気をどう高めるか、市場の潜在ニーズを探り、前例のない決断を下せるか―正解のない問いに最適解を出す難しさに目を向けず、「昇進の条件はTOEIC600点か700点か」が最大の論点という企業は、いまだに珍しくない。
かといって「英語以外」に熱心に取り組めば十分というわけでもない。リーマンーショックで削減された研修投資が復活し、ロジカルシンキングから相手国の文化を学ぶ講座まで、プログラムはますます多様化している。
だがいくらテクニックを覚えても、根本的な発想や心構えのマインドセットが変わらなければ意味がないとの指摘は根強い。
各国の専門機関と組んで人材育成のノウハウを提供するIGBネットワークの古屋紀人社長に言わせれば、日本人のそもそもの問題は判断のよりどころとなる信念の「核」が確立されていないこと。その結果、思い切った決断を下せなかったり、社内の論理や世の中の空気に流されて判断がぶれるという。
日本にも幕末から明治初期にかけて、国の未来を大局的に見据えて行動を起こせるリーダーが数多く存在した。
「彼らを支えたのは、禅や武士道の精神に基づく揺るぎない内面的基盤だ」と、古屋は言う。「そうした土台をないがしろにして、小手先のスキルばかり学んでも欧米流の物まねに終わるだけだ」
揺るぎない信念も英語力も専門知識も足りなくては、グローバルビジネスの最前線で戸惑うのは当然だ。今やどんな貧困国に生まれても、ネット環境さえあれば名門ビジネススクールの授業を無料で見られる時代。ハングリー精神にあふれる新興国の若者が急速に実力を伸ばすなか、冒頭の立川のような挫折を味わうケースは増え続けている。
◆人材獲得競争で蚊帳の外
もっとも、個人の資質のせいにするのは酷な面もある。最近急増している30歳前後の駐在員の多くは、「若いうちに海外経験を」という掛け声に乗って大した準備もなく各国に送り込まれる。「彼らは日本で部下を持った経験もないまま、いきなり外国人を束ね、人事考課までする大役を任されて疲弊している」と、シンガポールを拠点に日系企業の人材育成を支援するサイコム・ブレインズ(アジア)のサンディ斉藤は指摘する。
意思決定を迅速化するために本社の権限を現地に委譲したり、人事評価や報酬体系を世界中で統一する必要性についても20年以上前から指摘されているが、その進展は遅々たるものだ。
しかも、現地スタッフの多くは年功序列で昇給する日系企業のぬるま湯に漬かって「日本人化」しており、いざ重要ポジションに抜擢しても仕事ができないケースが目立つと斉藤は言う。
「かといって高額の報酬で新たな人材をヘッドハントする仕組みもなく、欧米系や韓国の企業に優秀な人材が流れてしまう」
もちろん日本でも、世界共通の人事評価基準を導入し、ドイツ人取締役に代表権を持たせた資生堂のような例もある。だが「大半は今も、日本人が日本本社で日本語で経営する発想のままだ」と、組織戦略に詳しい一橋大学大学院の一條和生教授は言う。
「本社の仕組みと、島国意識に大手術が必要だ」
このままでは、世界的なトップ人材獲得レースから完全に脱落する。一流の頭脳が集まるグーグルやアップル、マッキンゼー、サムスンなどの「勝ち組」企業は「欧米のトップMBA(経営学修士号)の学生に破格の待遇を提示して、囲い込みを進めている」と、グローバル・エデュケーションの布留川は言う。
「今いる最高の人材を総取りし、ライバルを完全に突き放すという決意表明だ」
環太平洋経済連携協定(TPP)が締結されれば、ただでさえ縮小気味の国内市場に外資がなだれ込む。頼みの技術力にも陰りが見える。日本企業の競争力が目減りし続ければ、会社が中国資本に買収される、倒産が相次ぐといったシナリオが現実になるかもしれない。
だが、大半の人はそんな暗い未来を直視することを避けているようだ。
「あらゆる手段を使って自分の市場価値を高めることが最大のリスクヘッジのはずだが、研修やTOEIC受験を罰ゲームのように思っている」と、布留川は言う。
「国や会社の仕組みは変えられなくても、自分自身は変えられるのに」
◆日本人の中での差別化を
グローバル市場での血みどろの戦いを、職選びの段階であえて回避するという形のリスクヘッジもあり得る。『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社)の著者でジャーナリストの渡迢正裕によれば、金融やITソフト開発のように実力だけで評価される業界では世界規模の過酷な戦いが待ち受ける。給与の計算事務やタクシー運転手のように、業務の国外委託や外国人の流入で賃金が途上国並みに下がる職種も多い。
一方、どれほどグローバル化か進んでも「日本人ならでは」の仕事は残る。「外国人から家を買うのは不安」という消費者心理がある限り、日本人の住宅営業職は消えないはずだ。チームワークや勤勉さといった日本人の強みを外国の工場に伝授できる人材も重宝されるという。
ひと安心? いや、そうではない。「似た能力の日本人同士で少ないパイを競うのだから、自分をどう差別化するか真剣に考えるべきだ。『皆がやっているから』といって英語を学んでいる暇はない」と、渡迢は言う。
極論かもしれないが、ポイントは自分の強みを見極めて戦略的にキャリアを構築すること。日本人の中で抜きんでるのに必要な発想力や実行力といった力の多くは、グローバル人材に必要な要素と共通している。
そうした力は、一朝一タに身に付くものではない。「グローバルな環境で働くことは『苦行』だと思われているが、異なる価値観の人との交流は本来、刺激に満ちた楽しいもの。若いうちにその醍醐味を経験することが、後のキャリアの支えになる」と、一橋大学の一條は言う。
そんな経験を積める場が、国内にも誕生する。14年秋に長野県に開校予定の「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢」は、アジアの貧困家庭出身者など多様な背景を持つ若者が大自然の中で切磋琢磨する日本初の全寮制インターナショナルスクール。目指すは、「考える力、感じる力、突破できる力」を備えたリーダーの育成だ。
10年後、日本企業はそんな若き才能を引き付け、存分に力を発揮させられる場所になっているだろうか。タイムリミットは限りなく近づいている。
【5つの要素で測るあなたのグローバル力】
グローバルな環境で力を発揮できる人材の条件とは?グローバル・エジュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツによれば、必要な能力は5つの柱に分類できる。ベースとなるのは壮大なビジョンを描き、その実現法を構想する力と、自分を鼓舞して努力する力の2つ。
その上にコミュニケーションのスキルと多様性への理解、ツールとしての英語力という3つの「アプリ」が加わる。チェックシートであなたのグローバル人材度を判定してみよう。
◆ビジョナリーシンキング
・明確なゴールイメージを頭に浮かべながら仕事に取り組んでいる
・経営者・上司・顧客・競合他社など自分とは立場の異なる人たちの視点も考えながら、仕事をしている
・自分は、ロジカルかつクリエーティブである
・アイデアがひらめいたとき、それが実現可能かを同時に考える
・自分のありたい姿が、熱い思いを伴って浮かんでくることがある
・大局を見ながら、細部にも気を使うほうである
・物事を考えるときに、前例やルールにはこだわらないほうだ
・目標実現のために、取るべき具体的なステップを考えられる
◆セルフエンパワーメント
・難しい局面でも自分自身を奮い立たせる方法を知っている
・自分の強みや弱みをありのままに受け入れることができる
・人は年齢や環境に関わらず、あらゆる機会を通じて成長し続けられると考えている
・今ある状況は自分の選択の結果であると認識し、他人や環境のせいにしない
・緊急度は低いが、重要なことに時間をかけるようにしている
・ポジティブな影響を周囲に与えることができる
・なすべきことを着実に行い、結果はすぐ求めない
・自分自身が他者にどう見えているかを認識している
◆ダイバーシティ
・世界情勢、文化、歴史に興味を持っていて、情報を取り入れようとしている
・異なる価値観を持つ人たちとの協働により、ダイナミックな発想が生まれると思う
・異性の上司/部下/同僚とも分け隔てなく、仕事ができるほうだ
・「当然~」、「絶対~」、「当たり前」といった決め付けに注意を払うほうだ
・自ら異質の世界に飛び込むことにワクワク感を感じるほうだ
・自分の意見が否定されても、感情的にならす対応できるほうだ
・人の行動を理解する際には、その背景にある価値観・信念などを知ろうとする
・多国籍のチームで働くことを考えると、不安よりも期待のほうが大きい
◆グローバルイングリッシュ
・英語はコミュニケーションの手段であって、目的ではないと思う
・英語がさらに上達したら、「こんなことがしたい」という具体的な夢や目標がある
・単語・表現が通じなければ、分かってもらうまで、違う表現、身振り・手振りを使うなどして説明し続ける
・ネイティブのような発音でなくとも、堂々と話すほうが大切だと思う
・少ない時間であっても、毎日英語には触れるようにしている
・文法的な誤りはあまり気にせず、伝えることに力を入れている
・使える表現・文章はどんどんまねて使ってみるようにしている
・英語が母国語ではない人が使う英語も、英語の一つだと思う
◆コミュニケーション
・人の良い面に目を向け、言葉にして褒めている
・人と接するときには、表情・態度・声色・テンポなどにも気を配っている
・話を聞く際には、話の中身だけではなく相手の気持ちを理解しようとしている
・目的、相手の状態・状況に応じて、複数のコミユニケーションスキルを使い分けられる
・まずは結論を伝え、その理由を簡潔かつ明確に説明するようにしている
・伝える内容と伝え方の両面に配慮している
・導き出したい結果や目的を明確にした上で、コミュニケーションを取るように心がけている
・話を聞く際には、誤解を避けるため、話の内容を繰り返す、要約する、質問するようにしている
あなたはどのタイプ?
診断テストで自分の「グローバル人材度」をチェックしたら、下の6つの典型的なパターンから近いものを探してみよう。自分の強みと弱みを知ることが、グローバル対応能力の磨き直しに向けた第一歩だ。
◆優秀なドメスティックプレーヤー
自分のありたい姿を常に思い描き、理想像へ到達する手段・方法を明確に持ちながら、行動へと移すことができるタイプ。また異なる価値観にも柔軟に対応しながら、自分の考えを的確に伝えるコミュニケーションカにもたけている。そのため、周りと協働し合って成果を出すことができ、上下から厚い信頼を寄せられているはず。
ただし、グローバルイングリッシュ力が低いということは、英語を用いたコミュニケーション力が十分ではない、または苦痛であることを示している。仕事の場がグローバルになった途端に能力が十分に発揮されず、損をすることもある。そろそろグローバルイングリッシュ力の向上に、本気で取り組んではどうだろう。もともと能力が高いあなたのこと、活躍の場が広がることは間違いない。
◆振り向けば周りがいない一匹狼
目標を高く持ち、目標を実現する手段や方法を明確に意識しながら、努力することもいとわないタイプ。
あらゆる機会を自己成長と捉える、エネルギッシュでポジティブな人と思われる。しかし、自分と異なる他者の価値観を認められず、さまざまな人々と協調してシナジー効果を生み出すことは苦手のよう。結果、自分1人で行動することが増えているのでは?問題解決能力は高いのだから、ぜひ他人との関わりに対しても発揮すべき。
まずは相手に関心を持つことと、違いを受け入れるメリットの大きさを理解しよう。もちろん日本人同士でも同様。こうしたコミュニケーションの手法を理解して、実際に使うことで成功体験を積み上げていくことが肝心といえる。その感覚が持てて初めて、ビジョナリーシンキングやグローバルイングリッシュといった力が生きてくる。
◆「いい人」だけど一線には立てない
明るくオープンな人柄だけでなく、異文化や自分と異なる価値観に対して柔軟に理解する能力がある。相手の意見を受け入れつつも、自分の意見を相手にしっかりと伝えることができ、コミュニケーション力は十分といえる。加えてグローバルイングリッシュを得意とし、外国人とのコミュニケーションもスムーズに行えるのは大きな強みだ。
しかし、グローバルビジネスの場面では、自分や会社のあるべき姿を真摯に考え、自身の価値観に基づいて軸をぶらさすに目標に向かって愚直に努力していく力が求められる。今後、グローバルビジネスにおいて大きく羽ばたくためには、ビジョナリーシンキングとセルフエンパワーメントという、自身のグローバル化の核となる2つの力を伸ばすことが不可欠だ。この2つの力がしっかりと根付けば、これを具体化するツールである他の3つの力は高いため、まさに「大化け」する可能性がある。ワークショップやコーチングなどで、具体的に1~3年後のありたい姿を考える訓練から始めてみてはどうだろう。
◆努力しているけど空回り
社会的に求められる能力を最大限に発揮できるよう、自分を高める努力をしており、かなりの努力家といえる。事実、高いグローバルイングリッシュ力を持ち、外国人とのコミュニケーションで困ることはないだろう。しかし、本当に自分が考える「ありたい姿」が明確に見えていないため、世の中の動向や他者からの影響を受けやすく、行動にぶれが生じることが多そうだ。また自身の努力に対して、周囲の評価が十分になされていないというストレスを感じているため、他者に対して円滑なコミュニケーションが取れないことも少なくないだろう。
まずは他の何にも揺さぶられることのない「自分自身の在り方」を具体的に見いだし、同時に相手の在り方や価値観を認める訓練をしよう。あなたに必要な言葉は「私は私、人は人」。セルフエンパワーメント力が高く、実行力のあるこのタイプなら、「本来の自分」を取り戻すことで、相手をも認め、グローバルビジネスで活躍できる可能性が一気に広がるだろう。
◆一生懸命だけど行き先が定まらない
社交的でどんな人ともうまくやっていくコミュニケーション能力の高い人。さらに、異文化や他者との違いを柔軟に受け入れ、周りと協働することを得意としており、そのための努力は惜しまない。和を尊ぶ日本では、誰からも愛されるキャラクターとして認知され、その評価に満足しているのではないだろうか。
しかし、グローバルビジネスの場では、自分の意見を持たす、考え方を主張できない人は「自己」を確立していないと見なされ、対等に扱ってもらえない傾向がある。今後は、人から評価を受けるためではなく、自分が本当になすべきことのために、自分自身を高めようとする努力を積み重ねることが必要だろう。そのためには、自分自身の在り方や仕事の方向性をしっかりと考え、それを実現するための事項を具体的に戦略立てて落とし込んでいく作業が必要だ。もちろんグローバルイングリッシュもグローバルな場で存在意義を発揮していくために不可欠な要素だ。
◆周囲を巻き込むが途中で燃え尽きるドリーマー
ひとことで言うなら「ビジョナリーな熱い人」といったところか。自分の将来の方向性や成し遂げたい目標について、十分把握している。さらに明るく社交的で異文化に対する理解力もあり、あなた自身の夢を熱く語り、巻き込んでいく能力も高いと思われる。従って、周りからは協調性があり、人に影響を与える優秀な人材と思われているのでは?
しかし、自分自身が予想していなかったトラブルや問題に直面すると、必要以上にプレッシャーやストレスを感じ、途中で進めなくなってしまう傾向かありそうだ。また、途中で飽きてしまうことも少なくないだろう。そんな人が鍛えるべきなのは、冷静に自己を見詰めて実行していく「セルフエンパワーメント」の力。自分の強みと弱みを理解し、それらを補完、増強するものは何かを見定め、冷静に自分を成長させる戦略を練り、粛々と実行することが大切。そのための計画作りや継続させるコツなどを学ぶとよい。

英語力=グローバル力?


OPCでは、海外開発コンサルタントによる発展途上国支援業務、海外の建設プロジェクト支援業務で英語を使用します。
では、そういった現場のシーンでどれくらいの英語力が求められるのでしょうか?
もちろんTOIECの点数は、大きな指標にはなります。しかし、それ以外にも大事なことがたくさんあります。その辺について、同じアエラ2013年12月2日号の興味深い記事をご紹介します。
英語力=グローバル力か
TOEIC900点でOK?
「グローバル人材」を育てるため、小学3年生から英語の授業が始まることになるという。
世界で働ける人材になるには、語学力はどの程度必要なのか。
埼玉県の日本工業大学が今年9月に実施したベトナム研修に参加した学生25人のうち、海外旅行の経験があったのは2人だけ。パスポートすら持っていない学生がほとんどだった。純ジャパニーズの「職人の卵」たちは、もちろん英語も得意なほうではない。
現地で共同研修をしたダナン工科大学の学生も、英語ネイティブではないという条件は同じ。ダナン外国語大学日本語学科の学生たちが通訳に入り、研修は「日本語」で進められた。
電子機器組み立て研修では、ストップウオッチ、防犯ブザー、ミニ扇風機各3個ずつをすべていったん解体し、制限時間内に復元する。学生たちは身ぶり手ぶりで技術を伝え合い、グループ作業を着々と進めていった。
研修を企画した「インターンシップ」代表の尾方僚さんは、この光景を目の当たりにして愕然とした。
「TOEIC900点なんて、現場では意味をもたない。やりたいことが明確で、その能力が海外で求められてこそ、グローバル人材といえるのではないでしょうか」
尾方さんは外資系企業で採用コンサルタントをしてきた経験から、企業が求める能力や人物像と、学生とのミスマッチを痛感していた。
海外志向の高い文系の学生が志望するホワイトカラー層は、すでに飽和状態。一方、製造業の海外進出によってレベルの高い職人は引く手あまたなのに、彼らは英語力に自信もなければ海外を意識したこともないため、企業から海外勤務を打診されると尻込みしてしまう。
◆単語レベルで十分
そんな「海外アレルギー」を払拭するため、同大はインド、ベトナムで研修を実施。普段の英語の授業でも、「hammer」など道具の英単語を覚えながら実技も学ぶ「融合科目」を独自に開発した。キャリアデザイン研究室の菊地信一教授はこう話す。
「うちの大学が育てたいのは、『現場のプロジェクトリーダー』。自分の技術を海外で使う可能性があると気づくことが重要で、長期留学は必要ない。英語力は単語や片言で通じるレベルで十分です」
企業のニーズの高まりを受け、文部科学省は昨年度から「グローバル人材育成推進事業」として42大学に年間40億円超を補助。英語教育だけでなく留学支援や大学間交流など各大学の特色を生かした取り組みができるよう、「グローバル人材」の定義にも幅を持たせてある。
「様々なフィールドやレベルにグローバル人材を輩出していくことで、国全体のグローバル対応力の強化を進めます」(文科省高等教育企画課国際企画室)
一方で、今年5月の政府の教育再生実行会議の提言後、小中高校では英語教育強化に向けた動きが加速している。小学校の英語の開始時期を5年生から3年生に早め、3、4年生は週1~2コマ、5、6年生は教科化して週3コマとする。中学卒業時で英検3級程度、高校卒業時で同準2級程度の英語力を達成目標にする。大学入試に米国の英語力試験「TOEFL」を導入する-。
確かに一定の英語力がなければスタート地点に立てない場合もある。アメリカの難関大学に出願するには、TOEFL iBT120点満点中100点は必要だ。今年、アメリカの名門ハバフォード大学に進学した野村善文さん(19)は、高校2年から予備校に通い、ネイティブでも知らないような英単語をひたすら覚え、無料リスニング教材はリスニング、リーディング、シャドーイング(スピーキング)に3段活用。もともと60点くらいと思われた点数を1年間で100点に上げたが、実際の授業で求められるレベルはさらに高いという。
◆飲み会にも通訳
ただ、NPO留学協会理事でAJ国際留学支援センター代表の岩崎宗仁さんは指摘する。
「国際化が叫ばれた時代は2国問のコミユニケーションツールとして英語力が問われたが、いま求められているのは地球すっぽりのグローバルカ。英語力だけ養っていても通用しないのは言うまでもありません」
さらに、ビジネスの舞台は英語圏にとどまらない。
カルビーの有馬るねさんはタイに赴任当初、タイ語がまったくわからなかったが、現地の社員が技術力を頼ってくれたので、話せなくても仕事はできたという。引き継ぎ中の1ヵ月間は前任者に通訳してもらい、その後は語学学校へ。英語より先にタイ語のほうを習得した。
アサヒグループホールディングスの浅井裕さんはイギリスに留学経験があるが、韓国駐在になってから英語を使うことはほとんどない。ビジネスでは通訳を同伴し、部下に飲みに誘われても、深刻そうな話の時は「内容は絶対に他言しないように」と念を押して通訳を伴う。
◆提案書は「丸投げ」
「e-Educationt」代表の税所篤快さんは、英語の提案書を作るのが苦手。海外で事業をプレゼンする際、まず自分がボードを持って身ぶりを交えながら熱く語り、それを見て共感した韓国人やネパール人スタッフに提案書づくりを「丸投げ」する。OECD職員の村上友紀さんが仕事で使ってきたのは英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語……。
「ここまでくると、勢いで何とかするしかありません」
英語ネイティブでない者同士のコミュニケーションは不可欠で、英語の「絶対性」は薄れつつある。留学協会の岩崎さんは言う。
「勧めたいのは『留学(留まって学ぶ)』よりも『流学(流れて学ぶ)』。たくさんの人としゃべって対話力を磨き、アウェーの環境に慣れることが重要です」
たくさんの人としゃべって対話力を磨く-良い言葉ですね。やはり海外の人たちと上手くやっていくためには、言語はあくまで手段であって、その向こう側をイメージできるかどうかが重要なのかも知れません。

グローバルな人材になるために


OPCでは、様々な海外でのお仕事を紹介しています。
海外で活躍するために、グローバルな人材になるためには、どのような資質が求められるのでしょうか。昔の雑誌を整理していたら、ちょうど良い雑誌が出てきました。アエラ2013年12月2日号より、ご紹介します。
世界で働ける5つの能力
「ベトナムにおけるこのオフィス用品の市場規模は、約26億円です」
日本企業の海外進出などをサポートする調査会社「プルーヴ」代表の森英朗さん(37)は、オフィス用品メーカーの担当者を前に、そう言い切った。ベトナムのオフィス用品市場の詳細なデータなど存在しない。森さんが現地の会社を自ら訪ねて回り、積み上げていった数字が根拠になっているのだ。
その調査は、森さんの「突破力」なしにはできなかっただろう。調査案件の受注前からベトナムに乗り込み、現地で飲食を重ねながら人脈を構築。信頼できる現地のパートナーを見つけ、現地語で書かれたネット情報を読み込む。
そのうえでパートナーとともに、大企業から中小企業まで、ベトナムの会社をひたすら回るのだ。いきなり会社の扉をたたき、中に入れてもらったら、満面の笑みであいさつをする。
「日本人です。どんなオフィス用品を使っていますか?」
取り出してきたオフィス用品をおおげさにほめると、気分よく次々に見せてくれる。時には社長自らが応対してくれて、オフィス用品へのニーズを語ってくれることもあった。こうして50社以上を訪問し、集めたデータを精査した。最終的には、各オフィス用品の販売予測までする。森さんは言う。
「いつも背水の陣のつもりで、とことんやりきる。だから現地の会社や生活に身一つで飛び込んでぃけるし、そこまで踏み込むから人脈も築けるのです」
2007年に森さんが起業したプルーヴは、いまアジア圏18の国と地域まで調査対象を増やし、現地パートナーは86社にもなる。社員は5人。それぞれが常に約10個の案件を抱え、アジアを飛び回っている。
プルーヴ代表森英胡さん(37)
1998年に慶厖義塾大学を卒業し、印刷会社や教育研修会社を経て、2007年にブルーヴを起業。「広げた風呂敷を本物にするためにやりきります」
◆ビジョンはシンプルに
いま多くの企業がその育成に力を入れるグローバル人材。世界を舞台に活躍できる人材をどれだけ確保できるかが、人事最大の課題になっていると言ってもいい。リクルートワークス研究所所長の大久保幸夫さんはこう指摘する。
「古くは『国際化』という言葉で、何度かグローバル人材へのニーズが高まるタイミングがあった。今回の盛り上がりは、リーマン・ショックで多くの日本企業が、グローバル化するしか生き残る道がないと痛感したことが大きい。新興国で新事業を築き上げられるような人材はもちろん、国内でも世界や外国人に目を向けて働ける人材を、いま企業は必要としています」
世界を相手に実績を残せる人材とは、どんな能力を待った人たちなのか。グローバルに活躍する人材にはどんな共通点があるのか。各社の「グローバル人材」の実力を追った。
アサヒグループホールディングス国際部門に所属し、いまは韓国の現地法人に理事として出向している浅井裕さん(41)は、08年9月、着任してすぐにこう発破をかけた。
 「(輸入ビールで)シェアトップを取りましょう」
当時、同社が展開していたスーパードライのシェアは、ミラー(米)、ハイネケン(蘭)に次ぐ3位だった。そこから一気に1位を狙うと宣言したのだ。浅井さんはこう振り返る。
「文化や考え方が異なる海外で組織を動かすには、まず具体的でシンプルなビジョンや目標が必要です。そのうえで、いかに現地社員に自主的に動いてもらえるかが、成功のカギになる」
◆社員を信じて任せる
ビジョンや目標を提示し、そこまでの到達方法については、現地の社員に任せる。「委任力」が結果を生むと考えている。
「アイデアを出してください」
「やりたいことを持ってきてください」
そう呼びかけて、提案を待つ。あがってきた提案に、アサヒとしてのノウハウや自身の経験から、アドバイスを加えてリスクを減らす。時には研修として日本に出張させ、日本独自の販促手法などを「発見」してもらう。結果として、現地社員が自ら考えた施策が高いモチベーションによって展開されていく。
浅井さんが着任して以降、日本食レストランだけでなく、すべての大手小売りチェーンにスーパードライを置けるように。消費者の目に触れる機会が格段に増え、マス広告の効果も一気に出やすくなった。韓国駐在4年目となる11年、輸入ビールでシェアトップを実現した。浅井さんは言う。
「社員を信じて任せることで、韓国人の熱さを引き出せたのだと思っています」
アサヒグループホールディングス国際部門副部長 浅非裕さん(41)
1996年に甲南大学を卒業し、アサヒビール入社。横浜支社厚木支店で営業を担当した後、99年から国際関連の部門を歴任。 2011年から現職。
◆信頼関係を構築する
海外でゼロから会社を立ち上げる場合、問われるのは「構築力」だ。リクルートで人事部や経営企画部などを経験してきた舘康人さん(35)は06年10月、上海支社の設立のため中国に渡った。国内地方都市での営業を希望していた舘さんに、
「もっと遠いところがある」
上司にそう告げられてから3週間後のことだった。
「中国語も全くわからない状況で同僚と2人で現地に乗り込んだが、いまやアジア全域で300人の社員を抱え、13の拠点を展開するRGF HR Agent Groupを作り上げた。舘さんはこう振り返る。
「ブレずに、目的と意図を愚直に伝えていくことが大切だった。それと即断即決。日本の本社におうかがいを立てていては、事態がどんどん進む。自分がすぐに決断していく必要があった」
正念場だったのは10年。それまで日本型の業績変動幅の少ない給与制度だったのを、より早くリターンを求める傾向がある中国人にあわせ、成果主義型に切り替えた。ところがその変更が反発を呼び、当時43人いた社員が17人にまで減ってしまった。だが舘さんは、会社に残ろうとしてくれた社員にとことん向き合い、意図を説明した。次第に賛同が広がり、新たに入社を希望する人も増えてきた。結果、生産性は1.5倍になり、中国人社員はいまや200人にのぼる。事業の立ち上げに必要なのは、信頼関係の構築なのだ。
「成功と失敗の繰り返しですが、わかりやすく、自分の考えを伝えていくことで乗り越えてきました」(舘さん)
RGF HR AgentGroup(リクルートのアジア現地法人)マネージングディレクター舘康人さん(35)
2002年に慶応義塾大学を卒業し、リクルート入社。経営企画部などを経て06年10月、上海支社の設立に参画。13年4月から現職。アジア地域を統括する
構築力と委任力でタイ、北米、欧州を舞台に成果を積み上げてきたのがカルビー欧州・ロシア課長の有馬るねさん(38)だ。入社5年目で赴任したタイでは、現地法人で研究開発チームの立ち上げと、タイで販売する商品の開発を手掛けた。北米部では、米国展開の見直しと将来的なビジネスプランの作成に携わった。
「自分が担当する部門だけでなく、商品が開発されて消費者に届くまでの全体像を俯瞰して理解していなければ、海外でプロジェクトを作り上げることはできない。そして一人でできることは限られるから、信頼できるネットワークを構築し、任せてしまうことも大切です」
いまは、欧州進出の実現可能性を探っている。現地の食文化は?調達できる原料は?ビジネスパートナーは?効果的な販売ルートは?すべてが自分の判断にかかってくる。
◆出張時に話し込む
時には自分に足りない要素にも向き合わなければいけない。欧州での人的ネットワークが欠けていると考えた有馬さんは、今年4月から有給休暇を使って1ヵ月間、英国のビジネススクールに通った。管理職経験者ばかり約50人のクラスにアジア人は2人だけ。そんな環境で、ネットワークを作っていった。
三菱重工業火力発電システム事業部の菅野悦史さん(36)は、火力発電所で使うガスタービンのアフターサービスを世界に売り込んでいる。毎月のように海外に出張し、時には世界をほぼ1周して帰国することもある。
ライバルは米ゼネラル・エレクトリックや独シーメンス。ひとつの契約で数十億~数百億円にもなる案件をいかに獲得するか、世界の巨大企業を相手に戦っている。主戦場のひとつが中国。この数年、毎月のように入札が行われ、菅野さんはそこで30件以上の受注に貢献してきた。
やはりネットワークが頼りだ。日本で自分の席に座っていても、世界各地の同僚とつながっている。出張に行けばなるべく話し込むようにし、その人がどんなキャリアを積み、どんなモチベーションを持っているのか知るようにする。
「いろいろな人のアイデアがなければ、世界では戦えません。バックグラウンドの違う人たちの意見をもらい、その集大成として企画書を書きあげます」
完成されたノウハウが日本にあっても、新たな技術情報は世界に散在している。それらを共有できなければ、新しい提案は生まれない。世界の人脈に浸透していく力がなければ、海外ではプロジェクトを構築しえない。
◆わかりやすい話し方
さまざまな国籍のビジネスマンが混在するグローバルな舞台で何かを成し遂げようとするとき、「浸透力」が問われる。経営共創基盤パートナーの川上登福さん(40)は、日本企業の海外進出や新規事業開発をサポートしている。
数多くのグローバルリーダーを目の当たりにしてきた経験から、こう指摘する。
「マジックはありません。私もそうですが、多様なバックグラウンドを待った人たちに自分の考えを伝えるために、きわめてシンプルでわかりやすい話し方をします。相手が理解しやすいように、同じことを伝えるのにも、3通りくらいの言いまわしを用意しておきます」
日本企業の米国進出をサポートした際には、まずは徹底的に粘った。中小企業約200社を回り、ドアをノックして歩く。その時に本質を突いた提案をし、数字を交えてシンプルに伝えることが大切になる。パワーポイント30枚の資料ではなく、1、2枚の資料でシンプルに説明できなければ、本当に伝えたいことが相手に届かない。
「そのために、思考そのものをシンプルにする必要もある」
三菱商事新エネルギー・電力事業本部の鈴木圭一さん(44)はこれまでに、欧州の部品メーカーのバイアウトや日本企業による米国企業買収のアドバイザリー業務など数々の案件を手掛けてきた。いまの部署では、海外での再生可能エネルギーや火力発電の事業投資を推進している。常に4、5力国の関係者と交渉をしながらの仕事。突破力が求められることもあれば、人脈を張り巡らす浸透力が勝負のカギを握ることもある。
そして最後の詰めは「交渉力」がモノを言うと感じている。それは単に語学力の問題ではない。
「交渉相手に刺さるのは語彙力や比喩力。そしてある意味ちょっと鈍感になって、ストレートに思いを伝えること。相手がストンと腹落ちする言葉を投げかけて、相手をその気にさせることが大切です」
◆連帯感を持たせる
難航したフランスの電力会社との価格交渉。年度末ぎりぎりまで長引いた交渉の最後に。
「今日が3月末最後の営業日だ。俺は今夜のフライトで東京に帰る。このディールをお前とやりたいが、こればかりはどうしようもない」
相手もディールを成立させたい。同じサラリーマンとして、「年度末最後の営業日」の意味もよくわかる。大企業ならではの時間的な制約や年度ごとの予算配分の仕方について共感もある。「お前とやりたい」と投げかけて連帯感を持たせる。そうした要素を積み重ね、価格交渉をまとめあげた。
「失敗したディールもたくさんあります。グローバルに活躍するにはさまざまな能力が必要ですが、自分のスタイルに合わないものもある。常に好奇心を持って新しいことに挑戦し、その実戦の繰り返しのなかで、自分なりに磨いていった」(鈴木さん)
外資系金融機関などを経て投資会社「プルーガ・キャピタル」を創業した古庄秀樹さん(35)にとって、シンガポールに投資運用会社を設立することは必然だった。少子高齢化が進む日本では人口が減り、市場が縮小する。一方で成長性が高いアジア市場がすぐそばにある。アジア市場をとらえようと、11年6月、シンガポールに拠点を構えた。
◆少し先を読む
海外で成功するためには突破力、浸透力、交渉力、構築力、委任力のすべてが必要だというが、さらに「洞察力」が求められると考える。
「あらゆる能力を駆使したうえで、ケーススタディーや自らの経験を踏まえて少し先を読む。洞察力がなければ、変化の激しいグローバルでのビジネスは乗り切れないでしょう」
人材開発会社「コーチ・エイ」の執行役員、塚本弦エイドリアンさんはグローバルに活躍する人材の典型的な動作を、別の角度からこう分析している。
「何かの決断をする前に、それぞれの国の文化や考え方について理解を深め、その国やその会社で働く人たちの考え方ややり方を認める。さらに、自分の考え方ややり方について、現地の社員からフィードバックをもらう。そのために対話を深める。そうやって現地の社員を巻き込み、成功していくのです」

プラントエンジニアリングとは


海外技術者に馴染みのキーワード、プラントエンジニアリング。
そもそもプラントとは、複数の機械・装置を組み合わせた大型の産業設備のことを指します。例えば、大規模なプラントで有名なものですと、鉄鋼プラント(製鉄所)があります。鉄鋼プラントの場合、製鉄工場、コークス工場、製鋼工場、厚板工場、大/中/小径管工場、熱延工場、冷延工場、メッキ工場などの生産設備から、輸送設備である港の建設まで含まれます。
プラントエンジニアリングとは、そのプラントの企画の立案からシステム設計、資金の調達、施工、建設、稼働、アフターケアまで行う一連の技術体系のことです。
日本のプラントエンジニアリング分野においては、日揮、東洋エンジニアリング、千代田化工建設の3社が「エンジニアリング御三家」と呼ばれているほど、大きな存在感を示しています。
プラントエンジニアは、生産設備の設計・管理を専門に行う技術者のことです。通常プラントはいくつかの専門分野から構成されており、機械、電気、土木、化学などの各領域の設備系技術者がチームを組んで、プロジェクトを進行させます。
またプラントエンジニアは各種設備を取りまとめ、クライアントが求める形にセットアップし、スイッチを入れたらすぐに稼働する状態(フルターンキー)で引き渡します。クライアントと各器材メーカーの間に入り、交渉することが求められます。図に落とし込んで関係者に共有させる能力、工事にあたっては指導能力、調整能力が求めされます。
例えば機械系エンジニアの場合、プラントの基本設計・詳細設計から構築、オペレーション、メンテナンスまで行います。業務には、機械工学系の知識が求められます。ニーズが高いのは、「制御仕様の取りまとめ」のような上流工程を担える、プロジェクトを引っ張っていけるエンジニアタイプの方です。
また電気系エンジニアの場合、プラント全体をコントロールする制御システムを構築します。例えば火力発電や原子力発電のような発電プラントの場合、プラント内のコンプレッサーやバルブを動かす電気制御、分散制御システムを統合制御する計装制御といった仕事があります。
分野によって、プラントエンジニアに求められる知識や経験は、かなり異なります。ただし、車内の関部署や社外の協力会社など、様々な人々と関わりながら進めていくので、対人折衝能力や取りまとめ能力は、どの分野でも共通して求められます。

国際協力とは

この豆知識コーナーでは、様々な用語の解説もしていきたいと考えています。
今回は、「国際協力」です。
国際社会全体の平和と安定、発展のために、開発途上国・地域の人々を支援することが、国際協力です。世界中のすべての人々がより良く生きられる未来を目指し、人類共通の課題に取り組むことが今、求められています。
国際協力には、国が行う政府開発援助(ODA)や多国間で行われる支援以外にも、さまざまな組織、団体、機関、そして市民が関わっています。近年、企業によるCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)活動がますます重要な役割を担うとともに、NGOや大学、地方自治体などが、各々の専門分野で力を発揮しています。
また、募金や物品の寄付など、市民レベルの国際協力も活発化しています。こうしたさまざまなアクターの活躍と協力により、より良い世界の実現に向けた取り組みが進められています。

海外インターンシップの提案


昨日は、2回目のアイセックさんの提案がありました。今回は取締役も参加し、前回より更に案件ニーズに基づくすり合わせが行われました。
ポイントを、以下に記します。
◆OPCにとっての実務メリット
・インドネシアの市場調査
→例、宗教観、労働観、食事、居住他
・海外インターンシップ生を営業同行させることによる説得力の向上
◆OPCにとっての付加価値
・海外インターンシップ生が職場に入ることによる社内のグローバル化
・上記の事実を広報することによる企業ブランディングと採用社員レベルの向上
・将来現地法人立ち上げを睨んだ幹部候補採用アプローチ
・現地の生の情報が、研修前、研修中、研修後に入手できる
・海外インターンシップ生の紹介による人脈構築
また受け入れ手続き面におけるリスク管理についても、細部に渡って議論しました。
◆語学
・日本語学習意欲の高い学生を選定する
・来日前に日本語を学習する
・英語が聞き取りやすい学生を選ぶ
・一日の研修後、アイセックが提携する日本語学校へ通学する
◆宗教(インドネシアの学生を想定した場合)
ムスリムの中でも宗教意識が低い学生を選ぶ
・ムスリム向けの住居及び食事提供
◆機密情報の管理
・OPCのフォーマットでの機密保持契約を研修生自身と締結する
・アイセック側でのより密度の濃い信頼関係を研修生と構築する
→業務時間外のイベント、交流会の実施他
今回の打ち合わせには、OPCの業態に近い企業でのケーススタディもお持ち頂いたので、非常にイメージがしやすくリアリティ溢れる議論になったと思います。
またOPC社内の最新ニーズをお伝えすることで、具現化に向けより次回以降立体的な提案が期待できる内容にもなりました。
次回の内容も、この豆知識コーナーでお伝えしたいと思います。

海外開発コンサルタント業務とは


OPCには、大きく分けて5つの部門があります。
海外開発コンサルタント業務、海外技術者、国内技術者、モバイル通信、オフィスワークです。
創業時に総合商社とのつながりがあったことから、魅力的な海外案件が持ち込まれました。そういった経緯から、OPCの海外部門は非常に長い歴史と実績を誇っています。特に海外開発コンサルタント業務は、女性の活躍が著しく、アベノミクスが目指す女性の社会進出にも重なっている分野です。
そこで今回からこの豆知識コーナーでは、OPCの最新の部門模様と関連知識をお伝えしていきたいと思います。
トップバッターは、海外開発コンサルタント業務です。
日本の開発コンサルタントには、法人と個人の2種類があり、法人は株式会社などの営利企業と、財団法人やNPO法人などの公益法人があります。独立行政法人国際協力機構(JICA)には、600以上の法人と140人前後の個人が登録しています。
またJICA以外に、一般社団法人海外コンサルティング企業協会(ECFA)という組織もあります。1964年に、当時の通商産業省(現経済産業省)と建設省(現国土交通省)により設立されました。開発コンサルティング企業の海外での活動支援、内外関係機関との交流促進、各種調査研究を行うことで、国際経済の発展の促進に寄与する活動を行っています。
具体的には、援助政策の立案、実施機関の組織・制度、ODAビジネスの関する契約や調達の仕組み作り、プロジェクト形成から評価まで、各種研究会・部会を通して活発に活動しています。
そういったインフラの中で、OPCの海外開発コンサルタント業務の内容は多岐に渡っています。過去の仕事実績を通して、その具体的中身を次回からお伝えしていきます。

最強の商人 ユダヤ人


こんなジョークがあります。
あるユダヤ人商人が、臨終の床にあって言った。
「愛する我が妻は居るか。」
「ええ、ここに居るわ。」
「愛する息子は居るのか。」
「ここに居るよ、父さん。」
「・・・娘は。」
「ここに居るわ。お父さん。」
その瞬間、老いた商人はがばりと起きあがって叫んだ。
「なんだって!?それじゃ一体誰が店番をやってるんだ!」
世界のジョークを見れば、どこの国民はどのようなイメージを持たれているかよくわかります。ユダヤ人と言えば、強欲な商売人というのが世界的なイメージのようです。では、それだけビジネスに強いユダヤ人であれば、どういった企業があるのでしょうか。ちょっと調べてみました。
強いと言われる金融業界は、証券会社のゴールドマン・サックスモルガン・スタンレー、メリルリンチ、銀行のシティ・バンク、チェース・マンハッタン、クレディ・スイス、J・P・モルガン、ロスチャイルド銀行、保険のプルデンシャル、GMキャピタル、ロイズ保険などがあります。
マスコミ業界は、ニューヨークタイムズワシントンポストCBSテレビ、NBCテレビ、ロイター、ウォール・ストリート・ジャーナルなどがあります。その他、石油のエクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、食品のネスレ、電機のフィリップス、情報通信のIBM、航空機のボーイングなど多国籍企業を含め、巨大企業が名を連ねます。ダイヤモンドの有名ブランドで、世界のラフ・カット・ダイヤモンドの35%を支配する「デ・ビアス」もユダヤ系です。
このように考えると、ユダヤ人は世界経済に非常に大きな影響力を持っていることがわかります。日本とのつながりでは、第二次世界大戦中、リトアニアの領事館に赴任していた杉原千畝氏が外務省の訓令に反し、ナチスの迫害を逃れてきた6000名にのぼるポーランド系ユダヤ人にビザを発給し、救った話が有名ですね。
日本で暮らしているとユダヤの人と会う機会はほとんどありませんが、海外でのビジネス、特に金融分野では無視できない存在のようです。

中国人とのビジネス


13億という、世界最大の人口を擁する中国。GDPはアメリカに次ぐ世界第二位で、軍事面でも影響力を強めつつある超大国です。好き嫌いに関わらず、お隣さんとして上手に付き合っていく必要があるのが中国という国です。
近年では尖閣問題や靖国参拝など、日本とは政治的な緊張関係が続いていますが、実際中国とビジネスをされている方々はどう考えているのでしょうか?また別の総合商社に勤務する方に、その本音を聞いてみました。
「日本人社会は協調社会ですが、中国人社会は個人社会です。あと、面子をとても大切にします。会社に対する忠誠心は、ほとんどないと言ってもいいです。ここは我々日本人と大きく違うところですね。採用しても、より良い待遇の会社が見つかれば、翌日に辞める人もいるくらいです(笑)。
中国人を一面的に見ることも危険です。漢民族が92%を占めますが、残り8%に55の少数民族がいます。北京と上海では言葉も気質も異なりますし、北部エリアと南部エリアでもかなり異なります。大きな声で携帯電話を話し、信号無視するタイプは福建省あたりの人が多いです(笑)。逆に朝鮮族系は、かなり日本人に近いイメージですね。
ご存知の通り中国は共産党の一党独裁で、太子党と言われる中国共産党の高級幹部の子弟のネットワークが、様々な分野で大きな影響力を持っています。習近平も、太子党の一人です。面白いのが、中国は反日と言われていますが、こういった高級幹部には実は親日が多いということです。子弟は海外の一流大学に留学し、立ち振る舞いも洗練されています。ちなみに習近平の娘は、ハーバードに留学しています。
また裸体官僚と言われるように、特権を活かして膨大な財産を築き、海外に隠匿している高級官僚は100万人以上にのぼります。温家宝ファミリーの財産は数千億と言われており、アメリカ当局はその種の資産をかなり把握しているみたいですね。
これだけ広大な土地と民衆をコントロールするために国外に仮想敵国を作り、不満を外に向けるという手法は、国統治の定石です。そのため、真のメッセージとプロパガンダを区別することがとても重要なのです。相手の体面を保ちながら、実利で落としどころをつけるタフさは、日本人はまだまだ弱いと思いますね」
日本の外でビジネスをすると、新聞やテレビだけではわからない部分が一杯ありそうですね。

インド人とのハードな交渉


海外でビジネスをすると、様々な局面で出くわします。
そのうちやっかいなものの一つが、交渉です。例えば最近のTPPの外交交渉などを見ても、いかに海外の国々と調整し着地点を見出すのが大変なことかわかります。TPPほど大掛かりではなくとも、同じような局面は海外ビジネスシーンでは至るところにあります。
日本の総合商社はそういったノウハウをたくさん持っていると思い、交渉の大変さについて聞いてみました。
「商売上手で有名なのはユダヤ人と華僑ですが、インドの人もなかなかのものです。インドには世界2位の12億の人々が住み、宗教も様々です。有名なカースト制もまだ残っています。当たり前かも知れませんが、インド人は儲けるためにビジネスをやります。もっと言うと、儲けるためには手段を選びません。
例えば、ある案件で交渉していると韓国も同じアプローチをしてきてると言う。当然、向こうの方が値段は安い。よく調べると、それはブラフ(はったり)だということがありました(笑)。
また、3つの取り引きを同時進行していた時がありました。一つずつ合意にこぎつけ、いよいよ最後の取り引きの条件交渉も大詰めになった時、“じゃあ、先の2つの取り引きの条件もまとめて見直そう”と真顔で言ってきました。初めてこういった経験をした時は、本当に心が折れそうになりました(笑)。
日本人は、“沈黙は金”という考え方がありますが、世界では通用しません。お互いのメリットを主張し合い、交渉に交渉を重ねる必要があります。インド人がタフ・ネゴシエーターと言われるのはこのためです。しかし、相手も人間です。交渉を重ねるうちに、信頼関係ができ、そうなると一気にスムーズに物事が進むようになります。そこまでの関係を築くまで、耐えれるか。粘り強さが、とても大事なのです」
日頃はインドカレーぐらいしか馴染みのないインドですが、ビジネスを一緒に組むのはなかなか大変そうですね。

ナイジェリア現地奮闘記


そんな成長著しいアフリカの地に飛び込んで、活躍している日本人ビジネスマンは多数います。そこでは、普段日本で生活していると信じられないような光景が盛りだくさんです(笑)。
ナイジェリアで働いたことのある総合商社の方にお聞きした話が、とても印象的でした。
「ナイジェリアは、アフリカ最大の人口を擁する国です。ナイジェリアという国名は、もともと国内を流れるニジェール川から来てるんです。文化的には、貿易を通じてイスラム教の影響を受けた北部エリアと、アニミズムを信仰しヨーロッパのキリスト教の影響を受けた南部に二分されます。
赴任した最初に苦労したのは、個人の顔の見極めです。日本では考えられませんが、ナイジェリアの現地の人は、最初みんな同じ顔に見えるんです。肌はみんな黒く、頭はみんな坊主頭。しかも、名前の発音がこれまた難しい。本気で、名札を着けて欲しいと思いました(笑)そんなわけで、最初は仕事になりませんでした」
ではそういった環境で、どうやって人間関係を構築していったのでしょうか。
「やっぱり、“同じ釜の飯を食べる”ということです。それは、人類共通です。ただ、日本のように居酒屋でというわけにはいかない。ナイジェリアの場合は、家に行くんです。オフィスで事前にさりげなく自宅の場所を聞いておき、夕方“ちょっと近くまで寄ったんで”とアポ無し訪問です。この時、奥さんや子供が喜びそうなお土産を忘れないこと。そういった交流を続けていると、だんだん心を開いてくれるようになります。そのうち、“美味い魚が手に入ったから、一緒に食べないか”なんてお誘いがかかったら、もう安心です」
発展途上国は、都市部でも強盗があったり、治安対策も重要な要素です。
「そういった関係になれば、いろんな重要な情報を教えてくれるようになります。ナイジェリア人の友人宅で、パウンデッド・ヤム(ナイジェリアの主食)をスープに浸して食べながら、オフィスの会議室では決して教えてくれないことを何度聞いたかわかりません」
アフリカでも、人と人のつながりが仕事の成功の秘訣だということを感じたエピソードでした。

注目されるアフリカ経済


アフリカの経済が、好調です。
2013年の海外直接投資の純流入額は、アンゴラモザンビークタンザニアなどで新たに石油と天然ガスが発見されたことで、過去最高の430億ドルに達しました。
その好調さは天然資源の豊富さに加え、近年では道路網の整備や通信網などのインフラへの投資拡大、それらに伴う国民所得の向上と個人消費の増加が寄与しています。
また3.5兆円とも言われるアフリカ観光産業の伸びも、無視できません。ナミビアのナミブ砂漠、ジンバブエのビクトリアの滝、マダガスカルのバオバオ街道など見所満載で、モーリシャス共和国の美しいビーチには、世界中のセレブが訪れています。
2014年1月には安倍首相がアフリカを訪問し、エチオピアにあるアフリカ連合本部で演説しました。そこで安倍首相は、「民間企業のインフラ投資支援に向けた円借款を、2016年までに20億ドル(2100億円)に倍増する」と表明しました。資源のない日本にとって、資源豊富なアフリカは戦略的に非常に重要であり、精度の高いプラント技術や農業技術を活用できる余地は非常に大きいのです。
同時に安倍首相は、若者の職業教育や女性の地位向上もアピールしました。先行してアフリカに投資している欧米と差別化を図るために、人材育成やノウハウの供給も明言しています。自国の雇用創出や経済基盤の底上げにつながる関係性を築こうというメッセージは、どういう結果に結びつくか注目です。
またアフリカ連合(AU)に対して安倍首相は、紛争・災害への対応支援として約336億円、南スーダン情勢に対応するための資金として約26億円を提供する考えを示しました。
距離的には遠いイメージのあるアフリカですが、その距離は確実に縮まっています。

英語より大事な“相手の心をつかむ力”


海外で働くイメージで、代表的な存在が日本の総合商社です。
“ミサイルからラーメンまで”と言われるほどあらゆる品目を扱い、商品の仲介だけではなく、海外資源の開発やプラント輸出など、その活動は多岐に渡っています。
最近のニュースとしては、住友商事のシェールガスの開発参入や、伊藤忠のグローバルな人材育成プログラムとしての2年目新人海外派遣があります。
伊藤忠の新人海外派遣は、テレビでその模様が放映されていました。インドのデリーに派遣された2年目の社員の一日の行動を追うドキュメンタリーでしたが、現地のインド人スタッフとコミュニケーションを取る難しさ、日本とは全く異なる食事習慣が印象的でした。特にハエが飛び交う中で、手でカレーを食べるシーンはインパクト大でしたね(笑)。
その番組では、最初は日本と現地とのギャップに悩み、苦しみ、仕事を通じてみるみる逞しくなっていく新人社員の様子が描かれていました。特に発展途上国は成長性が高いので、そういった場所にいかに溶け込み、人脈を作り、ビジネスチャンスをモノにできるかが求められています。
そこで重要になってくるのは、“相手の心をつかむ力”です。
英語ももちろん重要ですが、語学は手段に過ぎません。中国では、まず最初に壮大な歓待を受け、相当量のお酒を飲まされます。「いえ、私はお酒は飲めないんです」なんて言っていては、取り引きできないわけです。サッカーにホームのアドバンテージがあるように、国際的な仕事においてもアウェイのハンディがあるのは確かです。
しかしそれを乗り越えて、相手の心に入り、かつ相手の言い分を一方的に受け入れるのではなくハードな交渉ができるかどうか。
そこには、情報収集力と精神、体力双方の“タフさ”が重要になってきます。

アイセックと打ち合わせ


昨日、海外学生のインターンシップをサポートしているアイセックと打ち合わせをしました。
なんでも「海外コンサル」というキーワードで検索し、OPCに興味を持ってアクセスしてくれたとのことで、WEBのコミュニケーションインフラとしての重要性を再認識しましたね。
海外インターンシップを推進しているアイセックは、1962年に設立されました。現在世界110国、2100大学に委員会を持ち、約6万人の学生が活動している世界最大の学生団体です。
海外インターンシップには、2種類あります。海外の学生が日本に来日し、日本の企業でインターンシップするパターンと、日本の学生が海外の企業やNGOでインターンシップするパターンです。
今回のテーマは、海外案件を多数扱っているOPCの現場で、意識の高い海外学生がどう活躍できるのかということです。かなり各論まで、盛り上がりました。
初めての取り組みなので導入に至るかどうかわかりませんが、こういった新しい試みを検討することで、改善すべきポイントが浮かび上がる側面があります。そういう意味では、非常に有意義な時間であったと言えるでしょう。
次回は本日のヒアリング内容及び議論を踏まえた上で、具体的な提案をして頂く予定です。いや~、楽しみです!

環境が異なる海外で働くということ

住み慣れた日本を離れ、海外で働く―国によって事情は変わりますが、言語や風習、文化の違いは、実際に体験した人でないとわからないようなことばかりです。
“日本の常識は、世界の非常識”と言いますが、これは残念ながら事実です。
私達日本人が常日頃当たり前と思っていること―電車は時間通りに到着する(出発)する、紛失物が返ってくる、空気が綺麗、つり銭は合っている…といったことは、世界では事情が異なります。
ある国の外交官の息子が、こう言っていました。
「私は、ニューヨーク、ロンドン、東京全てに住んだが、東京がベストだよ」
ただ単純に彼が日本贔屓という可能性もありますが(笑)、やはり日本は相当完成度の高い国であることは間違いありません。
しかし一方で、今まで見たことのない絶景、味わったことのない料理、そして何より苦労してコミュニケーションを取って見知らぬ外国人だった人と心を通わせる醍醐味は、国内では経験できないことです。
OPCでも、ODA他の案件で、海外で働く人々を多数サポートしています。
この豆知識コーナーでは、そういった海外で働くための心構えや現場エピソード、ODA活動報告資料、国内の大手ゼネコン仕事事情、モバイル通信仕事事情など幅広く情報発信していく予定です。
お楽しみに!